目次
SEとITコンサルの違い
SEは基本的にシステム開発関連のタスクのみを役割とすることが多くなりますが、ITコンサルはシステム開発以前の段階からプロジェクトに参画することも頻繁にあります。業務内容から年収まで、異なる点は少なくありません。
業務内容の違い
SEは基本的にシステム開発プロジェクトの上流から下流まで全ての工程(要件定義、設計、実装、テスト、運用・保守)のタスクを担当します。通常、ITコンサルと比較するとシステム開発のより詳細な部分のタスクを担当することが多くなります。
それに対し、ITコンサルは要件定義よりも前のクライアントとプロジェクトの方針や業務改革などの検討段階からプロジェクトに参画することもあります。そのため業務内容は多岐にわたりますが、業務分析、システム導入後の効果分析、システム開発のスコープの決定・合意(システム化対象の業務とそうでない部分を明確にする)など、システム開発の前段階からプロジェクトには入ることも多くなります。
業務量の違い
SEとITコンサルの業務量はどちらも企業やプロジェクトにより異なるため、仕事量はどちらの方が多いのかを一般的に述べることはできません。
強いて言えば、ITコンサルはSEと比べると管理職のメンバーであることが多くなるため、やや業務量が多くなる傾向にあると言えるでしょう。ともに顧客との関係をうまく築くことができていない場合や、システム開発で不具合が多発する場合などは特に激務になりやすくなります。
年収の違い
一般的にはSEよりもITコンサルの方が高くなる傾向にあります。
SEの平均年収
- 20代→約300~400万円
- 30代→約400~450万円
- 40代→約450~550万円
- 50代→約550~600万円
(参考:システムエンジニア(SE)の年収給料・20~65歳の年収推移・役職別年収)
求人例
■業界
電力会社
■案件概要
RPAツールの導入支援
■仕事内容
業務の自動化に伴い、Uipathの導入を行う。 ヒヤリングから要件定義、検証テストまでを担当いただく。
■勤務地:都内
■稼働率:100%
■単価:150万円/月
(参考:foRPro|フリーコンサル案件紹介サイト)
ITコンサルの平均年収
- 20代で約400~650万円
- 30代で約500~700万円
- 40代で約650~850万円
- 50代で約850~950万円
(参考:itコンサルタントの年収給料・20~65歳の年収推移・役職別・独立したときの年収)
求人例
■業界
大手総合商社
■案件概要
トレーディング基幹システムの刷新支援
■仕事内容
IT投資に関するルールが整備されておらず赤字プロジェクトが放置されていたIT投資に関するルール策定と運用コスト情報の整理と配賦ルール策定支援を担当いただく。
■勤務地:都内(リモート)
■稼働率:100%
■単価:180~200万円/月
(参考:foRPro|フリーコンサル案件紹介サイト)
ITコンサルタントの種類
一口にITと言っても、現在のIT業界では様々な分野があり、それにより求められる専門性が全く異なります。ITコンサルタントの種類としては次の5つがあります。
- SAPコンサルタント
- ERPコンサルタント
- SCMコンサルタント
- CRMコンサルタント
- セキュリティコンサルタント
- デジタルコンサルタント
SAPコンサルタント
SAPコンサルタントとはSAP専用のコンサルタントです。SAPとは現在世界で最もメジャーなERPパッケージになります。SAPは企業の受発注や会計など、できることも幅広いがシステム設定が非常に複雑なため、専門のコンサルタントが必要になります。
ERPコンサルタント
ERPコンサルタントはSAPコンサルタントと同じくERPパッケージのコンサルティングを行うコンサルタントです。基幹業務において社内業務の効率化や、よりよいシステムの導入を中心に行います。
SCMコンサルタント
SCMとは供給管理のことを指し、複数の企業間の物流を管理する仕組みのことを言います。SCMコンサルタントはこれらの物流の課題を見直し、効率的に受発注ができる仕組みやシステムの導入を支援します。
CRMコンサルタント
CRMとは顧客管理のことを指し、顧客から得られた情報をとりまとめ管理することを言います。CRMコンサルタントは顧客管理やマーケティング戦略を支援するために、クライアントの情報を整理し、最適な顧客管理システムの構築や変更などを担当します。
セキュリティコンサルタント
セキュリティコンサルタントは企業のセキュリティ問題をメインに取り扱うコンサルタントです。企業のシステムや業務フローを分析し、セキュリティのリスクを見つけ出し、対策を支援することが主な業務となります。
デジタルコンサルタント
デジタルコンサルタントは、最新の技術を利用して企業のデジタル化を支援するコンサルタントです。AIの活用支援、画像解析技術の支援などがデジタルコンサルタントの業務例となります。
