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AWSとは
AWSとは、「Amazon Web Service」の略称で、米国のAmazon社が提供しているクラウドコンピューティングサービス(以下、クラウドサービス)の総称です。クラウドサービスとは、インターネットを介して、サーバー・ストレージ・データベース・ソフトウェア等のコンピュータを使った様々なサービスを利用することを指します。
クラウドコンピューティングでは、1台のPCとインターネット環境さえあれば、サーバーや大容量のストレージ、高速なデータベースを必要な時に、必要な分だけ利用する事ができます。
クラウドサービスの種類・代表的サービス
クラウドサービスの種類
クラウドサービスには大きく分けて3つの種類があります。
- Infrastructure as a Service (IaaS)
- Platform as a Service (PaaS)
- Software as a Service (SaaS)
Infrastructure as a Service (IaaS)
Infrastructure as a Service (IaaS)は、システムの稼働に必要な仮想サーバやネットワークなどのインフラをインターネット経由で提供するサービスを指します。
AWSをはじめとしたクラウドサービスはIaasに該当します。
Platform as a Service (PaaS)
Platform as a Service (PaaS)は、アプリケーションソフトが稼働するためのデータベースやプログラム実行環境などが、インターネット上で提供されるサービスのことを指します。
Software as a Service (SaaS)
Software as a Service (SaaS)は、クラウドサービス経由で提供されるソフトウェアのことを指します。ユーザー側にソフトウェアをインストールするのではなく、ベンダー(プロバイダ)側でソフトウェアを稼働させ、ユーザーはネットワーク経由でソフトウェアの機能を活用します。
代表的なクラウドサービス
AWS以外の代表的なクラウドサービスとしては下記が挙げられます。
- Microsoft Azure:米国Microsoft社が提供
- Google Cloud Platform(GCP):米国Google社が提供
- IBM Cloud:米国IBM社が提供
- Alibaba Cloud:中国Alibaba社が提供
AWSの需要状況
クラウドサービスの全世界でのシェア

Amazon社が提供するAWS以外にも、Microsoft社、Google社、IBM社を始め世界各国のIT企業がクラウドサービスを提供していますが、その中でもAWSは抜群の知名度を誇っています。調査会社の米Synergy Research Groupが2022年第1四半期時点でのグローバルにおけるクラウドサービスのシェアを調査したところ、AWSが33%のシェアを占めており1位でした。以降22%でMicrosoft、10%でGoogleと続きます。
Amazon、Microsoft、Googleだけで全体の65%を占めており、クラウドサービスが寡占市場であることがわかります。
(参考:グローバルのクラウドインフラ市場はAWS、Microsoft、Googleの寡占が強まり6割超に 2022年第1四半期の調査結果)
AWSの立ち位置
AWSは様々な場所で使用されておりクラウドサービスの中では中心的な立ち位置と言えるでしょう。AWSは、現在業界・業種・規模を問わず様々な企業に利用されています。
企業だけでなく、官公庁や地方自治体などでも幅広く利用されており、大阪府の新型コロナ追跡システムの基盤として活用される等、人々の生活にも大きな影響を与えるサービスになっています。

2021年10月には、発足したばかりのデジタル庁が日本政府の共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」としてAWSとGCPを採用したと発表しました。企業はもちろん、官公庁や地方自治体においてもDXが叫ばれる中で、AWSはとても重要なサービスと言えるでしょう。
(参考:AWSとGCPが日本政府の共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」)
AWSの需要が高い/選ばれている理由
他社に先駆けてサービスを開始したことでシェアを拡大したから
AWSは、クラウドサービスの先駆けとして2006年にサービスをスタートしました。Amazonは需要を他社に先駆けて予測し、技術への投資とノウハウの蓄積を行い、顧客のニーズに合致したサービスを提供し続けてきました。
