コンサルティングファームが転職市場で人気がある理由の一つとして、「年収が高い」ということが挙げられます。コンサルタントは難易度の高い仕事をこなす必要があるためです。また業務内容がハードワークになることも要因として挙げられるでしょう。
一方コンサルティングファームなどの組織に属さず、フリーランスとしてコンサルタントの仕事を行う場合も「年収が高い」と言えます。つまりコンサルタントは、組織に所属しているかどうかに関係なく高収入になる可能性が高いです。
この記事では、コンサルタントの年収や評価基準、領域別の違い、フリーコンサルタントの収入などに関して紹介します。
目次
なぜコンサルの給与は高いのか
コンサルティングファームの平均年収は高額です。下表は日本の平均年収とコンサルティングファームの平均年収をまとめた表です。
日本の給与所得者の平均年収よりも高額であることがわかります。
項目 | 平均年収 |
日本の給与所得者 | 443万円 |
コンサル業界 | 601万円 |
参考サイト:国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査」
参考サイト:転職ならdoda(デューダ)「平均年収ランキング2020」
コンサルタントの主な仕事は、クライアント企業が抱えている経営課題の解決です。市場の分析、クライアント企業の分析、戦略の策定や構築など、高度な能力が必要となります。またハードワークになる場合もあるでしょう。1案件の単価が高くなるため、コンサルタントの給与が高額になります。
またコンサルタントの業務は、利益率が高い仕事です。生産するもののほとんどは、知的労働によるものとなるため、製造業のように仕入や設備投資などはありません。クライアントから得た報酬のほとんどが営業利益として計上できるため、利益率が高くなります。利益率が高いと、コンサルタントの給与も必然的に高くなると言えるでしょう。
評価基準
コンサルタントは完全実力主義、完全成果主義と言われています。そのため、コンサルティングファームに就職や転職を考えている人は、不安に感じてしまうかもしれません。ここではどのように評価が行われるのかを紹介します。
基本的な評価基準
コンサルタントとして基本的に身につけておくべき能力がどの程度発揮されているのか、定期的に評価されています。例えば、クリティカルシンキング、コミュニケーションスキル、プロジェクトマネジメントスキル、成長する姿勢などです。コンサルティングファームによって異なる部分や、求められるレベルに多少の違いはありますが、基本的なスキルは共通しています。
これらの項目に対して、対象者がどれくらいのレベルにあるのかを評価する仕組みです。また定量的な指標として、稼働率も考慮されます。
稼働率とは、クライアントに対する業務が就業時間の中でどれくらいの割合を占めているのかを数値化したものです。稼働率が低いと、「クライアントの要望がうまく汲み取れていない」「コミュニケーションスキルが低い」などの評価になる可能性が高いと言えます。稼働率を意識した働き方が求められるでしょう。
役職別の評価基準
コンサルタントの役職ごとに求められる能力が変わります。基本的なスキルに加えて、役職ごとの査定が行われる方法です。ここでは役職別の評価基準について紹介します。
アナリスト~コンサルタント
アナリストからコンサルタントは、メンバークラスに定義づけられます。メンバークラスは、上位役職者の指示や指導のもと、簡単なクライアントとのコミュニケーション、市場やライバル企業のリサーチ、提案資料の作成などが主な業務です。
これらコンサルタントとしての基礎的な業務が滞りなくこなせるようになると、次第に責任のある業務が任されるようになってきます。例えば、下位メンバーのマネジメントを任されたり、単独でクライアント向けの提案資料を作成したり、ミーティングをファシリテートしたりする業務です。
プロジェクトをリードできるようなマネジメント力やプレゼンテーション能力、営業資料の作成能力などを身に付けることができると、ステップアップにつながると言えるでしょう。
マネージャー~シニアマネージャー
マネージャーからシニアマネージャーは、マネージャークラスに定義づけられます。マネージャークラスでは、社内でのプロジェクト活動だけでなく社外での営業活動も評価対象になるのが特徴です。営業的な側面での成果が期待されているポジションと言えるでしょう。
例えば、遂行中のプロジェクトに関しての追加受注提案を行って受注につなげたり、新規プロジェクトの提案資料を作成しプレゼンテーションを行ったりすることです。
マネージャークラスに求められるのは、営業活動の推進になります。このようにコンサルタントの業務は、役職が上がるにつれて営業活動に対する期待値が高くなっていくと言えるでしょう。
