現代ではアート作品がデジタルデータとして販売されるのが当たり前のこととなっていますが、データである以上勝手に複製・改ざんされたり、第三者に流通されネット上に公開されることは避けられません。そのようなデジタルアートのデメリットをブロックチェーン技術によって解決したものが「NFTアート」であり、Web3.0という新しいネットワーク時代の到来に伴って、さらに発展していくと思われる分野の一つです。まだ日本ではブロックチェーンやNFT自体が発展途上であるため、「デジタルアート作品とどう違うの?」と疑問を持つ方も多いようです。そこでこの記事ではNFTアートの仕組みや特徴、さらに実際の購入方法や作成・販売方法についても詳しく解説していきます。
目次
NFTアートとは
NFTアートとは、非代替性が確立されたデジタルアートのことです。「非代替性が確立されている」と表現すると難しく聞こえますが、要するに現実で画家が描く一枚絵のように、本物が1つしかない絵画作品です。例えば「モナリザ」は、模写して同じように見える絵を別の人が描いたり、絵をカメラで撮影することはできますが、それらはどれも「本物にはなり得ない」ため、原版には非代替性が確立されている、といえます。NFTアートも同様に、ブロックチェーンという技術によって非代替性が確立されておりコピーや改ざんができないため、1つのデジタルアートとして唯一無二の価値があるといえます。
NFTとは
NFTアートは「NFT」の一種に過ぎません。NFTとは非代替性を持つトークンのことであり、その「非代替性」はブロックチェーン技術によって確立されます。トークンという単語は「1ビットコイン」など暗号資産そのものを指す際にも用いられますが、NFTはイーサリアム(Ethereum:ETH)というプラットフォーム上で構築される、非代替性を持つトークンであるため、少し性質が異なります。どちらにしてもNFTというトークンは唯一無二の価値を持つデータであるため、そこに売買取引が生じます。NFTの販売で利益を上げられるのもこのためであり、従来のコピー・改ざんがいくらでも可能であったデータとは一線を画すものです。
NFTアートの種類
次はNFTアートの種類について解説していきます。
1点モノ
ゴッホやピカソ、ダリなどの有名画家が描いた作品のように、多くのNFTアートはそれ1点だけで価値を持っています。希少価値が非常に高い絵画の原版がオークション会場に出品されているイメージを浮かべると分かりやすいですが、同等の価値を持つものが他に存在しないため、販売段階で価格が高騰しやすいです。一度誰かの手に渡った後も、売買に出されることで流通する確率は低いです。
コレクティブ
1作品・1種類であるNFTアートに対して、複数の種類があるNFTが「コレクティブNFT」です。NFTは唯一無二でなければならないのに「複数の種類が存在してて良いのか?」と感じる方もいるかもしれません。しかしコレクティブNFTは、有名なモンスター育成ゲームにおける「色違い」のようなものです。元々は同じキャラクターですが、色の違いによってそれぞれに異なる価値が生まれているのです。コレクティブとある通り複数のバリエーションの収集が可能であり、今後自分が保有しているバリエーションの価値が高くなったときに売却することで利益を上げることも可能です。
NFTアートの特徴・仕組み
次はNFTアートの特徴および仕組みについて解説していきます。
公平な取引ができる
NFTアートの売買は全てブロックチェーンで行われますが、第三者による取引履歴の改ざんや消去が困難であるため、公平な取引ができます。これはスマートコントラクトと呼ばれる仕組みですが、暗号資産を支払ったタイミングで即座にNFTの所有権が移行するため「お金を支払ったが商品を受け取れない」のようなトラブルがなくなります。
アーティストに適切な収入が入る
ブロックチェーンによるNFTの売買は、特定のサービスを利用することで発生する「中抜き」がありません。また販売後に他の人に売却される(2次流通)場合にも一定のロイヤリティが著作権者に支払われます。これによりアーティストに適切な収入が入ります。
投資対象になる
NFTアートは価値が変動するため投資の対象となり、場合によっては1枚のNFTアートが億を超える価値を持つまでに高騰することがあります。コレクティブNFTでは希少性が高いものが高額になりやすく、投機を見極めることで多額の利益を得ることも可能です。
NFTアートの代表例
次はNFTアートの代表例3つを紹介していきます。
CryptoPunks
「Lavra Labs」が発行する「CryptPunks」は数あるNFTアートの中で最も有名なものだといえます。このNFTアートは縦横24ピクセルで構成されており、世界で1万体のみ存在する中にどれ一つとして同じものがない、いわゆる「コレクティブNFT」です。中でも「エイリアンがバンダナを巻いているドット絵」は「8,000ETH(現在の円換算で約17億円)」という超高額で取引されたことでも話題となりました。
(参考:CryptPunks)
Meetbits
同じく「Larva Labs」が発行する「Meebits」は3DキャラクターのNFTです。イーサリアムで実際にMeebitsを購入すると、購入したキャラをメタバースという仮想現実世界で自分のアバターとして利用できます。最も価値があるのが5体しか発行されていない「DISSECTED」というキャラタイプのNFTであり、平均700ETH(現在の円換算で約14億円)という超高額で取引されています。
(参考:Meebits)
Everydays: the First 5000 Days
最後に紹介するのは「Beeple」というデジタルアーティストが発行した「Everydays: the First 5000 Days」というNFTアートです。このNFTアートはタイトル通り5000日、およそ13年間にわたって同氏が作成した全てのデジタルアートがモザイクアートとなっている、集大成的作品です。一つひとつの作品の価値はもちろんのこと、13年という長い期間を掛けて作られた唯一無二のアート集合ということもあり、NFT史上最高額となる「6,935万ドル(約75億円)」で落札されました。
