IT業界において、システム構築やシステムの運用保守をしてもらう会社を選定することをベンダー選定と言います。ベンダー選定は今後のシステムの管理体制を決めたり、IT戦略を決定したりするのに非常に重要な要素です。ここではベンダー選定のプロセスや選定基準を紹介します。
目次
ベンダー選定とは
ベンダー選定とはシステムの構築や保守、IT戦略立案など様々な場合において、依頼する会社を決めることを指します。ベンダー選定は単にコストだけでなく、品質やこれまでの実績、自社との長期的な関係性構築ができるかなど様々な観点から評価を行います。特にIT業界ではシステム構築を行ったあと、DXへと繋げる動きが増えています。そのため、ベンダー選定は自社に合った最適なベンダーを選定し、二人三脚のビジネスパートナーを選定するような心構えで検討をするべきといわれています。
ベンダー選定基準を設ける理由
ベンダー選定をする際にはベンダーの選定基準を設けます。例えば、提案の妥当性やベンダーの信頼性、導入・運用コストなどが評価対象になります。このベンダー選定基準を設ける理由は「自社に合った最適なベンダーを明確な基準で選定するため」です。例えば、革新的にDXまでを検討している会社を検討しているのにも関わらず、信頼性の高い会社を優先にはしないと思います。しかし、選定基準が明確でない場合には、信頼性の高い会社というのは魅力的に映ってしまいます。
このように自社が求めていることを明確にして、その時の感覚に左右されず、自社が求める最適なベンダーを選定するためにベンダー選定基準を設ける必要があります。
ベンダー選定のプロセス
ここでは、ベンダー選定のプロセスを3つのフェーズにわけて紹介します。
事前調査フェーズ
まずは事前調査フェーズです。このフェーズでは対象となるベンダーを選定するところから始まります。
ベンダー候補調査
まずはベンダーの候補を絞り込みます。候補は何社でも構いませんが、今後の選定する段階の労力を考えるとこのタイミングで10社程度に絞り込めるとちょうどいいのではないかと思います。このタイミングではベンダー企業側からの情報はありませんので、基本的には企業のホームページや実績紹介、簡単な問い合わせ等により情報を収集します。そして、自社にあっていそうな会社を選定しましょう。
RFIの作成・送付
続いてRFIの作成・送付を行います。RFIとは情報提供依頼書と呼ばれ、ベンダーに対して基本情報や製品情報、技術情報などを含んだ資料の提供を依頼するものです。このRFIには今回RFIを送付した趣旨や目的を明確にして、企業から必要な状況を正確に提供してもらえるフォーマットを作成するように心がけましょう。ベンダーごとに提供してもらう情報が異なると比較ができないため、1つのフォーマットにすることも重要です。回答納期は1〜2週間程度のことが多いため、この時間で回答できる分量に設定しましょう。
選定準備フェーズ
選定準備のフェーズに移行します。
RFPの作成・提出
RFIの結果が届きますので、まずはその結果を確認して自社の趣旨・目的にそぐわない会社や選定基準から明らかに外れそうな会社を除外しましょう。そして、残った会社にRFPの作成・提出を行います。RFPとは提案依頼書と呼ばれ、ベンダーに提案書の依頼を行います。RFPでは自社の概要・全体像や今回依頼する案件の提案依頼要件を詳細に記載して依頼を行います。提案依頼要件には以下のような項目を含めると良いでしょう。
提案を依頼したい範囲
システム構築で提案を依頼したい範囲を記載しましょう。
機能要件・非機能要件
自社が求めるシステムの機能要件・非機能要件もあらかじめ提案しておきましょう。
テスト要件・移行要件・教育要件
テストや移行、教育においての要件も重要です。移行においてどの程度システムを停止できるのか、ユーザーの教育はどこまで実施してほしいのか等を明確にしましょう。
プロジェクト体制
開発側で必要な人材や希望するマネジメント体制などを明確にしましょう。
評価項目の作成
RFPの作成と同じタイミングで評価項目の作成を行います。評価項目は自社の希望を明確にする重要なフェーズです。主にシステム、プロジェクト、会社の3つに分けて評価を行います。例えばシステムであれば「自社要件との整合性」や「IT基盤の安定性」、プロジェクトであれば、「プロジェクトの納期」や「プロジェクトの管理体制」などがあげられます。これらの項目は自社の希望に合わせて柔軟に変更する、重要なものに対しては重みづけをするなど個別に対応して自社に合った評価項目を作成します。
評価・選定フェーズ
続いて評価・選定フェーズになります。このフェーズでは実際に依頼するベンダーを決めていきます。
提案書の提出・プレゼンテーション
RFPの結果が返ってきたら、実際にその内容を確認します。場合によってはプレゼンテーションを行ってもらい、質疑応答を行うなど、聞きたいことがすべて確認できるように対応します。最終的に全てのベンダーの情報が集まったら、作成した評価項目に沿ってベンダーを評価しましょう。この時には抽象的な評価にならず、具体的に各項目○○点だったというように具体的に評価をすることが大切です。このフェーズでは数社程度まで絞り込むようにしましょう。