またマネージャークラスには、遂行中のプロジェクトの利益確保も求められています。プロジェクトの利益が出るように、マネジメントする能力も重要となるでしょう。
マネージャークラスは、顧客に対して価値を提供し顧客から評価してもらうことが重要となります。顧客からの評価を得ることができれば継続受注につながり、営業成果が上がるためです。
パートナー
パートナーは、一般企業に置き換えると役員にあたる役職です。コンサルティングファームの経営に携わるポジションとなります。利益が上がった場合は利益に見合った分配を得たり、利益が上がらなかった場合は責任を取ったり、経営と連動するのが特徴です。
新規のプロジェクト受注や継続受注など、営業成果が強く求められる立場となります。そのため、営業活動が評価の中心となるでしょう。
クライアントの経営層と信頼関係を構築したり、マネージャークラスの教育を行ったり、新規採用を行ったりするのもパートナーの役割となります。
ファーム領域別
コンサルタントが対象としている領域はさまざまです。コンサルティングファームによって得意とする領域が違ってくるでしょう。下表にコンサルティングの各領域について、平均年収を紹介します。
ファーム領域別 | 平均年収 |
戦略領域 | 724万円(※1) |
総合領域(業務領域) | 688万円(※1) |
シンクタンク領域 | 635万円(※2) |
IT領域 | 685万円(※3) |
FAS領域(財務・会計専門職) | 630万円(※1) |
人事領域 | 575万円(※1) |
中小企業領域(戦略・経営) | 724万円(※1) |
参考サイト※1:転職ならdoda(デューダ)「平均年収ランキング2020」
参考サイト※2:マイナビエージェント「コンサルティングファーム・シンクタンク」
参考サイト※3:転職ならdoda(デューダ)「ITコンサルタントの平均年収」
戦略
戦略領域は、クライアント企業が進むべき道筋のサポートなどを行います。クライアント企業の経営戦略、事業戦略など、企業の将来に影響する内容です。企業が抱えている現状の課題だけでなく、将来発生する課題と解決策の提案、将来の市場の動向、その中でクライアント企業が進むべき道筋の提案などを行います。難易度が高い業務と言えるでしょう。
クライアント企業の中でも、主に経営層を相手にする必要があり、同じ目線で物事を進められる能力が必要となります。
総合
総合領域は、クライアント企業の業務支援が主な内容です。クライアント企業の業務フローの確立、業務改善、作業の効率化などの提案になります。コンサルタントとして客観的な視点を活かしたり、深い専門知識によって改善を提案したりする業務です。
クライアント企業の業務改善が目的のため、クライアント企業に常駐して業務を行う場合が多いと言えるでしょう。業務内容を深く理解し、品質の向上やコストの削減、売上の向上などを支援します。
またITを利用した提案を行う場合もあるため、ITの知識も重要となるでしょう。
シンクタンク
シンクタンク領域とは、政府の政策に関する提言や調査、リサーチを行う業務です。これらの結果は、制度設計や産業動向調査、経済基礎調査などに反映されます。シンクタンクには「政府系」と「民間系」の2種類の母体が存在しており、どちらも行政機関や官公庁から依頼を受けて業務を行う流れです。社会的な問題など、さまざまな課題を取り扱っています。
政府系では主に、エネルギー、スマートシティモビリティ、防災、ヘルスケアなど、多岐に渡る領域を扱っているのが特徴です。民間系では、ITシステム構築の支援なども扱っています。
調査した結果は、公共性の高いレポートとして扱われ、国や県、自治体などの政策に影響することもあるでしょう。
IT系
IT領域では、クライアント企業のIT戦略立案、デジタルツール導入、ERPパッケージ導入など、システム開発と導入に関する支援を行います。クライアント企業が抱えているさまざまな問題を、ITを活用して解決していくことがITコンサルタントの役割です。
近年多くの企業ではDX推進が叫ばれています。そのためITの活用が重要視されている状況です。コンサルタントはシステムエンジニアとコミュニケーションを密にとり、クライアント企業に最適な提案を行っていく必要があります。
FAS系
FAS領域では、企業の資本提携や売却、買収などのM&Aに関する支援を行います。FASとは、Financial Advisory Servicesの略です。企業の資金に関する課題解決を提案するコンサルタントになります。
そのため企業買収や企業の財務に関する実務の知識など、高度な能力が求められるのが特徴です。弁護士や公認会計士などの資格を持ったメンバーも、コンサルタントとして在籍しています。
人事系
人事領域とは、企業の経営資源である「ヒト・モノ・カネ」のうち「ヒト」に関する支援を行う業務です。クライアント企業の人事制度、評価制度、教育制度、組織戦略などを行います。「ヒト」に関する課題の解決策を検討し、提案を行う業務です。また実行フェーズもサポートする場合もあります。
