近年のメタバース業界は建設業界において浸透してきており、様々なサービス実用化が期待されるようになりました。
この記事ではメタバースと建築業界の関係性について活用事例や今後の展望などを交えて解説します。
目次
メタバース上での建築とは
メタバース上での建築とは、メタバース空間上に自分の好きな建築物を作ることが可能です。ここでは設計に使う資材の値段や納期などを考える必要はなく、自分の想像の範囲内で自由度の高い空間を作成することができます。
建築とメタバースの関係性
建設業界における労働者不足は慢性的な問題となりつつあり、少ない人数で現場の安全性を向上させることも同様に重要となっています。
昨今における労働力の流出を背景として、現場での生産性集約が上手くいっていない点、依然として多発している建設現場での労働災害、現役世代の引退による労働力不足になる点に警鐘を鳴らしていますが、メタバースは建築業界における様々な根強い問題を解決に導く可能性を秘めています。
バーチャルにおける空間設計
「バーチャル空間」とは、デジタル空間の中を参加者がアバターとなって移動や交流を行う空間のことです。
バーチャルにおける空間設計には2つのパターンがあり、一つ目の例としては空間自体がバーチャルなケースでは現実には存在しない仮想の空間をつくり、その中で参加者がアバターとなって移動やコミュニケーションを行うものがあります。
二つ目の例としては、リアルでも存在する空間をバーチャル化し、バーチャル空間をオンラインでも体験できるようにするというものがあります。
分かりやすい例として、世界的人気を博している「あつ森」がバーチャルにおいて空間設計を行っている例ということができます。プレイヤーを自分のアバターとして利用することができ、キャラクターのどうぶつ達と交流しながら、仮想の無人島で暮らしながら物語を進めていく点は、まさにバーチャル空間そのものです。
メタバース上での土地とは
メタバース上における土地とは、一般的に以下の二つのことを指します。
ネット上に存在する仮想空間のこと
メタバースの土地は、「仮想不動産」「メタバース不動産」「バーチャル不動産」
とも呼ばれ、新しい不動産ビジネスのあり方として投資家から注目されています。
驚くべきことはリアル世界の不動産と同じように、メタバースの仮想不動産も活発に売買されていることです。その取引額は2021年において約5億100万ドル(約687億627万円)に到達し、2022年にはその倍の約10億ドル(約1,370億9,922万円)を超えることが予想されています。
(参考:「メタバース不動産投資」はオルタナティブ投資の旗手となるか?)
初見ではたしかにメタバース上の土地を買うことの意味がよく分からないかと思いますが、
メタバースの土地には希少性があり、上手く利用すれば大きなビジネスチャンスとなります。
NFTを使った希少価値のあるデータのこと
メタバース上の土地はNFT(Non-Fungible Token)を使った希少価値のあるデータによって管理されています。NFTとは「代替不可能なトークン」とも呼ばれ、デジタルデータに「唯一性」「希少性」を付与することができます。
このような技術的特性がベースとなり、メタバース上の土地NFTに価値がつけられています。特定の土地NFTを所有しているユーザーは、限定イベントに招待されたりさらに特別なNFTを付与されるケースもあります。
実際に「The Sandbox」というメタバースプラットフォームでは、土地NFTである「LAND」の所有者に対して限定のNFT付与を実施しており、メタバースの一部を先行体験できる「The Sandbox Alpha」というLAND保有者限定のイベントを開催していました。
(参考:コインチェック、ブロックチェーンゲーム「The Sandbox」の仮想土地(NFT)を取得)
メタバース上での建築の魅力
メタバース上での建築の魅力として挙げられるのは、以下の三つになります。
現実では不可能な建築物を建てられる(アンビルド建築)
メタバース上では、現代の技術では設計不可能な建築物を建てられる点が魅力です。というのも、現実世界における建築では、建築基準法や積算・構造計算といった複雑な作業が必要となり、二級以上の建築士国家試験にも合格する必要があります。
メタバース空間での建築は、法律も専門的な計算も学歴も不要となり、気軽にメタバース空間上にオリジナルな建造物を建てることができます。このようにメタバース上において「現実世界では建てられない建築」を行うことを「アンビルド建築」と呼びます。
賃貸営業ができる
メタバース上においても賃貸営業を行うことが可能です。メタバース内で購入した土地にオリジナルの建物を作り、土地と建築物を単体やセットで売却することもできます。
メタバース空間内では現実離れしたようなおもしろい建築物を作ることも可能です。斬新なデザインに関するアイデアは、建物を売却してほしい企業からの需要が高いことも予想できます。
リアルの世界で土地の売買を行う場合として、アパート大家さんの仕事が一番イメージしやすいかと思いますが、大家さんになったからと言って短期的に大きな収入を得られる訳ではありません。
家賃収入が入ってきたとしても、リアルの世界では追加の修繕費や改築などの費用がかさみなどがあり、不労所得になるまでには時間がかかります。また、日常的に入居者と顔を合わせる機会が多くなり、そのたびにコミュニケーション力が求められる場面も出てきます。