(参考:Everydays: the First 5000 Days)
NFTアートの始め方
次は実際にNFTアートを購入したり、作成して販売する方法について解説していきます。
NFTデジタルアートの作り方
NFTアートは「NFTとして売るアート」であるため、特定の形式や技法、ソフトウェアを用いなければならない、という縛りはありません。有名な「CryptoPunks」のようなドット絵は「8bit Painter」や「dotpict」といったスマホアプリだけで作成できますし、本格的なアートをNFTとして販売したい場合は「CLIP STUDIO PAINT」や「Illustrator」等の本格ソフトウェアを用いて作成できます。
購入方法
NFTアートを購入するためには、イーサリアム(ETH)という暗号資産が必要です。イーサリアムを持っていない人は、まず国内の取引所からイーサリアムを購入する必要があります。
販売方法
NFTアートを実際に「OpenSea」などの専用ストアで販売したい場合、作成した作品をNFTにする必要があります。メニュー内の「Create」から作品を登録するとNFTアートとして登録し、販売価格を設定します。OpenSeaにおける販売方法は金額固定方式とオークション方式があり、好きな方式を選択できます。
NFTアートを購入できるマーケットプレイス
次はNFTアートを購入できるマーケットプレイスについて解説していきます。
LINE NFT
国内で最も簡単にNFTアートを購入できるサービスが「LINE NFT」です。LINEの独自サービス「LINE BITMAX」に登録している人は「LINK」という暗号資産を用いてNFTアートの購入が可能です。ガス代と呼ばれる手数料が不要であったり、購入したNFTアートを簡単に「友だち」へ送付できる等のメリットがあります。
OpenSea
NFTアートは複数の販売元から購入できますが、日本語検索にも対応しているため分かりやすいのが「Opensea」です。購入方法自体は簡単で、検索欄から欲しいNFTアートのテーマを入れて検索し、欲しい作品を「Add to cart」でカートに入れ、カートからイーサリアムで決済するだけです。ちなみにOpenSea内で用いられるのは「WETH」という専用トークンであり、ETHから交換する必要があります。ETHからWETHに交換する際に、一定の手数料(ガス代)が発生するため、最初から数万円程度のイーサリアムを購入しておくことが望ましいです。
NFTアートの危険性と解決策
次はNFTアートの危険性と解決策について解説していきます。
危険性
NFTアートはブロックチェーンという仕組みの上に成立しているものであるため基本的には安全です。ただし売買には暗号通貨を使用しているため、暗号通貨が持つ「ハッキング・盗難」等のリスクがあることを覚えておくべきです。
ハッキング・盗難
NFTを購入するためのイーサリアム(ETH)は基本的に仮想通貨取引所から購入します。仮想通貨取引所ではアカウントごとに「ウォレット」がありそこに暗号通貨が収められていますが、アカウントをハッキングされるとウォレットを勝手に操作され、勝手にNFTが第三者に販売される可能性があります。また、アーティストが作成したアート作品が、勝手にNFTとして販売される盗難リスクもあります。
解決策
NFTアートのハッキング・盗難のリスクを避けるために必要な2つの対策について解説していきます。
2段階認証を行う
暗号通貨が収納されているウォレットのアカウントには、必ず2段階認証を設定しておきましょう。これによりもしアカウントのIDおよびパスワードが漏洩しても、簡単にアカウントに接続できなくなります。
出品元が担保されているか確認
盗難作品を誤って購入してしまわないために、購入時には必ず出品元を確認することをおすすめします。盗品を販売していると見られるアカウントがあればすぐにサイトの運営元に通報しましょう。
NFTアートの将来性
Web3.0時代の到来とともに急成長するNFTアートは、従来の「改ざん・複製」が容易であったデジタルアートに新しい可能性をもたらすものです。今後、より多くのアーティストがNFTアートを作成し販売することで、デジタルアーティスト人口も大幅に増加すると予想されます。
チャリティ目的で使用される
非代替性があるNFTアートはチャリティと相性が良いため、今後ますます使われるようになるでしょう。実際に現在も複数のアーティストがチャリティ目的でNFTアートを販売しており、販売利益が障害者支援や発展途上国への寄付等に用いられています。
NFTの活用方法の幅が広がる
非代替性が存在するNFTアートは、様々な活用方法がなされる可能性を秘めています。例えば仮想現実世界であるメタバースにおいて「NFTアート展」を開催できるかもしれません。参加者はVRを用いて直接3Dアートや映像作品のNFTを見ることができますし、気に入ったものがあればメタバース上で直接NFTアートを購入できるようにすることも可能です。
あらゆるものがNFTになる可能性がある
今後、アート作品だけでなくさまざまな「モノ」がNFTになる可能性があります。そもそもデジタルデータとして存在できる、本やイラスト集、音楽や楽譜、チケットや各種証明書などはすべてNFTとして活用できます。分散型といわれる新しいネットワーク「Web3.0」が確立されれば、もはや多くのデジタルデータがNFTに置き換わるかもしれ
まとめ
今回の記事ではNFTアートの仕組みや特徴をご紹介しました。DX案件を探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。