クライアント企業の人事部長や人事部署などが顧客です。従業員のエンゲージメント向上や経営戦略に一致した組織編制、次世代の人材育成、採用などの支援を行います。
中小企業向け
中小企業向け領域とは、中小や中堅企業の経営課題などの解決策を提案する業務です。大企業と中小企業では、事業規模や従業員数が異なります。そのため抱えている課題の内容も違ってくると言えるでしょう。
中小企業に特化して課題解決を提案するのが、中小企業向けのコンサルタントです。
外資と日系
コンサルティングファームには、外資系と日系があります。アメリカで生まれた戦略コンサルティングサービスを、日本に持ち込んで展開したのが外資系です。一方国内でリサーチ業務を行っていた企業が、コンサルティングサービスを始めたものが日系となります。そのためそれぞれのコンサルティングファームでは、企業文化などが大きく異なるのが現状です。
下表にそれぞれの平均年収を紹介します。
項目 | 平均年収 |
外資系 | 1500万円以上 |
日系 | 700~1100万円 |
参考サイト:ハイキャリ就活「日系コンサルの強みとは」
外資
外資系のコンサルティングファームでは、「成長し続けるのが当然」という価値観が浸透しています。そのため「昇進するか去るか」(Up or Out)の選択が迫られる文化です。昇進できない場合は、辞めることになります。
ただし、人材を評価するときには多くの時間を費やすのが特徴です。上長は労力と時間をかけて部下を評価し、評価会議においてそれを認めさせることに全力を尽くします。そのため、時間をかけて総合的に人材が評価されていると言えるでしょう。
外資系が手がけるのは主に戦略コンサルティングです。優秀な人材をプロジェクトに組み込み、クライアント企業が気づかない視点で経営課題を洗い出し、解決策を提案していきます。仮説を立てそれを検証していきながら課題解決を進めていく方法です。
日系
日系のコンサルティングファームは、外資系のように明確な評価を行うことは少ないと言えます。また年功序列の色合いが強い企業も多く残っているでしょう。離職率も高くはなく、特定の分野に特化したベテラン社員が会社に貢献できる文化が残されていると言えるでしょう。
コンサルティングのスタイルも、リサーチ結果をもとに結論を導き出す手法となります。プロジェクトチームを編成するという方法ではなく、顧問契約という形で都度クライアント企業の相談に乗る形です。またコンサルタントがクライアント企業に対して、研修や勉強会を開催するサービスも増えています。
年収アップに必要なスキルは?
コンサルタントとして年収アップを目指す場合、必要なスキルは次のようなものがあります。
- 観察力、洞察力
- リサーチ力
- 分析力
- プレゼンテーション能力
- 業界の専門知識
- コミュニケーション能力
- 論理的思考力
コンサルタントは業界の専門知識だけでなく、これらの能力を総合してクライアント企業に最適な提案を行っていく必要があります。また昨今ではビジネス英語の需要も高まっている状況です。クライアント企業がグローバル展開することも考えられます。
このようにコンサルタントは環境の変化に素早く追従していく必要があるため、都度スキルを身に付けていくことを習慣化することが大切です。
フリーコンサルタントの収入事情について
フリーコンサルタントとは、コンサルティングファームや企業などに属さず、フリーランスとしてコンサルティング業務を行う形態です。継続して案件を受注することができれば、高額な報酬を得られると言えるでしょう。下表はフリーコンサルタントの役職別に収入をまとめたものです。
役職 | 案件の想定単価 | 想定年収 |
アナリスト | 70~100万円 | 1,000万円 |
コンサルタント | 100~150万円 | 1,500万円 |
マネージャー | 150万円~ | 1,800万円 |
シニアマネージャー | 170万円~ | 2,000万円 |
フリーコンサルタントは、案件を取ってくるのも案件をこなすのも自分自身となるため、継続して受注できるかどうかで収入が変わってきます。安定した収入を得るためには、継続的な案件の受注とクオリティの高いアウトプットが重要です。
まとめ
今回はコンサルタントの年収や評価基準、領域別の違い、フリーコンサルタントの収入などを紹介しました。コンサルタントの業務はクライアント企業の経営戦略に関係してくるため、難易度の高い仕事と言えます。そのため高い能力が必要となり、報酬も高額です。
一方フリーのコンサルタントとして独立した場合でも、継続的に案件を受注できれば高額な報酬を得ることが可能です。
コンサルタントは知的労働の要素が高いため、常にスキルアップの意識を持つことが重要と言えるでしょう。