近年、IT化が進んだことによりプロジェクト単位で活動するようなケースが増えてきました。また、ITに限らず、新製品の開発や新規事業の立ち上げなど1つのプロジェクトとして運用することも多いと思います。PMBOKはこのようなプロジェクトのマネジメントの手法をまとめたものです。ここでは、PMBOKの紹介とプロジェクト管理のための具体的なポイントを紹介します。
目次
PMBOKとは
まずPMBOKとはなにかを紹介します。
PMBOKの意義、目的
PMBOKとは「Project Management Body of Knowledge」の略称であり、プロジェクトマネジメントに関する知見やノウハウを体系立ててまとめたものになります。プロジェクトマネジメントはプロジェクトを推進する上で非常に重要な要素です。プロジェクトの各チーム間の整合性やリスクマネジメントなどを正しく行うことでプロジェクトを成功へと導きます。このプロジェクトを進めていくにあたって重要な管理手法をまとめたものがPMBOKです。
またPMBOKはプロジェクトマネジメントの重要性を説く上でも重要な役割を果たしています。従来のマネジメントで重要視されていたことは製造業を中心としたビジネスモデルで有効なQCDでした。しかし、PMBOKではこれらの結果を中心としたマネジメントだけでなく過程も大切にしたマネジメントを重要視しています。そのためにリスク管理や課題管理などの視点も含まれています。PMBOKはこれまでのマネジメントに新たな視点を取り入れました。
PMBOKは現在では世界中で認知されており、4年に1度の頻度で更新されています。最新版である第7版に関しては2021年に公表されました。
(参考:プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版+プロジェクトマネジメント標準)
PMIとは
PMIとはPMBOKを作成し、更新を続けている非営利団体のことです。正式名称は「Project Management Institute」と呼ばれ、1969年に米国で設立された世界最大のプロジェクトマネジメント協会です。PMBOKの改定だけでなく、プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル (PMP) などの資格認定も行っています。
日本には1998年に東京支部が設立され、2009年に「一般社団法人 PMI日本支部」と名称変更され、現在も運営されています。
(参考:PMP®資格について)
PMBOKの活用メリット
ここでは、PMBOK活用のメリットを3つ紹介します。
効率的にQCDを管理できる
PMBOKを活用することで効率的にQCDを管理することができます。QCDとは品質(Quality)、コスト(Cost)、納期(Delivery)の3つの資料を指します。PMBOKではQCDの管理以外にプロセスの管理も重要と述べましたが、最終的に重要となるのはやはりQCDです。これまでのデータやPMBOKの知識を活用することで、実務において効率的にプロジェクトを進めることができ、プロジェクトを成功に導くことが可能です。
グローバルプロジェクトにおいても共通認識を持てる
PMBOKを用いることでグローバルプロジェクトでも共通認識を持ってプロジェクトを進めることができます。近年、グローバル化が進んだことにより海外展開案件や日本への導入プロジェクトというのも増えてきました。このときには海外メンバーと意思疎通をしながらプロジェクトを進めるのは、地域によるプロジェクトの進め方があるため困難です。しかし、PMBOKを活用することで、お互いのチームがリスク管理やスコープ管理、コミュニケーション管理、調達管理など主要なプロセスにおいて共通認識を持ちながら仕事を進めることができます。PMBOKを導入することでスムーズなプロジェクト運営が実現できるでしょう。
近年のプロジェクト手法を学べる
近年のプロジェクト手法を学ぶことができるのも、PMBOKを活用するメリットです。現在は多様性が進んでいることもあり、様々なビジネスが登場しています。そのため、それらのビジネスを運用していくプロジェクトも様々です。マネジメント手法に関してもダイバーシティの重要性など新たな視点が出てきています。
PMBOKは4年に1度という比較的短いスパンで改定をされているため、最新のマネジメント手法を学ぶことができます。例えば、第6版から第7版においては管理手法の5つのステップが見直されていて、12の原則となっています。これらの最新のプロジェクト手法を学び活用することで現在のニーズに合った適切なマネジメントができるようになるでしょう。
QCDのプロセス
