ベンダー選定のプロセス概要
ベンダー評価・選定は概ね以下のプロセスで進めていきます。
・RFPの提示
・ベンダー回答の評価
・ベンダー選定
RFPの提示
クライアントがRFPを作成することとなりますが、このRFPが精緻であればあるほど精緻な回答をベンダーから得ることができるため、質の高い評価を行うためにはRFPの質も重要です。
そのため、ベンダー選定においてはクライアント側でも十分な準備が必要です。また、RFPはベンダー1社にのみ提示することはほとんどなく、多くの場合は複数社のベンダーに提示することになります。
ベンダー回答の評価
その後はRFPを踏まえて、ベンダーから提案内容を受領することになります。単に提案内容を見ただけでは複数社ベンダーの提案内容を客観的に評価することは難しいため、事前に評価軸や評価基準を策定しておく必要があります。
この評価軸や評価基準についてもクライアント側で作成しておく必要があります。多くのクライアントでは一定程度このようなベンダー評価軸や評価基準を持っていますが、新テクノロジーを活用するような基幹システム刷新の場合は既存の評価軸・評価基準では判断できないこともあるため、このような評価軸・評価基準は常にアップデートすることが求められます。
ベンダー選定
これらの評価軸・評価基準をもって、最終的にベンダー選定を行います。基本的には評価軸・評価基準に対して各ベンダーの提案内容がどの程度充足しているかを定量的に評価しつつ、基幹システム刷新・大規模改修に対してコストが想定内に収まっているか、ベンダーの過去実績についても考慮したうえで最終的な決定を行います。
総じて基幹システムの刷新・大規模改修は大規模・長期間のプロジェクトになることが多いため、リスクヘッジのために規模の大きいベンダーに依頼・決定する傾向にあります。
ベンダー選定・決定までの流れ
提案依頼(RFP)
先に述べましたが、RFPを精緻に作成することはベンダー提案内容を向上させる上での重要なポイントになります。しかしRFPを作成する前には、クライアント側でも以下のような作業が必要になります。
・現行業務分析を行い、調達要件を精緻化する
・プロジェクトのゴールやスケジュール、スコープを明確化する
RFPを作成しない場合、各ベンダーに向けて大雑把な要件を伝えて提案を受けるだけで済みますが、それでは本当にクライアントで必要な要件を実現できる可能性は低くなります。
まずはクライアントの現行業務を分析し、「現行の業務やシステムにどのような課題があるのか」「その課題をどんなシステム・テクノロジーで解決したいのか」をRFPで明確化することがポイントです。
また、RFP作成後にはベンダーにRFPを提示することになりますが、この提示先のベンダーを選定する際にも「このテクノロジーに強いベンダーはどこか」「現行の業務やシステムに知見のあるベンダーはどこか」という点を事前に調査しておくことで、プロジェクトの目的に親和性のあるベンダーからの提案をスムーズに受けることができます。
総じて、「ベンダー側に実施してほしいことの明確化」「どのベンダーが強みをもっているか」を事前に調査しておくことがRFP作成時に注意すべきポイントとなります。
提案内容の評価
評価軸・評価基準を策定する上では、以下のような考え方が重要となります。
・異なる知見を持つ複数の担当者で評価を行う
・評価項目には重要度を設定し、評価項目の充足度を定量的に評価する
・調達要件のうち、必須要件を全て満たしているかを確認する
異なる知見を持つ担当者で評価する基幹システム刷新に当たっては複数のシステム領域がシステム開発のスコープとなりがちであるため、複数の角度から提案内容を評価する必要があるという理由で重要度が高いです。
提案内容の各トピックに対して評価ができない、という事態は避ける必要があるため、各トピックに対して適切に評価できる人材をベンダー選定作業に加えることがポイントとなります。
項目の重要度を設定する
調達要件を満たしているかどうかを定量的に評価するというアプローチは当然必要なのですが、その達成状況が全て同じように評価できるわけではありません。
「要件達成状況」のみを評価結果とするのではなく、「要件重要度×要件達成状況」を定量化して評価結果とすることがポイントとなります。
必須要件を確認する
調達要件は完全に満たさなければならない要件と、完全に満たしていなくてもよい要件に分類できます。
この必須要件を全て満たしているかどうかは、必ず確認しなければならないポイントとなります。
ベンダー決定
ベンダー評価の結果を踏まえ、どのベンダーにするかを決定することとなります。これまではベンダー提案内容にフォーカスして評価を行ってきましたが、ベンダー提案内容以外の要素をここでは加味する必要があります。大きくは以下の3点になります。
・ベンダーの過去実績
・自社の現行業務・システムに対する知見
・コスト
評価結果を踏まえて決定候補となったベンダーが、過去に同規模のシステム刷新・大規模改修の経験があるかどうかは第一に確認すべき点です。
また、自社の現行業務・システムに対する知見も重要です。刷新するアプリケーションを担当していたベンダーであれば、現行業務・システムに対する知見を十分に有していると評価できます。
最後に重要な決定要素であるコストについてですが、一概に「システム刷新コストが安ければよい」というものでもありません。多くのベンダーは提案時に刷新に加えて、後続の保守運用も担当することが多いです。コストを考慮するのであれば、RFPの際もしくはこの段階で刷新+保守運用を踏まえたコストを再提示依頼することが必要です。
コンサルティングファームの事例
RFP策定支援の事例
これまではベンダー評価・選定時に押さえておくべきポイントに触れてきましたが、ここでは実際の事例を紹介します。
あるクライアントの基幹システム刷新プロジェクトに検討フェーズから参加したコンサルティングファームは、「RFP策定支援」作業を行いました。
RFP策定支援時には、まずプロジェクトの全体像を関係者間で認識し合うことから始めました。このように基本方針を策定することにより、プロジェクトの目指す姿やゴールをクライアント側と合意することで、今後作成するRFPがブレることを防止する狙いがあります。
プロジェクトの大方針について合意が取れた後は、具体的な調達要件の策定を行います。
現行業務の調査・分析(業務全量のリスト化、業務プロセス調査、現行ユーザーへのヒアリング、等)を行ったうえで、アプリケーション刷新により現行業務量をどの程度削減できるか、業務プロセスをどれだけ簡素化できるかを算出して、アプリケーション刷新による効果を算出します。
このアプリケーション刷新による効果は、プロジェクト目的を高いコストパフォーマンスで達成できるか、という評価時に必須のものであるため、ベンダー選定後の要件定義工程ではなくこの段階で行っておくことが重要です。
まとめ
今回の記事では、基幹システムの選定についてコンサルファーム事例を交えて解説しました。コンサルティング案件などを探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。