(参考:ITコンサルタントを理解する!初心者でも分かる仕事内容、種類、市場価値などを簡単に解説! | 案件評判)
(参考:デジタルコンサルタントって何してるの?|実際の働き方から求める人物像を考察してみた | 就職活動支援サイトunistyle)
SEからITコンサルへ転職した後で多い後悔
ITコンサルは、様ITだけにとどまらない多種多様な経験を積むことができるため、仕事の幅を広げていくことができる魅力ある職業です。しかしその一方、ITコンサルに転職して後悔する人が一定数いることも事実です。
仕事が激務
ITコンサルはクライアントと直接仕事をすることが多いため、激務になりやすい職業でもあります。近年コンサルティング業界のホワイト化が進んでいますが、クライアントに提供する価値内容に変わりはないため、一層効率的に進める必要があります。
勉強が大変
ITコンサルは前述の通りIT以外のスキルや経験も必要になります。そのため、必要な勉強は挙げれば切りがありません。さらに顧客の課題を理解する必要もあるため、プロジェクトに参画後も常にそのビジネスや業務を学んでいく必要があります。
ITのスキルと経験があれば十分仕事ができるというイメージでITコンサルになる人もいますが、その場合、転職した後で勉強が想像よりはるかに大変だと感じ後悔することが多いようです。
地味な仕事も多い
高給であるため、ITコンサルは「AI、ブロックチェーン、IoTなど最新技術の開発や導入」、「経営者との交渉」、「多くのメンバーのマネジメント」など、優秀な人が充実したビジネスライフを送っているというイメージ持っている人も多いようですが、実際には地味な仕事もたくさんあります。
打ち合わせスケジュールの調整、議事録の作成、資料の作成、など事務的な仕事もこなしていく必要があります。ITコンサルはどのような仕事をしているかを調べずに転職してしまうと、大きなイメージのギャップを感じてしまうこともあります。
ITコンサルが激務になる理由
ITコンサルティングはよく激務になりやすいと言われております。ITコンサルタントが激務になりやすい理由としては次の3つ理由があります。
- プロジェクトに納期が決まっているため
- クライアントの要件が設計・開発タイミングで追加されるケースがあるため
- ITコンサルタント自体が人員不足のため
プロジェクトに納期が決まっているため
プロジェクトには納期が決まっております。納期はプロジェクトの終わりに終われば良いわけではなく、定期的に行われるクライアントへの報告に合わせて仕事をしなければなりません。したがって、毎週仕事のターゲットが決まるため、そこに合わせて仕事をする必要があり、激務になりやすい傾向にあります。
クライアントの要件が設計・開発タイミングで追加されるケースがあるため
多くは要件定義フェーズで要件を洗い出してもらえますが、スケジュールの都合上、詳細な要件は設計タイミングに後回しにするケースがあります。その場合、要件定義フェーズでは概要しか議論ができず、設計タイミングや開発タイミングで要件の変更や追加が発生します。その結果、手戻りが発生したり追加で要件の再検討、見直しが必要になり激務になりやすい環境が発生します。
ITコンサルタント自体が人員不足のため
IT業界は現在、急成長の業界であり、ITコンサルタントだけではなくAI技術や保守・運用業務でもIT人材が求められています。その結果、IT人材の取り合いとなっており、需要に対して供給が足りない状況です。
そのため、プロジェクトに必要な人数を確保することができずに、一人ひとりの負荷が上がり、激務になりやすい環境となっています。
ITコンサルで激務になりやすい人の特徴
ITコンサルは上述したように、激務になりやすい業界ですが、ここでは特にITコンサルティングで激務になりやすい人の特徴をご紹介します。
激務になりやすい人の特徴としては次の5つが挙げられます。必ずしも能力が足りていないから激務になるわけではないので注意しましょう。
- スキルがマッチしていない人
- プロジェクト内で固有のスキルを持っている人
- 計画が立てられない人
- 断れない/納期調整が苦手な人
- 非常に優秀な人
スキルがマッチしていない人
スキルがマッチしていない人は必要なスキルのキャッチアップから始める必要があります。そのため激務になりやすいです。
プロジェクト内で固有のスキルを持っている人
プロジェクトで必要なスキルを数人しか保持していない場合、そのスキルが必要な業務はすべてその数人に集中してしまいます。そのため、激務になりやすくなります。
計画が立てられない人
計画が立てられない人はいつ何をすれば良いのか明確になりません。したがって、優先度を考えずに余計な作業から取り組んでしまい、納期直前に激務になりやすくなります。
