目次
SIerとその分類
SIerとは
SIとは、システムの開発、運用、保守を請け負う「System Integration(システムインテグレーション)」の略であり、その担い手がSIerと呼ばれています。SIerは、大きくメーカー系・ユーザー系・独立系等に分類することができます。

メーカー系SIer
コンピューターのハードウェアを製造するコンピューターメーカーから派生したSIerであり、メーカーの製品と組み合わせたソリューションの提案に強みを持っています。
代表的企業としては、日立製作所、日本電気(NEC)、富士通、東芝、三菱電機、日本アイ・ビー・エムなどが挙げられます。
ユーザー系SIer
金融や商社、電力・ガス会社等、情報システムを利用する企業がシステムインテグレーション事業を目的に設立した企業です。
野村総合研究所、日鉄ソリューションズ、TIS、伊藤忠テクノソリューションズ、SCSKなどが代表的な企業として挙げられます。
独立系SIer
ユーザー系やメーカー系からスピンアウトした、ソフトウェア・ハードウェアを販売していた商社がSI事業も始めた等、Sierとして独自に誕生した会社です。
大塚商会やトランスコスモスなどが代表的な企業として挙げられます。
SIerを理解するための「歴史」
バブル経済真っ只中の1988年に、NTTデータをはじめとした大手SIerが続々と誕生しました。
それまではメインフレーム(大型の汎用機)を利用した中央集権型のシステムが主流で、使用するハードウェア・ソフトウェアはIBMや富士通等各メーカーの独自仕様に基づいていました。
その後、半導体やメモリー、ネットワークの性能向上や価格低下が進み、技術仕様を業界標準に合わせるという「オープンシステム」の考え方が勃興し始めました。
オープン化の台頭で、複数のメーカーの製品を組み合わせシステムを構成する「システムインテグレーション」のサービスが求められるようになり、SEなどの人材育成が急務となったことで、Sierの誕生に繋がったのです。
その後のIT革命の流れもあり、官公庁・自治体・企業など様々な組織においてITシステムの開発やその後の保守・運用といったニーズが生まれ、Sier各社の活躍の場がさらに広がっていきました。
(参考:大手SIが相次ぎ誕生、IT業界が変わった1988)
SIerの「将来性がない」と言われる理由
クラウドサービスの普及

SIerは、顧客の課題に合わせてスクラッチでシステム開発を行いますが、アマゾン社のAWS(Amazon Web Service)や、マイクロソフト社のAzureなどに代表されるクラウドサービスの普及により、ゼロからスクラッチ開発で進める必要がなくなってきています。
政府・官公庁のインフラやサービスにおいてもこうしたクラウドサービスが採用されており、例えばデジタル庁が、2021年に日本政府の共通基盤である「ガバメントクラウド」のクラウドサービスとして、AWSとGoogle社の「Google Cloud Platform」を選択したことは記憶に新しいでしょう。
(参考:AWSとGCPが日本政府の共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」に 「セキュリティや業務継続性で判断」)
慢性的な高コスト体質
SIer業界は建設業/ゼネコンと似ていると言われることも多いですが、SIerが顧客の元請けとして開発案件を受注し、その一部業務を下請けに発注、さらに下請けが孫請けに発注、という多重下請け構造となることが多いのがその理由です。
SIerは人月に頼るビジネスモデルであるため、上流〜下流工程まで多くのIT人材を必要としており、その分人件費が重くなっていきます。
経済産業省の「IT 人材需給に関する調査」によれば、IT人材の需要の伸びが2018年と比べ最も低い場合でも、「約16万人」の人材が不足すると言われています。
(参考:IT 人材需給に関する調査)
運用保守フェーズの案件の減少
一般的に、SIerの収益性が高い部分は開発フェーズよりも運用保守フェーズと言われています。
SIerのシステム開発プロジェクトでは、顧客ごとにカスタマイズされたシステムであることが多いです。システム開発の完了とともに開発フェーズは終了するため、比較的短期であることが多いですが、その後の運用保守フェーズは一定期間、場合によっては中長期で安定した収益を見込めるリカーリングビジネスであるためです。
上述のクラウドサービスの普及も相まって、ユーザー企業側が運用保守にかけるコストも低下することになります。SIerとしての収益基盤の弱体化に繋がりかねません。
SIerの「将来性がある」と言われる理由
大規模案件への対応力

クラウドサービスが普及している中でも、自社で開発組織を持ち内製化を進めている日本企業(ユーザー企業)はまだまだ多くありません。
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が2017年に行った調査によれば、 日本国内のIT人材約100万人のうち、75%に当たる75万人がITベンダー側に所属していると報告されています。これは、米国の35%、イギリスの46%などと比べて非常に多い数字となっています。
(参考:IT人材白書2017)
つまり、日本においてはユーザー企業に所属しているIT人材は全体の25%しかおらず、大規模案件になればなるほど、自社で内製化してシステム開発を進めていくことは難しくなります。そのため、大規模システム開発を行う際にはこれからもSIerが大きな役割を果たしていくと言えます。
2025年の崖問題をはじめとしたレガシーシステムの転換需要

