最近よく耳にするようになった「メタバース」ですが、それが何を指しているのか、なぜ注目されているのか分からないという方も多いでしょう。そこで今回は、発展途上のメタバースに関する基礎的な知識や将来性、企業がメタバースを活用するメリット等について詳しく解説していきます。
目次
メタバースとは?
メタバースという単語は、主に「3次元のバーチャル空間(仮想空間)」を指して用いられることが多いですが、実はそれだけでは不十分です。
メタ(Meta:超える)とユニバース(Universe:宇宙・世界)という2つの単語を組み合わせた造語であるメタバースは、単なる仮想空間のことではありません。メタバース自体が「一つの世界」であり、その世界には現実世界とは異なる独自の社会、独自の世界観や価値観が存在します。
メタバースが現実世界を超えた一つの「世界」を指すならば、それは必ずしも3次元空間である必要はないはずです。実際に、人々が生身ではなくアバターで集まれる居場所やサービスのこと自体を「メタバース」と呼称することがあります。
このように、まだまだ発展途上段階であるメタバースは定義が曖昧なまま語られることが増えています。基本的には難しく考えず、「アバターを使って生活するバーチャル空間のこと」という認識で良いでしょう。
メタバース・VR・NFT・ブロックチェーンとの関係性
技術 | 関係性 | どのような関係? |
VR | ◯ | メタバースの世界を可視化する技術 |
NFT | ◎ | メタバースで取引される「モノ」 |
ブロックチェーン | ◎ | 仮想通貨・NFTの価値を担保する技術 |
メタバースを理解するうえでは、どのように世界が形成され、維持されていくのか、という点が重要です。
例えば、現実世界では国ごとに異なる通貨があります。通貨はそれぞれの国で認められ厳正に管理されることで、お金としての価値を担保しています。
メタバースにおいては、現実世界の「通貨」に当たるものが「ビットコイン」などの仮想通貨です。そして、その仮想通貨の価値を担保する仕組みが「ブロックチェーン」という技術です。
- 円やドルなどの通貨:国で価値・信頼性が担保される(中央集権型)
- 仮想通貨:ブロックチェーンにより価値・信頼性が担保される(分散型)
ブロックチェーンは通貨を一元管理せず、ネットワーク上で分散化・暗号化された状態で保持されます。そのため改ざんが非常に難しく、障害耐性も強いです。
そのブロックチェーン技術を用いて、仮想空間のデジタルデータを唯一無二の「モノ」として扱えるのが「NFT」です。NFTは現実世界の「モノ」と同じく複製できないため、全てのNFTが異なる価値を有することができます。
金融の仕組みができれば、メタバースに必要なのは「世界そのもの」です。VR(バーチャルリアリティ)技術により、人々はアバターという第二の身体(自我)をバーチャル空間で操りながら、仮想通貨を用いて取引したり、NFTを購入したりできます。
VRはメタバースそのものを指しているわけではありませんが、VR技術がメタバースを確立するうえで非常に重要であることは間違いありません。
メタバースが注目されている背景
メタバースが注目されている背景には、近年急加速している技術革新や大手企業の参入があります。
実は「メタバース」という概念自体は新しいものではありません。多くのSFやアニメ作品で扱われているように、数十年前から「仮想空間で生活する」という考え方は存在していました。
近年ではVRやARといった「現実を拡張する」技術が大きく発達しただけでなく、高速通信を可能にするネットインフラが大きく進歩しました。さらに、現実の国・政府に依存しないブロックチェーンを用いた金融取引も可能となりました。
メタバースが単なる物語上の構想からゲームを通じた「遊び」に変わり、やがて人々の生活と一体になれるだけの「世界」が確立されつつあるのです。
メタバースが活用されている分野、事例
次は、実際にメタバースが活用されている分野・事例について解説していきます。
- ゲーム業界
- ビジネス業界
ゲーム業界
メタバースを最も簡単に理解できるのが「VRChat」というサービスです。VRChatは「Oculus Quest2」等のVRヘッドセットを用いて、独自のアバターで参加できる多人数コミュニケーションゲームです。
VRChatでは3Dゲームのようにさまざまな世界(ワールド)が用意されており、現実世界と同じようにワールドの住民(参加者)達とコミュニケーションを取ることができます。
ただし現状VRChatは仮想通貨が利用できないため、メタバースの本質という意味では「THE SANDBOX」や「Bloktopia」といったゲームの方が近いかもしれません。
これらのゲームでは、「イーサリアム」などの仮想通貨を用いてNFTアイテムを購入したり、購入したNFTを売却することで利益を上げることが可能です。
ビジネス業界
メタバースを新たなビジネスチャンスと捉えて新規参入する企業が増えています。
例えば国内最大規模のメタバースイベント「バーチャルマーケット2022」では、約60もの企業が参画し、バーチャル空間に店舗を設けたり、独自のキャンペーンを開催したりしました。
とりわけファッション分野とメタバースの親和性は高く、メタバース内で自由に服を試着できるようにしたり、企業がメタバースのみで着用できるNFTファッションアイテムを発売するなどの取り組みが行われています。
