近年のメタバース業界は金融業界において浸透してきており、様々なサービス実用化が期待されるようになりました。
この記事ではメタバースと金融業界の関係性について活用事例や今後の展望などを交えて解説します。
目次
金融業界のメタバース参入の現状
金融業界のメタバース参入の現状は、急速成長が見込まれる中で様々な付随サービスが検証・実践段階にあるといえます。
ここでは今後主流になっていくであろうサービスや、付帯活動について紹介していきます。
デジタル資産を使用した決済サービスの登場
金融業界のメタバース参入は、私たちの経済活動に多様な選択肢をもたらすことが期待されています。メタバース空間では暗号資産のようなデジタル資産を使った決済が主流となることが予測されており、暗号資産を管理するためのウォレットがメタバース空間においては必須のアイテムとなります。
2022年6月には日本の参議院で、他の先進国に先駆けてステーブルコイン(暗号資産関連)に対する規制を法律とした「改正資金決済法」が可決、成立しています。これにより、ステーブルコインを取り扱う事業者は新たに暗号資産交換業者として再登録する必要があり、本人確認が義務づけられるようになりました。
メタバース空間は今後のビジネスを担うものとして注目を浴びている一方で、まだまだ発展途上な部分も多いです。そこにどうやって安全性をもたらすかという議論が当面の課題になると考えられます。
金融ビジネスの多方面化
金融×メタバース空間の中では、金融ビジネスの多方面化が期待されます。すでにいくつかの金融サービスは実証段階に入っており、証券会社による相場疑似相談体験、損害保険会社によるメタバース上での保険販売に向けたチャネル開発、メタバース空間上の不動産購入のための住宅ローン提供など、数々の試みが試行されています。
今後のメタバース空間における決済や金融商品のやり取りは、アバターと現実世界に存在する自分を対象とした金融サービスが展開されることになると予測されます。メタバースという新たな概念の到来については法整備や安全性などまだまだ話し合いの余地があり、 既存の国内法を基礎に考えつつも、自由な発想を持ちながらメタバース空間の利用者の数を増やしていく必要があります。
金融業界のメタバース参入パターン
金融業界におけるメタバースの参入パターンにはいくつかのビジネスモデルが存在し、経済活動のさらなる活性化が期待されています。
ここでは、現実世界で私たちが享受しているサービスがメタバース上でどのように展開されるのかを紹介します。
営業チャネルの展開
金融業界におけるメタバース参入のパターンとして、既存の金融サービスに新たな営業チャネルを展開させていく試みがあります。イメージとしてはメタバース空間に仮想店舗を展開し、現実世界と同様に営業活動をしたり、メタバースの特徴を活かした体験活動が主流になるというものです。
顧客にとってはメタバース空間上から好きな時に来店が可能になるので、現実世界のようにわざわざ店舗まで足を運ぶ必要がなくなります。企業にとっては、これまで金融機関と関係性が深くなかった若年層を新規見込み客として抱え込むことができる点や、メタバース空間移行に伴う業務の効率化、現実世界における人件費などの経費削減につなげることが可能です。
金融サービスの展開
金融業界におけるメタバース参入のもうひとつのパターンとして、金融サービスの展開が挙げられます。これまで現実世界でしか体験できなかった旅行、買い物、不動産売買などがメタバース空間上で実現可能となります。
日本国内でも数多くの企業がメタバースに注目しており、証券会社や銀行、保険会社などがほかの業種と協業して新たなビジネスを生み出す流れが加速するようになりました。すでにみずほ銀行、JPモルガン・チェースなどの大手金融機関がメタバース上での仮想店舗開設に成功し、社員がアバターを通した顧客との対話実現を進めています。
(参考:みずほ銀行が「メタバース」に参入へ プラットフォーム構築力が問われる日本)
(参考:JPモルガン、メタバースに情報拠点 金融サービスも視野)
その他にもNFTや仮想通貨市場に関する相談、デジタルアセットの保険に関するやり取り、eスポーツチームへの応援支援金提供が金融機関を通して可能になるとの期待が高まっています。メタバース自体はゲーム業界との関わりが深く、これからのサービス提供内容が気になるところとなります。
金融業界におけるメタバース活用事例
銀行
JPモルガン・チェース(メタバース上に仮想店舗を開設。金融サービス提供開始へ。)
大手米国銀行のJPモルガン・チェースは、メタバース空間「Decentraland」に仮想店舗の開設を成功させました。利用者はアバターとして訪れることで、暗号資産に関する事案を相談することが可能となっています。
同行の仮想店舗の展開は、メタバース上での顧客の需要を探しながら将来的に最適な金融サービスの展開方法を打ち出す狙いがあるともみられています。
(参考:JPモルガンが銀行初のメタバース参入【年間1兆ドル市場での金融サービスを見据える】)
三菱UFJ信託銀行(メタバース上での新卒採用イベントを開催。)
三菱UFJ信託銀行は、日本最大級のメタバースプラットフォーム「Cluster」上で新卒社員の採用イベントを執り行いました。Cluster上に同行の面接会場(大会議室)をバーチャルに再現し、メタバース空間でのオフィス訪問を可能としています。
近年のコロナ禍によって、新卒採用における企業訪問に歯止めがかかっている状況を打開する手段のひとつとして各企業からの注目が集まっています。
(参考:三菱UFJ信託銀行が「cluster」を使ったバーチャル空間で新卒採用イベントを開催!)