ここではPMBOK第7版において重要なテーマである「12の原則」と「8のパフォーマンス・ドメイン」に関する紹介をします。PMBOK第6版ではインプットしたものをどのように効率的にアウトプットするのか、いわゆるHow toに対しての回答が記載されていました。第7版では原理・原則やパフォーマンスに分けた解説方法など考え方を主体に定義を行っている点が第6版と大きく異なります。
12の原則
12の原則とはプロジェクトを進めていくための原理・原則のことを指します。第6版では5つのプロセス群となっていましたが、より汎用性高く対応できるように12の原則へと変更されました。そのため、この12の原則は実際には個々のプロジェクトに合わせて、具体的に調整していく必要があります。
12の原則は以下の通りです。
- スチュワードシップ : 請け負ったことを責任を持って行う
- お互いを尊重し協力し合うチーム
- ステークホルダー(利害関係者)との連携
- 価値の創造に焦点を当てる
- 包括的思考:システムの相互作用を認識して対応する
- リーダーシップ
- テーラリング:状況に応じた調整(仕立て直し)を図る
- 品質をプロセスと結果に組み込む
- 事態の複雑さに対処、適応する
- リスク(好機と脅威の不確実性)に対処する
- 適応性と回復力を備える
- 変化することであるべき未来を達成する
5つのプロセス群では立ち上げ、計画、実行、監視・コントロール、終結と一連のプロセスとして完結していたため、対応方法がわかりやすかったと思います。12の原則ではそれぞれポイントとなるテーマに関して対応方法を記載しているため、プロジェクトを実際にマネジメントする際にはいつどのテーマを活用するかを考えて適用する能力が求められます。
8つのパフォーマンス・ドメイン
PMBOKの8つのパフォーマンス・ドメインとは、プロジェクトを効率的に成功に導くために網羅すべき行動領域のことを指します。具体的な行動指針は明示されていませんが、それぞれのパフォーマンス・ドメインがどのような影響を与えるかどうかが具体的に示されています。これらの関係性を理解することで、プロジェクトマネジメント時に必要な要素を体系的に理解し、整理することができます。
8つのパフォーマンス・ドメインは以下の内容から構成されています。
- ステークホルダー
利害関係者に関する関与や働きかけの方法
- チーム
チームをまとめるのに必要なリーダーシップとマネジメントの方法
- 開発アプローチとライフサイクル
成果物に適した開発アプローチとサービス・製品を提供するタイミングやサイクルの理解
- 計画
プロジェクト組織に関連した活動と機能、およびプロジェクト成果物と成果を提供するために必要となる調整
- プロジェクト作業
プロジェクトを円滑に進めるために実施するべき活動や行動
- デリバリー
プロジェクトのスコープおよび完了した後の品質における活動と機能
- 測定
他のパフォーマンスを評価し、改善・維持していくための活動と機能
- 不確かさ
不確かさや予測不能な事態に対する事前の対応策や活動
PMBOKを活用するポイント
PMBOKを効果的に活用するポイントは参考書として活用することです。これまでの社内のプロジェクトマネジメント方法があると思います。この方法もこれまで社内の経験から培われた重要な要素です。プロジェクトメンバーもこれまでのマネジメント方法に慣れているでしょう。そのため、現在のマネジメント手法を主流におきつつ、これまで課題になったことを改善する際にPMBOKを参照するという使い方がよいでしょう。
PMBOKの使用上の注意
ここでは、PMBOKを使用する際に注意するべきことを2つ紹介します。
不測な事態の対応
PMBOK第7版ではプロジェクトマネジメントに関する考え方や活動指針をまとめたもので、従来のPMBOK第6版に比べると比較的柔軟性があります。しかし、近年ではグローバル化を始めとして競争が激化しています。そのため、従来の方法では対応できないようなケースも出てくることもあります。PMBOKはプロジェクトマネジメントの基本として抑えつつ、その一方でイレギュラーが発生した場合には都度組織としてナレッジをため込むことが必要です。そうすることで、徐々にイレギュラーな事象においても適切に対応できる土台が整っていくことでしょう。
複数のプロジェクトには対応できない
PMBOKはあくまで1つのプロジェクトに焦点を当ててまとめられたものになります。そのため、複数のプロジェクトが連動しているケースや、プロジェクトメンバーが複数のプロジェクトに参加している場合などには対応していません。しかし、複数のプロジェクトにおいても基本の考え方は同じです。ステークホルダーとして1つプロジェクトが増えたと考えつつ、他のプロジェクトのリソースやコストの管理に着目することでPMBOKを活用できるでしょう。
まとめ
今回の記事ではPMBOKをご紹介しました。DX案件を探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。