断れない/納期調整が苦手な人
断れない/納期調整が苦手な人はクライアントの要望・納期に沿って引き受けてしまうため、激務な環境を生み出してしまいます。クライアントの要望は必ずしも今やる必要がないもの等もあるため、納期を調整した上で作業に取り組む必要があります。
非常に優秀な人
非常に優秀な人も激務になりやすい傾向にあります。優秀な人の場合、プロジェクトで重宝されるが故、クライアントから直接指名されたりします。優秀であるが故に様々な依頼がきて、激務になりやすい傾向にあります。
SEからITコンサルに転職するメリット
SEからITコンサルへ転職する人は数多くいます。その理由は、前述のSEと比べると年収が高いということに加え、以下のようなメリットがあるためです。
顧客へ幅広い提案ができる
ITコンサルタントは顧客に対してより多様な価値を提供することが可能です。SEは、顧客の課題に対して、それに適したシステムを開発・導入する形で問題を解決します。一方、ITコンサルであれば、システム開発がスタートする前からプロジェクトに入る機会も多くあるため、課題に対してシステム開発以外の提案を行うことも可能です。
仕事の幅が広がる
ITコンサルタントはシステム開発以外のタスクもアサインされます。時に経営関連、ビジネス関連、業務関連のスキルも必要になります。IT関連にとどまらない業務を経験できるため仕事の幅を広げやすい職業になります。
SEでのスキルや経験を活かせる
システム開発以外の領域も経験できますが、やはりITでの問題解決が主軸になることが多いです。顧客の課題に対し、ITのソリューションで解決すべきか、それともそれ以外の方法で解決をすべきか、問題を分析し最適な解決方法を提案・実行していくことが求められます。このようなバリューを出していくには、当然高度なITスキルや経験が必要で、SEとして働いたことがあれば、それはITコンサルタントとしてより高い付加価値を出していく上で有効な経験の一つになります。
ITコンサルで求められるスキル・経験
ITコンサルはその名前の通り、ITスキルと顧客の課題を解決する力が必要になります。特に以下のスキル・経験が重要になります。
- システム開発・導入の経験
- マネジメント力
- コミュニケーション能力、プレゼン能力、交渉力
システム開発・導入の経験
ITコンサルの案件で特に多いものは、新規のシステム開発、既存システムの改修、ソフトウェア開発会社が提供するシステムの導入(SAP、Salesforceなど)など、ソフトウェア開発・導入のプロジェクトになります。そのため、ITコンサルとして仕事をしていくにはシステム開発関連の経験があると非常に有利です。
マネジメント力
ITプロジェクトの管理・運営が最も多い仕事の一つになります。開発メンバーのアサイン、テストタスクのマネジメント、外部ベンダーの開発進捗管理など、多くのメンバーとそのタスクの状況を確認しながら、プロジェクトを決められた予算内でスケジュール通り推進していく力が求められます。
コミュニケーション能力、プレゼン能力、交渉力
他人に対して自分の考えを適切に説明し納得してもらえるスキルも重要です。ITコンサルはクライアント、開発メンバー、外部ベンダ、など仕事で関わりを持つ人が多くなります。それぞれの相手のバックグラウンドに合わせた適切なコミュニケーションが求められます。
ITコンサルタントに向いている人
ITコンサルタントに向いている人は以下の通りです。
- 論理的思考が得意な人
- 人間関係の構築が上手い人
- 積極的に知識のインプットが出来る人
論理的思考が得意な人
ITコンサルタントに論理的思考力は必須です。何かを提案する際や、クライアントの要望に対して断る場合など、論理的に説明できなければ、クライアントは納得しません。そのために論理的思考が得意な人は提案業務やクライアントとの交渉などができるようになり、活躍の場が広がるでしょう。
人間関係の構築がうまい人
人間関係を構築するスキルも非常に重要です。ITコンサルタントのプロジェクトは半年から3年程度続きます。人間関係の構築がうまくいかないと必要な情報が伝達されない、要件定義で必要なことを聞き出せないなど、業務に支障をきたす恐れがあります。そのため、人間関係の構築が得意な人はITコンサルタントの業務に向いていると言えるでしょう。
積極的に知識のインプットができる人
ITコンサルタントはクライアントの業務や新しいIT知識を常に身に着け、提案する力が必要になります。積極的にキャッチアップできない人は、クライアントの業務を理解せずに話しを進め、認識齟齬を生んだり信頼感を失う危険があります。そのため、積極的に知識をインプットすることはITコンサルタントを目指す上で、必要な資質と言えるでしょう。
SEからITコンサルへの転職時に気をつけること