その結果が、現在の地位を確立した一因であるとも言えるでしょう。
初期費用無料&従量課金で使いやすいから
オンプレミスの時代には、新しいインフラの構築には要件定義〜ハードウェアの調達・設置・デプロイと長いリードタイムと高い初期投資が必要でした。
AWS では、初期費用なしにITリソースを確保でき、従量課金で利用することができるため、小規模で始めることが可能です。
初期費用・従量課金制というビジネスモデルで、スモールスタートできる点が選ばれている理由であると言えるでしょう。
継続的な値下げを実施しているから
AWSでは「サービス開始後に109回以上(2021年11月現在)の値下げを実施している」と公式で発表しています。
AWS は、日本の2拠点(東京・大阪)を含む全世界25の拠点でデータセンターを運営していますが、スケールメリットを生かして、サーバーの調達コストやデータセンター・ネットワークの維持コストの引き下げを図っています。
クラウドサービスの利点を生かし、最先端の技術をいつでも利用可能だから
AWSは、Amazon社が提供するクラウドサービスの総称であり、200を超えるサービスを提供しています。日々世界各国の顧客から改善のリクエストを受け取っており、「2020年には2,757回に上るリリースを実施した」と発表しています。
高速での改善や最先端技術が実装されたサービスを享受できるのも需要が高い理由と言えるでしょう。
サイジングを柔軟に変更可能だから
AWSを利用すれば必要な時に必要な分だけ、サーバーの台数の増減や、サーバーのサイズの変更も可能な点も選ばれている理由の1つです。
従来、自社でシステムを用意すると、ユーザー数の成長を予測してITリソースを確保する必要があり、企業にとっては大きな負担になっていました。
AWSは従量課金で利用できるため、キャンペーン等で突発的にユーザーが大幅に増加する場合でも、柔軟に変更が出来ます。
信頼性、セキュリティ性が高いから
AWS では、セキュリティ機能の実装や厳格なコンプライアンス要件に対応し、さらに第三者機関による検証が行われています。またAWSで、よく使われる仮想サーバを提供するサービスのEC2(Elastic Computed Cloud)では、月間使用可能時間の割合を99.95%以上保証しています。また、AWSには200を超えるサービスが用意されていますが、複数のサービスを組み合わせる事で冗長性を高める事も可能です。
前述の通り、ガバメントクラウドへ採用されたという点からもAWSの信頼性・セキュリティ性の高さが顧客から支持されていることがわかります。
AWS・クラウドサービスの将来性・成長性

AWSやクラウドサービス市場全体は急速に成長しており将来性も高いと見込まれています。前述した米国Synergy Research Groupの調査では、クラウドサービス市場は2021〜2022年で34%成長を達成しており、全世界の市場規模は53ビリオンドル(日本円で約7兆2,000億円)となっています。
その中で、AWSのシェアは2021年に32%でしたが、1年後2022年においても33%とシェアは減るどころか増加しています。この間、クラウドサービス市場全体の市場規模は34%成長しており、その分だけAWSの成長と顧客からの圧倒的な信頼が伺えます。
また、IDC Japanの調査によれば日本国内だけでも、2021年度の市場規模は1兆5,879億円と推定され、5年後(2026年)には約2.4倍の3兆7586億円になると予測されています。これは、新型コロナウイルス感染症の影響やDX(デジタルトランスフォーメーション)の機運の高まりもあり、クラウドサービスを利用する企業が増加している事が根拠として挙げられます。
このように、AWSを含むクラウドサービスは全世界での市場の拡大・成長はもちろん、日本国内においても引き続き力強い成長が見込まれる事から、今後も将来性・成長性は高いと言えるでしょう。
(参考:日本企業のクラウド移行が加速、パブリッククラウド市場は2026年まで年18.8%成長)
AWSの将来性に向けて身につけておきたいスキル
ネットワーク仮想化関連
AWSはクラウド上でシステムを構築するため、ネットワーク仮想化に関するスキルは必要不可欠です。
例えば、ネットワーク仮想化のコア技術である「VLAN」、ソフトウェアにより仮想ネットワークを制御する「SDN(Software Defined Networking)」などが挙げられます。
コンテナ関連
DockerやKubernetesをはじめとしたコンテナ型仮想化技術は、昨今のシステム開発においても存在感を高めています。
サービスを構成するアプリケーションや、それらに関する依存関係を一纏めにしたものを「コンテナ」と呼び、それらを一纏めにすることで、開発環境から本番環境まで同一の環境(コンテナ)でアプリケーションを動作させることが可能になります。
