プロジェクト管理で発生する代表的な課題
まずはプロジェクト管理で発生する代表的な課題について紹介します。
プロジェクトのゴールが不明確
通常どんなプロジェクトも、そのプロジェクトのゴールを定めて進められます。しかし、クライアントとの折衝が甘かったり、そもそもクライアントが自社の問題を的確にとらえていなかったりすると、プロジェクトのゴールが不明確なままプロジェクトが進んでしまうケースがあります。
コミュニケーション不足
コミュニケーション不足を原因に、メンバー間の進捗が把握できず、結果的にプロジェクトの進捗が滞ったり、問題がプロジェクトチームで共有されず放置されたりといった、さまざまな弊害が発生する可能性があります。
リソースが適材適所に配置されていない
一つのプロジェクトをとってもさまざまなタスクが発生し、プロジェクト参画メンバーに割り当てられていきます。そのため、メンバーそれぞれの特性や経験、スキルを正しく理解していないと、適材適所に人員が配置されず、プロジェクトの推進に支障が生じる場合があります。
リスクマネジメントへの取り組み意欲が低い
リスクマネジメントとは、まだ発生していないリスクに目を向けて対策を打つ作業です。まだ起きていないことよりも、実際に目に見えているタスクを優先するがあまり、リスクマネジメントが疎かになってしまうケースは少なくありません。
プロジェクト管理における課題と問題の違い
プロジェクトにおける課題管理をスムーズにおこなううえで、まず「問題」と「課題」をすみ分けて管理し、課題解決を進めていくことが大切です。
プロジェクト管理の問題はプロジェクトで発生した現象
プロジェクトにおける問題とは、プロジェクトの推進を阻害している現象のことをさします。プロジェクトの計画と実績に差があって、かつ実績が計画に到達していなければ、その各要素が問題となります。
端的にいえば、例えば次のような問題が考えられます。
- 計画対比でのスケジュールの遅延
- 計画対比でのコストの高止まり
- 計画対比で成果物の品質が低い
課題は発生した問題をふまえて解決すべき事項
プロジェクト管理を体系化したPMBOK(Project Management Body of Knowledge)において、課題とは次のように整理されます。
『問題となっているか、または係争中の要点や事柄あるいは、未解決か審議中、もしくは反対の見解や合意できないものがある要点や事柄』
(参考:A Guide to the Project Management Body of Knowledge (PMBOK Guide))
発生したさまざま問題に場当たり的に対応していては非効率ですし、コストやスケジュールの面で新たな問題を引き起こす可能性もあります。そのため、プロジェクトでは各問題を分析して、諸問題を解決して、さらに今後問題が発生しないように対策を打つ必要があります。
多数の問題を分析したうえで、プロジェクトの推進を正常化させるために解決すべき事項が「課題」です。課題は解決策と解決までの計画や期限などを定めて、取り組んでいかなければなりません。
プロジェクトの問題や課題を解決するコツ
プロジェクトの問題・課題をスムーズに解決していくためには、次のようなポイントを実践することが良いでしょう。
問題の本質から根本的な課題を洗い出すよう努める
プロジェクトのスムーズな推進を実現するためには、より根本的な課題を洗い出して、それを解決させていくことが有効です。そのため、現象として観測される諸問題を本質から理解して、課題・解決策を検討する取り組みが重要になります。
発生する問題と向き合い、情報を整理したうえで、次のような点を充足できる課題と解決策を見いだせるのが理想です。
- 目の前の問題が改善する
- 同じような問題が今後起きなくなる
- 他の似たような問題についても改善し再発しなくなる
フレームワークを活用する
問題の本質をとらえたり、複数の問題を集約して課題解決策を見出していくうえではフレームワークの活用が有効です。
例えば、企業や自身の強み・弱みと外部環境の機会・脅威に関する問題を整理したうえで課題を洗い出すSWOT分析、物事をMECEになるように分解していく「ロジックツリー」などは、しばしば応用されます。
ツール導入がカギとなることもある
エクセルなどで管理するより、ツールを導入したほうが、さらに効率的な課題管理が可能となることもあるでしょう。大型プロジェクトなどでプロジェクト管理にもある程度コストを割ける場合などには、思い切ってツールの活用を検討してください。
課題管理を成功させるポイント
プロジェクト管理における一般的な課題もふまえて、課題管理をスムーズにおこなうためのポイントを解説します。
課題管理表を整理することがまず第一
まず第一に、プロジェクトメンバーはもちろん、第三者が見てもわかるような課題管理表を構築して、プロジェクトメンバーや関係者が把握できるようにしておきます。
課題管理表は次のような項目を整理したうえで、定期的に進捗をアップデートし、情報共有する仕組みがあるとよいでしょう。
- 課題概要
- 課題の詳細
- 完了条件
- 重要度
- 記入日
- 記入者
プロジェクトのゴールを明確にする
プロジェクトのゴールについては、プロジェクトの各メンバーとクライアントを始めとした関係者で、計画段階で共通認識を持っておかなければなりません。
PMBOKではプロジェクトのゴールの要素は「QCD」で表現されるとしています。
- Q:Quality(品質)
- C:Cost(主に費用、プロジェクトによっては要員数や使用資源など)
- D:Delivery(納期)
プロジェクト開始前に、クライアントも交えて、プロジェクトゴールについて文書など形に残して置くことが重要です。また、定性的な文言も認識ギャップの温床となるため、できるだけ数値化して定量的なゴールを定めたうえで、プロジェクトに取り掛かると良いでしょう。
コミュニケーションプロセスを明確にする
コミュニケーションにおける課題は、まず課題管理表が正常に運用されていれば、ある程度抑制されるでしょう。課題管理表それ自体が、課題に関してコミュニケーションを取るためのツールとして機能するためです。
リアルタイムでの管理表の更新やミーティングにおける進捗のアップデート、プロジェクト関係者が課題管理表を把握させるプロセスの整備などにより、コミュニケーションに関する課題は少なからず解決します。
タスクに求められるスキルと要員のスキルを整理して配置する
適材適所の配置がプロジェクトの円滑な推進には重要ですが、これを達成するためには、タスクとメンバーの両面を計画段階でしっかり捉えておくことが大切です。
プロジェクトを推進していくうえで発生するタスクを洗い出します。そのとき、各タスクがどのような特性をもち、どのような経験、スキルを持つ人材に適しているのかを明確にしておかなければなりません。
また、プロジェクト参画メンバーについても、メンバーそれぞれがどのようなスキルを持っているのかを把握しておく必要があります。もっというと、プロジェクトのタスクを踏まえてスキルセットや経験がマッチする人材にアサインできればなお良いでしょう。
プロジェクトにおけるリスク管理プロセスを実践する
どのようなプロジェクトにおいてもリスクマネジメントを疎かにしてはいけません。リスクマネジメントは「リスクを予見して対策を打っておく」ことに意味があることを常に念頭に置いておきます。
リスク管理のプロセスは次の6つに分類されます。このプロセスに則って、リスクを定義し、また観測していくことが大切です。
(1)リスクとなる要素の定義
(2)リスク要素の分析
(3)重要度の分類
(4)特に重要なリスクについて、発生した時の主担当者を指定
(5)モニタリング
(6)(リスクが実現した場合)対応する
まとめ
今回の記事ではプロジェクト管理における良くある課題と解決策について解説しました。コンサルティング案件などを探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。