「2025年の崖問題」とは、経済産業省が2018年に「DXレポート」の中で指摘した、レガシーシステムが残存することでDXが実現できなかったり、IT人材が不足することで、2025年以降、年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性があるという問題です。
こうしたリスクを避けるためのIT投資も今後さらに活発化されると予想されており、豊富な人的リソースをもつSIerの活躍の場が広がるでしょう。
(参考:D X デジタルトランスフォーメーション レポート ~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~)
オフショア開発の拡大
開発費用を抑えるために、単価の安く質の高い海外のIT人材活用、つまり「オフショア開発」も積極的に行われています。
例えば富士通は2022年度末までに日本国外でプロジェクトに従事する人員を2万1千人まで増やし、そのうち4割に当たる9,000人を日本企業の案件向けに対応する「日本担当」として割り当てると発表しています。
日本国内でIT人材の不足に直面しつつある昨今、SIer各社のオフショア開発の拡大はさらに進むものと考えられます。
(参考:富士通がオフショア開発に再挑戦、海外拠点の人員を大幅増員する狙い)
データやクラウドを駆使したプラットフォーマーとしての転換
SIerの中でも、自社で保有するデータやソフトウェア、豊富なIT人材を活用して、プラットフォームビジネスを手がける企業もあります。
代表例が日立製作所で、2016年から「プロダクト×OT(制御技術)×IT」を武器に、「Lumada」というデータプラットフォームを構築しています。
業界・IT技術を横断するプラットフォームを構築し、SIerならではのシステム開発力も活かしながら、顧客企業にカスタマイズされたデジタルソリューションを提供しています。
(出典:データで「何」を照らすのか、デジタル変革の“際”を攻める日立の勝算)
将来性の高いエンジニアになるには
今後市場規模が大きくなることが予想される分野を経験し、スキルを高めていく
AI・RPA・IoTなど、今後市場規模が大きくなることが予想される分野を経験し、スキルを高めていくことで、より幅広い開発案件に携わることができます。
また、こうした技術を活用した開発案件の場合、課題のヒアリング〜要件定義など複雑な業務も含めて担う形になるため、ご自身の仕事の幅をさらに広げることにもなるでしょう。
上流工程、管理スキルを身につける
前述の通り、SI業界は多重下請け構造になりがちですが、特に下流工程(内部設計・コーディング・テスティングなど)を下請け・孫請けが担うことが多くなっています。
課題ヒアリングや整理、要件定義、アーキテクチャ/機能設計などの上流工程は、導入するシステムの進め方や全体像を決める重要なプロセスです。
開発案件の上流工程を経験することで、他の開発案件でも通じる汎用的なスキルを身につけることができるとともに、顧客やベンダー関係者など様々な利害関係者の意見をまとめながら意思決定を支援する仕事になるため、管理的なスキルも身につけられるでしょう。
Web系、自社開発系の案件に携わる
他社(クライアント)にシステムを納品するSIerとは異なり、自社製品やサービスの開発を行う案件、あるいは基幹システム等の大規模システムやバックエンドの開発ではなく、フロントエンドの開発等、Web系の案件に幅を広げるのも1つの選択肢と言えます。
自社サービス開発では、クライアントが「社内」となるために、受託開発とは違い厳しい納期等の制約が一般的に少なく、また利用ユーザーの反応を即座にシステムに反映し改良できるといった点で、手触り感のあるシステム開発に携わることができるでしょう。
将来性を高めたいエンジニアがとり得るキャリア
オフショア開発におけるブリッジSEになる
オフショア開発では、日本企業から受託した案件を、東南アジアやインド等新興国に業務委託することが多く、例えばベトナムでは勤勉な国民性もあり、特にニーズが高まっています。日本のIT人材の橋渡しとなるブリッジSEとして活躍することで、スキル・経験の幅も広がるのではないでしょうか。
ITコンサルタントとしてキャリアチェンジ
開発案件の受託〜開発〜保守運用という従来のSIerの業務だけでなく、顧客の経営課題をはじめとした様々な課題をヒアリングして、企画・構想立案といった上流の部分を担う、ITコンサルタントとしてキャリアチェンジすることも1つの手と言えます。
SIerとして開発現場の知見・経験もあるので、開発を見越した企画・立案等のコンサルティング業務も行うことができるでしょう。
AI・IoTなど、これまでの働き方を最適化するような分野の専門家になる
AIや機械学習関連のソリューションに対するニーズは、業界・業種を問わず高まっています。省人化や自動化に関連したDXを進める上で、AI・機械学習の活用は不可欠となっているため、AI・機械学習に関連したプログラミング言語(Python等)のスキルの習得等によって新たな分野での活躍の場が広がるでしょう。
自社開発の企業(WEB系など)へ転職する
SIerで培った広い視野やIT技術に関する知見を活用して、自社製品のアプリやサービスを持つ企業へ転職して活躍することも可能です。
自分が開発に携わった製品やアプリのユーザーの反応を即座に感じることができるので、特に世の中の動きに敏感、技術を通じて新しいものを作っていきたいといったマインドを持った方にはやりがいを感じられる場面が多くあるでしょう。
フリーランスとして独立する
フリーランスとして独立し、業務委託として開発案件に参画するという手段も有効です。フリーランスエンジニアの案件受発注プラットフォームも多数存在しており、恒久的にエンジニアが不足している状況のため、案件獲得のチャンスも多く得られる可能性があります。
求人例
■業界
大手小売業
■案件概要
大手小売業/人事システム統一化支援
■仕事内容
現在100のグループ会社があり、各々人事データベースや、労務勤怠システムの統一化のため、社内BI開発、既存システムの管理、運用を担当いただく。
■勤務地:千葉
■稼働率:100%
■単価:80~90万円/月

まとめ
今回の記事では、SIerの将来性について解説しました。コンサルティング案件などを探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。