DevOps
DevOpsは開発・運用それぞれの担当が連携・協力し、フレキシブルかつスピーディーに開発するソフトウェアの開発手法であり、近年のITシステム開発・運用では主流になりつつあります。
例えば、AWSにはDevOpsに関する資格「AWS Certified DevOps Engineer – Professional」などがあるため、取得を目指すのも良いでしょう。
(参考:AWS Certified DevOps Engineer – Professional)
Infrastructure as Code
Infrastructure as Code(IaC)は、ITインフラ(仮想サーバー等含む)の構築・運用を手動ではなく「コード」によって行う考え方です。インフラ構築や運用が自動化される反面、実装難易度が高くなるため、特にエンジニアには高いスキルが求められます。
また大規模なインフラ構築には適していますが、小規模なインフラ構築のためにコードを書いて実行する、といったケースだと費用対効果が不十分なケースもあります。とはいえ、IT人材不足が叫ばれている中でIaCの流れは加速することも予想されており、将来的にインフラエンジニアの必須スキルになるでしょう。
AWSの案件例
浜松市の事例
浜松市では、デジタル・スマートシティの実現に向けた施策を推進しており、行政の各分野や民間が個別に収集・保有するデータを円滑に連携させ、データの横断的な利用とサービス間の連携を支える「都市 OS(データ連携基盤)」を構築しています。そのインフラとしてAWSのサーバーレス環境を採用し、その上で全国の事業者と新サービス創出に向けた実証実験などの取り組みを開始しました。
具体的には、3D 点群データを利用した林道の利活用、新型コロナウイルス感染シミュレーションに向けた D2D 社会実験、海域へ排出されるプラスチック等の人工系ごみ輸送量の実態把握などの案件が採択され、全国自治体におけるスマートシティプロジェクトの先進的なモデルを提示しているといいます。
(参考:AWS導入事例 (浜松市))
任天堂の事例
世界的ゲームメーカーである任天堂も、ゲームにおいて活用されるサーバーを含む各種機能を AWS 上に構築・運用しています。特にスマートフォン等のスマートデバイス向けのゲームにおいて、大量のアクセスが発生しても快適に遊べるスケーラビリティ、ユーザー体験を損なわないパフォーマンス、サーバーとオペレーションコストの最適化が課題となっていたといいます。
AWSを採用することで、ユーザーが快適にプレイするために必要なパフォーマンスとスケーラビリティを確保すると同時に、大幅な運用工数軽減を実現したということです。
(参考:AWS導入事例 (任天堂))
参考:オンプレミスからクラウドサービスへ移行している背景
オンプレミスからクラウドサービスへの移行が急速に進んでいる背景としては「変化に迅速に対応できる」「長期運用に伴い、保守運用できる人材不足」の2点が挙げられます。
変化に迅速に対応できる
オンプレミスでは、機器を自社の都合に合わせて自由に選定できる一方、サーバー機器の更改に合わせて、5年に1度程度のタイミングで入れ替えが必要になり、機器の資産管理やバックアップ、障害対応など管理負荷も大きくなるデメリットがありました。
一方でクラウドサービスは、自社でサーバーやネットワーク機器を用意せず、Amazonなどのクラウド事業者が用意する環境やサービスを利用するため、システムの構築や利用を迅速に行うことが可能です。急速に進むIT技術の発達により消費者のニーズも多様化している中で、変化に迅速に対応できるクラウドサービスの需要が増えています。
長期運用に伴い、保守運用できる人材不足
オンプレミスのシステムの長期運用に伴い、保守運用できる人材が不足している点もクラウドサービスに移行している理由として挙げられます。経済産業省が2018年に「DXレポート」の中で、レガシーシステムが残存する事でDXが実現できなかったり、IT人材が不足することで、2025年以降、年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性がある(2025年の崖)と指摘しています。
オンプレミスのシステムが長く残り続けると、保守運用できる人材がいなくなり、更改や管理ができなくなるリスクも高くなります。
上記の理由から、オンプレミスからクラウドサービスへの移行が急速に進んでいます。
(参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~)

まとめ
今回の記事では,AWSについて解説しました。コンサルティング案件などを探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。