目次
DX推進ガイドラインとは
DX推進ガイドラインとは経済産業省が2018年に発表した報告書です。内容としては、DXを実現していく上でのアプローチや必要なアクションがまとめられています。
DXガイドラインは「DX の実現やIT システムの構築を行っていく上で経営者が押さえるべき事項を明確にすること」、「取締役会や株主が DX の取組をチェックする上で活用できるものとすること」を目的としてまとめられており、DX推進を進める人材が参照する資料として非常に有用です。
(参考:DX推進ガイドライン)
DX推進ガイドラインが作られた背景
DXの必要性自体は経済産業省が「DXレポート」と呼ばれる文書にて「2025年の崖」に言及したことで、多くの企業に広く認識されています。
(参考:DXレポート)
しかしDXの必要性が論じられる中で、データのブラックボックス化や、ビジネスプロセスそのものの刷新などの課題も挙げられるようになりました。
このような現状を踏まえ、どんな企業でもDXを効果的に推進するためのアクションを経済産業省がリードしてまとめたというのが作成の背景です。
DX推進ガイドラインの構成・内容
DX推進ガイドラインは大きく2つのパートに分かれています。
1つ目が「DX推進のための経営のあり方、仕組み」と呼ばれるパートで、どちらかというとビジネスサイドや経営者が抑えていくべきポイントがまとめられています。
2つ目が「DX を実現する上で基盤となる IT システムの構築」と呼ばれるパートで、IT・システム構築の際に留意するポイントがまとめられています。
DX推進を進める上ではビジネス側とIT・システム側との連携が必須です。2つのパートで合わせてチェックすべき11の項目が指摘されており、各々をチェックすることでDXを効率的に推進することが可能です。
DX推進においてビジネスサイドが抑えるべき5項目
DX推進において、経営者やビジネスサイドの人間が抑えるべきとされているのが「DX推進における経営のあり方、仕組み」パートです。
本パートでは大きく以下5つのポイントが指摘されています。
経営戦略・ビジョンの提示
これは当たり前ではありますが、DXといえども特定の目的のための手段であることに変わりはありません。新たな技術を利用することでどのような価値を生み出そうとしているのかをしっかりと従業員にも提示する必要があります。
「AIやブロックチェーンを使って何か新しいことがしたい」などという従業員に丸投げするスタイルでは必ず失敗します。どのような経営上のビジョンがあり、そのためになぜDXが必要なのかを初期の段階で提示し、理解を得ておくとDX着手もスムーズです。
経営トップのコミットメント
経営トップのコミットメントはDX推進にあたり不可欠です。DXを推進するに当たっては、ビジネスや仕事の仕方、組織・人事の仕組み、企業文化・風土そのものの変革が不可欠となる中、多くの衝突が生まれます。
その際に経営トップがトップダウンでDXを進めて意思決定をすることが出来るかが成否に関わります。例えば、日清食品ホールディングスは「DIGITIZE YOUR ARMS(デジタルを武装せよ)」をスローガンとして、トップの強いコミットメントで全従業員のデジタルスキル向上に取り組んでいます。
DX 推進のための体制整備
DX推進のためにはDXを支えていく体制づくりが不可欠です。DX推進に好ましい体制には3つのポイントがあります。
・新たな挑戦を積極的に行っていくというマインドが各部門に醸成されているか
・DX推進部門の設置などビジョンの実現を念頭に、それを具体的施策まで落とし込む体制が構築されているか
・DX実行のために必要な人材の確保が行われているか
例えば「DX with SoftBank」というキャッチコピーも非常に有名なソフトバンクでは、DX本部と呼ばれる部署を設置し、社内のDX人材育成に力を注いでいます。
投資等の意思決定のあり方
DXで投資を行う際の意思決定は以下のポイントが参考になります。
・コストのみでなくビジネスに与えるプラスのインパクトを勘案して判断しているか
・定量的なリターンやその確度を求めすぎて挑戦を阻害していないか
・投資をせず、DX が実現できないことにより、デジタル化するマーケットから排除されるリスクを勘案しているか
これら3つを踏まえたうえで投資の意思決定を行いましょう。
スピーディーな変化への対応力
当たり前ですが、DX推進後は変化に対する対応力が向上している必要があります。DX後のビジネスモデルが経営方針転換やグローバル展開等へのスピーディーな対応を可能とするものになっているかは常に意識しておきましょう。
DX推進においてシステムサイドが抑えるべき6項目
DX推進において、IT・システム側の観点で抑えるべきポイントをまとめているのが「DX 推進における基盤システムの構築」パートです。
全社的な IT システムの構築のための体制
体制整備に関するポイントは先ほどの章でも指摘されていましたが、ITシステム面でも体制構築は非常に重要です。