最終評価・選定
すべての評価が完了したら最終評価に移ります。数社まで絞り込むことはできますが、実際には数値に表れていない評価ポイントもあるのも事実です。これらを自社で徹底的に議論し、必要であれば、追加の情報を収集するなどして最終的に1社に決めましょう。
ベンダー選定基準
ここでは実際にベンダーの選定基準として重要なポイントを大きく「会社」と「提案内容」に分けて紹介します。
会社
まずは、会社の観点から選定基準のポイントを2つ紹介します。
事業継続性、安定性
ベンダーの事業継続性と安定性は非常に重要になります。特に、ベンダーと長期的な関係性を求めているのであればなおさらです。ベンダーの事業継続性や安定性が担保されていない場合、プロジェクトの途中で会社が倒産してしまい、プロジェクトを継続できなくなってしまったり、プロジェクトが成功したとしても、今後の関係性まで構築できなかったりする可能性があります。ベンダー選定の際にはまず事業継続性と安定性は必ず選定基準に盛り込むようにしましょう。
能力、過去実績
ベンダーの能力を確認することも重要です。そのためには過去の実績を参照すると良いでしょう。過去に似たような案件を担当したことがあるのか、同じ技術を用いた案件を担当したことがあるのか、確認するようにしましょう。ベンダーのホームページでは不十分と感じる場合にはベンダーに過去実績の提供も依頼するようにしてきちんと評価できる体制を整えましょう。
提案内容
次に提案内容の観点から選定基準のポイントを7つ紹介します。
要件の網羅性
要件の網羅性は必ず確認するようにしましょう。もし、要件として実現できないことがあると自社の要望を叶えられないということになり、場合によってはプロジェクトが途中で頓挫する可能性も考えられます。可能であれば、すべての要件を網羅できることが望ましいですが、もし網羅できない場合があるのであれば、その要件が実現できないことによる影響を調査して評価を行うようにしましょう。
イニシャルコスト、ランニングコスト
イニシャルコストとランニングコストも非常に重要です。自社の予算に合っていないプロジェクトの場合、プロジェクトを中断せざるを得ないといった場合が発生します。イニシャルコストもランニングコストも自社の予算内に収まるか確認するようにしましょう。なお、大規模なプロジェクトとなると追加の要件も発生しがちなため、想定よりコストがかかるケースもあります。大規模なプロジェクトの場合には余裕をもったコストで導入できるように評価基準を定めると良いでしょう。
スケジュールと妥当性
スケジュールの妥当性も重要です。スケジュールが期間内に収まらない場合、自社のビジネスチャンスを逃してしまう可能性もあります。また、ベンダーが無理なスケジュールで開発を行おうとしていないかも重要です。自社のリソースでは対応できないのに期間内に納めている場合がないか、ベンダーのリソースも確認し評価を行うようにしましょう。
開発体制と妥当性
開発体制もスケジュールと同じく重要です。ベンダーの開発能力を超えた体制になっていないか確認する必要があります。想定される作業量と人員数を確認し、無理がない体制になっていることを確認しましょう。
保守体制と妥当性
保守体制ではベンダーが契約が結べるように保守運用コストを少なめに見積もって提案してくる可能性があります。保守の契約はシステムリリース時に改めて契約する場合が多く、そのタイミングで増額してくる可能性があります。システムリリース後の想定している作業を確認して、ベンダーの想定しているコストの妥当性を正しく評価するようにしましょう。
アプローチやプロジェクトに対する考え方
今回のプロジェクトの位置づけを正しく認識しているのか、確認することも評価基準としては重要です。例えば、このプロジェクトを機にDXを推し進めたい場合であっても、ベンダーにそのつもりがなければ、プロジェクトの目的が異なってしまうため、コミュニケーションもうまくできないです。
プレゼンテーション
ベンダーのプレゼンテーションも重要です。プレゼンテーションには今回のプロジェクトに対する意気込みが表れます。信頼できるベンダーにプロジェクト任せるためにもプレゼンテーションの評価は忘れずに評価基準に盛り込みましょう。
その他
会社と提案内容以外にも確認すべきポイントがあります。ここでは契約形態について紹介します。
契約形態
契約形態も実は重要です。委任契約なのか請負契約なのかによって仕事を完遂させる義務があるかどうかが変わります。また、開発した設計書などの資産を自社とベンダーのどちらに帰属させるのかも重要なポイントですので、選定基準に盛り込むようにしましょう。
まとめ
今回の記事では、ITベンダーの選定について解説しました。コンサルティング案件などを探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。