メタバースを活用するメリット
メタバースが普及するには、メタバースを活用するメリットが見出されなければなりません。
そこで次はメタバースを活用するメリットについて、以下の3点をそれぞれ解説していきます。
- 新規ビジネスの可能性
- オンラインで世界中と繋がれる
- NFTとの親和性
1,新規ビジネスの可能性
先程メタバースのみで着用できるファッションの例を取り上げましたが、メタバースが主流になれば「メタバースで購入できる現実世界の服」や「メタバース世界だけで着られる服」に、新たな価値が生まれます。
企業が実際にメタバース内で商品を宣伝したり販売できるという事実は、今までは考えも付かなかったビジネスチャンスが広がっていることを示しています。
2,オンラインで世界中と繋がれる
メタバースは国を超えて多くの地域の人と繋がることができます。実際に「VRChat」では、同じワールド内に多くの地域のユーザーが集まり、チャットやボディーランゲージ、スタンプ等でコミュニケーションを行っています。
3,NFTとの親和性
すでに解説したとおり、メタバースはブロックチェーンによって価値が担保されるNFTとの親和性が非常に高いです。
いわゆる「ゲーム内通貨」で買えるアイテムは、そのほとんどが誰でも買えてしまうものであるため実質的な価値が生まれません。
しかしNFTは同一のものが一つもなく、それぞれが異なる価値を持っているため、現実世界と同様に「仮想通貨を支払ってでも取引をする意味」が生まれます。
メタバースを活用する上での課題・注意点
次は、メタバースを活用するうえでの3つの注意点について解説していきます。
- ウォレットの課題
- 秘密情報の観点
- 送金時のミス
1,ウォレットの課題
今後のメタバースでは仮想通貨での取引が中心になっていくと予測されますが、ユーザーの仮想通貨を管理する「ウォレット」にはセキュリティ上の問題点があります。
過去には、数億ドルものビットコインが取引所への不正アクセスにより盗まれるという事件が発生しています。
仮想通貨の管理には、ウェブウォレットではなくハードウェアウォレット等の「コールドウォレット」を利用することでセキュリティを向上できますが、一度秘密鍵を紛失すると二度と取り返せないため注意が必要です。
2,秘密情報の観点
不正アクセスのリスクはメタバースそのものにも存在します。いくら仮想通貨の価値がブロックチェーンで担保されているといっても、メタバース自体はオンラインで成立するものです。
そのためハッキングによって不正にIDやパスワードを取得されたり、なりすましによる名誉毀損等の被害を受けるリスクがあります。
3,送金時のミス
メタバースの仮想通貨取引に関するもう一つの注意点は、送金時のミスです。仮想通貨は送金先のアドレスを1語でも間違えると送金処理が行われません。
さらに一部の仮想通貨はアドレスが間違っていても送金処理が行われてしまう場合があり、その場合の仮想通貨は(送信者に非がない場合を除き)決して返金されません。
メタバースと投資との関係性
メタバース上の取引で用いられる仮想通貨は、投資と深い関係性があります。実際にゲーム内通貨として仮想通貨が用いられているゲームでは、ゲーム内アイテムがNFTとして販売されており、売買が可能です。
仮想通貨の価値が上がっているときに、専用ストアでレアNFTを売却できればリターンとして利益を得ることができます。NFTを活用して投資が可能なゲームは今後も増えていくと予想されます。
メタバースの今後・将来性
いわゆる「オンラインゲーム」のような閉じたバーチャル空間と異なり、現実世界と対をなす形で存在するメタバースは、今後「Web3.0」の推進によってさらに普及していくと予想されています。
現状は過渡期のため課題も多く、人々の理解が得られなかったり、投資に足踏みする企業が多いのも事実です。しかし、メタバースを体験するためには誰もがVRゴーグルを被らなければならないわけではありません。
現在のような「大企業中心」の中央集権型SNSに代わって、「ユーザー」が中心となる分散型ネットワークのメタバースが主流になる未来は、そう遠くないでしょう。
メタバースに関するコンサル案件
最後は、実際にあるメタバース関連のコンサルティング案件を紹介していきます。
アバター作成(開発)
「VRChat」などのメタバース内で分身として用いられるアバターは、簡単なものなら誰でも自分で作成できますし、最初から用意されているものを用いれば事足ります。
しかし、メタバース内においてアバターはアイデンティティを体現する唯一無二の要素であるため、プロに作成を外注し高クオリティのアバターを開発してもらう、という需要があります。
コンサルティング
これから進むメタバースの普及に向けて、多くの企業からのメタバースに関するコンサル案件が増えていくことでしょう。
とりわけ現状では未経験者が多い分野であるため、単にITに精通しているだけでなくメタバースアプリの開発経験があったり、未だ不安定な市場の動向を探りながら適切な事業支援を行えるような人材が求められています。
まとめ
今回の記事では、メタバースについて解説しました。コンサルティング案件などを探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。