DX の実行に際し、各事業部門におけるデータやデジタル技術の戦略的な活用を可能とする基盤と、それらを相互に連携できる全社的な IT システムを構築するための体制(組織や役割分担)が整っているかがポイントです。
全社的な IT システムの構築に向けたガバナンス
ITシステムの構築に向けたガバナンスには大きく2つのポイントがあります。
1つ目は全社的な IT システムを構築するに当たっては、既存と新規システムの円滑な連携を確保しつつ、IT システムが事業部門ごとに複雑化・ブラックボックス化しないための必要なガバナンスを確立しているというポイントです。
2つ目はベンダー企業に丸投げせず、ユーザー企業自らがシステム連携基盤の企画・要件定義を行えているかというポイントです。
事業部門のオーナーシップと要件定義能力
先述のシステム連携基盤の要件定義とも重複しますが、あくまで事業部門の従業員がオーナーシップを持って、DXで実現したい要件を明確にすることが必要です。
さらに、ベンダー企業から自社の DX に適した技術面を含めた提案を集め、そうした提案を自ら取捨選択し、完成責任までを担えているかが求められます。
IT 資産の分析・評価
DX後の状態を描くためにも現状の把握は必須です。事前にIT 資産の現状を分析・評価できているかは重要なポイントです。
IT資産の仕分けとプランニング
継続して使うIT 資産、今後使わないIT資産などの仕分けやどのような IT システムに移行するかのプランニングができているかも重要な論点です。
上記を考える際は以下のようなポイントを勘案する必要があります。
・バリューチェーンの強みや弱み
・事業部門特化ではなく、全体最適となるようなシステム設計
・非競争領域などのシステムを安価な標準パッケージで対応できないか
・サンクコストとして使用しないシステムを仕分けできるか
刷新後の IT システム:変化への追従力
刷新後の IT システムには、新たなデジタル技術が導入され、ビジネスモデルの変化に迅速に追従できるようになっているかを確認しましょう。最終的な評価はIT システムができたかどうかではなく、ビジネスがうまくいったかどうかという軸で見られると刷新の影響を正確に測ることができます。
DX推進ガイドラインの活用方法
この11項目を用いることで、クライアント企業にどのような課題があるのかを洗い出しやすくなり、具体的なアクションを考えるのに役立ちます。
DX推進進捗の現状(AsIs)把握
DX推進のまえに現状を把握する必要があります。先述の11項目に対する現状を表にまとめると一覧性もあり、非常に見やすいです。クライアントからのインタビューなどを通じて、表の中身を埋めていくことが推奨されます。
現状と理想(ToBe)から打ち手を話し合う
上記でまとめた現状に対して理想を決める必要があります。理想をどこに置くのかは経営会議の場などで全員の合意を取る必要があります。
ここで策定した理想と現状のギャップが課題となるため、課題に対する打ち手を話し合います。この時点で打ち手を絞る必要はない場合が多いです。
対策をもとにロードマップ策定し、メンバーをアサイン
複数ある打ち手の中で優先順位を付けます。優先順位順にどの打ち手をいつ実行するのかをロードマップに落とし込みます。
ロードマップが確定したら、担当メンバーへのアサインを経て、実行フェーズに移ります。DX推進ガイドラインに沿ったプロジェクトの進め方をすれば、クライアントとのズレも生じにくくなります。
(ご参考)DXに役立つSaaSツールの選び方
目的から逆算
まずは目的から逆算する必要があり、目的を決めてツールを複数選出することが必要です。例えば、人材管理に関するツールを探していれば、下記のような選択肢があるでしょう。
・SAP SuccessFactors
・Ultimate Software UltiPro
・Workday HCM
・Oracle HCM Cloud
・Cornerstone OnDemand
・ADP Vantage HCM
十分な実績があるか
上記で挙げたツールに対して、実績を確認します。一例ですが、SAPは導入事例も多く、安心できそうという判断ができます。
(参考:SAP公式サイト)
セキュリティの強固さ
そしてツール候補を絞れて来たら、セキュリティ要件に見合うかは確認が必須です。特に金融系など個人情報の取り扱いが厳重な業界ではかなり厳しいセキュリティ要件が求められます。
他ツールとの連携・運用のしやすさ
ツール自体に問題がなければ、最後は他ツールとの連携や運用のしやすさが論点となります。
その点では「SAPは他の基幹システムとも利用されており、連携も豊富なので安心して使えそう」という判断に落ち着きます。この流れでツール選定を進めれば、いざツールを導入する時に新規で課題が生まれる確率が下がります。
まとめ
今回の記事では、役割/要件別にDX推進ガイドラインのチェックポイントについて解説しました。DXやコンサルティング案件などを探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。