みずほ銀行(メタバース上に店舗を開設し、決済機能提供などを検討中。)
みずほフィナンシャルグループは、2022年8月に開催されたメタバースイベント「バーチャルマーケット2022」においてオリジナル3Dモデルの配布やゲストを招いた金融知識に関する座談会を執り行っています。
実際に金融知識のあるみずほ行員とアバターを通じたコミュニケーションを取ることが可能となっており、話題を呼ぶイベントとなりました。同行は将来的に段階を踏んでメタバース上の店舗で資産形成の相談、決済手段の提供などの実現に向け実証が進んでいます。
(参考:メタバースビジネスに向けた<みずほ>の取り組みについて ~「バーチャルマーケット2022 Summer」への出展について~)
生命保険
損保ジャパン(ANAと提携しメタバース上で実証実験。)
損保ジャパンは、ANAホールディングスグループ傘下であるANA NEOとの提携を発表しています。ANA NEOが開発中の新たなメタバース空間である「SKY WHALE」上でメタバース空間での新たな保険商品開発やサービス提供の可能性を実証していく構えを見せたことが話題となりました。
損保ジャパンが知識を有する保険とリスクに関する分野をはじめ、メタバース空間の特徴を生かしたデジタルアセットに関する商取引やUXを保証する保険、Web3型のモデルについて深く話し合いが行われる予定となっています。
(参考:「メタバース金融」実現へ。ANA・損保ジャパン・三菱UFJが協業)
東京海上日動(大災害の予測にデジタルツインを使用。)
東京海上日動はNTTコミュニケーションズと共同で、複数の大規模自然災害をデジタルツインで予測する研究を開始しました。この研究では災害の種類や規模に応じた複数パターンの初動対応を策定しています。
防災アプリやクラウド型防災管理の研究についてはメタバース上でのリスクデータを活用し、関連保険商品についても研究していく構えを見せています。
(参考:東京海上日動ら、大規模災害を予測するためのデジタルツイン活用に着手)
明治安田生命(クラスター上にバーチャルスタジアムを開設。
明治安田生命は、日本最大のメタバースプラットフォームである「Cluster」上に、Jリーグのスタジアムを彷彿とさせるバーチャルスタジアムを開設しました。
このバーチャルスタジアムでは、健康や保険の知識を学べるクイズやゲーム、Jリーグの試合映像配信などの様々なコンテンツを提供しています。
同社ではコロナウイルス感染拡大の代替策のための非対面コンテンツとして、メタバースの活用を積極的に推進しているとのことです。
(参考:明治安田生命、メタバース上に「明治安田生命バーチャルスタジアム」を展開)
金融業界におけるコンサル案件事例
PwC Japanグループによるメタバースコンサルティング
PwC Japanグループは、メタバースを活用したビジネス変革や事業構想の立案と実現に関するコンサルティングを行っています。
「コア事業視点」、「バリューチェーン視点」、「メタバース業界全体の視点」の3つの視点からアプローチをかけ、企業のメタバース推進を支援しています。
(参考:PwC Japanによるメタバースコンサルティング)
まとめ
金融業界でのメタバース活用の将来性は、今後大きく発展を遂げる可能性があります。すでにメタバース空間を利用した新たな技術や分散型アプリが開発され、企業レベルで導入されているものまで数多く存在しています。
金融という言葉から縁遠かった若年層を取り込むことができるという意味では、メタバース空間は大きなコンテンツであります。これからは仮想通貨やNFT、Play-to-earnモデルの流通によって私たちの持っているビジネスの固定観念が覆ることになると考えられます。
しかしながらメタバース空間は法律による規制や安全性がいまだ完全には行き届いていない空間でもあるので、早急な法整備が取り急ぎ求められることになることは留意しておく必要があります。
今回の記事ではメタバース空間における金融業界の可能性についてご紹介しました。DX案件を探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。