以上のようにメタバース上での賃貸営業は、リアルでの賃貸営業におけるデメリットをほとんど取り除いたビジネスモデルになっています。
高値がつけば売却できる資産にもなる
リアルでの土地売買と同じように、高値がつけばメタバース内でも土地の売買が可能です。
現実の地価はある程度基準値が決まっていますが、メタバース空間内の地価は特に取り決めが成されておらず未知数となっています。将来需要が高まると予想されるメタバース不動産に先行投資できれば、数倍もの利益を得ることができるかもしれません。
海外ではメタバース不動産投資家とメタバース建築家が動きを合わせて、上記のような稼ぎ方をしている事例もあります。
メタバース市場に参入しているプラットフォーム
Comony
comonyはラストマイルワークス株式会社が手掛ける建築メタバースプラットフォームです。アップロードした空間は自分だけではなく、世界中にいる誰とでもコミュニケーションを取ることにも活用できます。
建築が好きな方にとってはもちろん、バーチャル空間上に建てられた世界中の名だたる名建築や、ここでしか見られないようなユニークなアンビルド作品などを24時間いつでも見ることができます。
(参考:ビジネス向けVR空間共有プラットフォームcomony、ゲーミングエンジンを利用した建築特化型メタバースのティザーサイトを公開、参画建築クリエイターの募集も開始。)
Mona
Mona(モナ)とは世界中のクリエイターが無償でバーチャルワールドを制作し、自由に販売できるメタバースプラットフォームを提供する米スタートアップです。
Monaのメタバースプラットフォームは、特にメタバースの空間クリエイター向けに最適化されているという特徴があります。Mona上で構築されたメタバースは高い解像度とレンダリングの処理パフォーマンスを保持しており、ユーザーの意図する世界を忠実に構築することが可能となっています。
(参考:1,460万米ドルを調達した米スタートアップがつくった、3Dクリエーターのためのメタバースプラットフォーム「Mona」)
Spatial
Spatial(スペーシャル)はメタバース空間を作ったり旅するためのプラットフォームで、「クロスプラットフォーム」に対応しているという特徴があります。
対応機器はOculus Quest、HoloLens、Magic Leap 1などのMRデバイス、タブレット端末やデスクトップからiPhoneなどのスマホ機器まで多岐にわたります。
また、世界中のアーティストがバーチャルギャラリーを作ったりイベントを開催しており、NFTを利用してデジタルコンテンツを販売しています。
(参考:バーチャル空間を共有できるSpatialが無償化、“在宅勤務疲れ”対策に商機)
メタバース市場に参入している建築事業
tenshabi
tenshabiでは、メタバース関連企業やこれからメタバースの事業を立ち上げようとする企業と、メタバースでのキャリアに関心がある学生や社会人がメタバース空間で出会うイベント「METANAVI」を立ち上げています。
近い将来にはメタバース上の企業や組織で働くことを当たり前にすることを「METANAVI」は目指しています。
(参考:METANAVIを運営するtenshabiがメタバース建築事業を開始。メタバース建築家・MISOSHITA氏がCMAに就任)
CyberMetaverse Productions
CyberMetaverse Productionsは、企業ブランディングに合わせたオリジナルの「メタバース商空間」を提供するバーチャル店舗開発に特化した事業会社として設立されました。
リアルな店舗やECとは異なる新たな販売チャネルとして、メタバース空間における企業の販促活動を支援しており、既存のメタバースプラットフォームを活用するほか、オリジナルのメタバース空間を構築することが可能になっています。
(参考:サイバーエージェントがメタバースに進出 バーチャル店舗開発に特化した子会社設立)
クリーク・アンド・リバー社
クリーク・アンド・リバー社では、一級建築士が実際の建築データを基に設計開発したメタバース空間での住宅展示場プラットフォーム「超建築メタバース」を2022年11月から本格的に提供を開始しました。
出会う楽しさとコミュニケ―ションを大切にしたリアル住宅展示場の発展形である「ランドスケープモデル」と、物件を整理して吟味できる展示会の発展形である「ミュージアムモデル」の2つのモデルを用意しています。
(参考:一級建築士と設計「すぐにつかえるメタバース」の住宅展示場 C&R社「超建築メタバース」が本格始動)
さいごに
建築の分野はメタバースの活用が期待されていますが、実際の建設現場での完全実用化はまだまだ研究と改良が必要となると考えられます。
その反面、私たちにとっては特に専門知識や学歴も必要とせずに「メタバース×建築」というジャンルの障壁を下げることに成功し、新たな価値観やビジネスの創出につながっています。
メタバースの世界では既存の建設・建築に関わる知識は必要ないため、メタバースを通してどれだけ独創的な考えを持ち、唯一無二の存在をつくることができるかが重要になると考えられます。
まとめ
今回の記事ではメタバースの建築についてご紹介しました。DX案件を探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。