ITコンサルへの転職を成功させるためには、その仕事が自分に適切であるかを確認することが特に重要になります。転職前に実際にどんなことをするのかを自分なりに調査し、ITコンサルに対して持っているイメージと現実にギャップが無いかどうか確認することがポイントです。
仕事内容、働き方が自分に合っているか確認する
ITコンサルは実は地味な仕事も多く、忙しい職業でもあります。給料が高いというメリットだけを考慮して後悔したという人は数多くいるため、まずは具体的にどんな仕事をしているのかを理解し、自身に合った職業であるかどうかを見極めることが最も重要になります。
転職を検討している企業が自分に合っているか確認する
労働環境や事業の側面で企業を調査しておくことも重要です。口コミサイトなどで転職を検討している企業の事業、募集職種、ワークライフ、年収などを調べておくことで、働き方の解像度が上がります。
ITコンサルと一言でいっても、仕事内容、働き方は企業によって全く異なるので、経営コンサルも含む様々な経験が積める企業、システム開発に注力しITの専門知識・経験を高めていける企業、リモートワークなどワークライフバランスを重視する企業など、自身の判断軸を明確にすることが重要です。
ITコンサルへの転職「失敗」事例と「成功」事例
ITコンサルの選考過程での失敗事例、成功事例を見ると、ITコンサルになるには求められるスキルや経験を正しく理解し、自分自身の軸(どんな仕事がしたいか、どうなっていきたいか、など)を明確にして臨むことが重要であると言えます。
失敗事例
転職の失敗事例では、以下のような内容が挙げられます。
- 書類(エントリーシート、志望動機書、職務経歴書など)で主張が伝わらない
- 面接で落ち着きが無い印象を持たれてしまう
- 面接時に自分の考えをうまく言葉にできない
主にコミュニケーション力に何か問題があると判断されることが転職の失敗につながりやすいと言えます。書類で意図が伝わらない文章を書き、論理的思考能力が無いと判断されてしまう、面接時に声や身振り手振りが大きすぎたため落ち着きが無いという印象を持たれてしまうなどがあります。
成功事例
転職の成功事例では、以下のような内容が挙げられます。
- 自分の軸を明確にして面接に臨んだ(Sierでは出せない価値をクライアントに提供したい、汎用的なビジネススキルを高めたい、など)
- 業界研究をしっかり行う
- 自分の経験を今までの経験を分析し企業やプロジェクトを選択した
ITコンサルタントは、顧客に対してソリューションを提案する立場になるため、自分の考えを明確にして相手に伝えることが求められます。そのため、面接時もITコンサルタントになって何がしたいのか、どうしてそう思うのか、今後どのようなキャリアを歩みたいのか、などを合理的にそして明確に言えることが重要になります。
また、自分の経験や強みをしっかり理解することも大切です。特に中途採用やフリーランスであれば即戦力になることが求められるため、未経験のプロジェクトに採用されることは非常に難しくなります。自身のこれまでの経験を振り返り、それを活かす形でアピールすることが採用につながります。
Tコンサルに役立つ資格
ITコンサルに役立つ資格は以下の通りです。コンサルタントはキャッチアップ能力や論理的思考力、コミュニケーション能力が重視される世界なので、資格はあくまで自身の勉強の一環として獲得を目指すものと考えておくと良いでしょう。
【基本情報技術者試験/応用情報技術者試験】
国家資格である基本情報技術者試験/応用情報技術者試験は、一般的・汎用的なIT知識を身に着けることが可能です。
【プロジェクトマネージャ(P2M)】
日本プロジェクトマネジメント協会が認定する資格になります。プロジェクトマネジメントのことが分かるため、プロジェクトマネジメントに関して体系的に理解したい方は勉強すると良いでしょう。
【Oracle Master】
こちらはOracle社が提供している資格になります。OracleDBはプロジェクトのプラットフォーム検討の際に必ずといっていいほど候補に上がります。理解しておくとOracleDBだけではなく、汎用的なRDBMSについても理解が深まるので勉強して損はないでしょう。
【ITILファンデーション】
ITILとはITサービスマネジメントの知識のことを指します。運用保守業務に関するところで必要となってきます。運用保守業務の管理職の方は勉強しても良いでしょう。
(参考:ITコンサルタントにオススメの資格12種類を難易度と併せて解説 | ContactEARTH for Expert)
まとめ
今回の記事では、エンジニアからコンサルタントへの転職について解説しました。コンサルティング案件などを探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。