近年、ビジネスの場でよくビッグデータという言葉を聞くのではないでしょうか。IT業界ではビッグデータを活用して効率的に分析を行い、業務や広告などの改善につなげることで多くのメリットを得られるようになってきました。ここではビッグデータの基礎知識と実践的な活用法を紹介します。
目次
ビッグデータとは
実はビッグデータには、明確な定義はありません。一般的には「従来のデータベース管理システムでは管理できない、膨大なデータ群」といわれています。さらに多くの場合には、随時発生するデータや時系列・リアルタイム性が伴うデータが多いです。
ビッグデータの特徴:5つのV
ビッグデータは、以下の3つのVと2つのVから成り立っている考え方が普及してきています。
3つのV
Variety(多様性)
Velocity(速さ)
Volume(データ量)
2つのV
Veracity(真実性)
Value(価値)
これらの5つのVを解説していきます。
Variety(多様性)
ビッグデータとして定義されるものは様々あり、具体的には音声データ、画像データ、テキストデータ、ログファイルやセンサ情報などがあります。これらの様々な非構造データを活用しようとすることがVarietyに該当します。
Velocity(速さ)
ビッグデータは随時データが発生する可能性があります。これらを分析して改善していくためには、迅速に処理する能力が求められます。これがVelocityに該当します。
Volume(データ量)
ビッグデータの「ビッグ」はデータ量が多いということを指します。ビッグデータを扱う際にはデータの密度が低かったり、価値が不明確であったりさまざまなデータを扱います。これらを含めてまとめて解析することがVolumeに該当します。
Veracity(真実性)
ビッグデータは多様なデータを分析するため、その中にはさまざまなノイズデータが含まれることになります。これらのノイズデータを的確に排除し、正しい情報を導きだすことがVeracityとして定義されています。
Value(価値)
ビッグデータを活用することにより、新たな価値を生み出すことが可能です。この新たな価値を生み出すことをValueと定義しています。
ビッグデータにおけるIoTとAIの関係性
ビッグデータとIoT、AIは密接に関わっています。IoTではセンサ情報やSNSから自動でデータを取得するなど、データの取得に役立ちます。AIではその性質上、自動で分析をすることが可能です。以上のことから、IoTでさまざまなデータを収集して「現状の見える化」を図り、得られたデータをビッグデータとして時系列など多角的な方法で蓄積します。これらの膨大なデータをAIを活用しながら処理・分析などを行うことでより良い改善策や将来に対する展望を見通すなどの関係性が成り立ちます。
ビッグデータのメリット
ここではビッグデータのメリットを3つ紹介します。
高精度分析
ビッグデータはこれまでうまくデータとして扱えなかった情報もデータとして扱うことができます。また、大量のデータを正確に分析することで高精度な分析が可能です。この高精度な分析により、サービス品質の向上に役立てることができます。
予測分析
ビッグデータは予測分析を行うことができます。予測分析とは統計解析技術やAIなどの高度なアナリティクス技術を用いてビッグデータを分析し、将来の事象を予測する分析手法です。この予測分析を活用することで顧客がどのように動くのか全体的な動向を事前に把握することができ、効果的なマーケティング戦略の立案やセキュリティの強化などを行うことができます。
見える化
ビッグデータではさまざまな情報を複合的に管理することで業務やプロセスの見える化を行うことができます。例えば、1つの製品を製造する場合、製造工程の各工程にセンサを配置して情報を収集、迅速に分析をすることによって、その製造プロセス全体の状況を見える化することができます。製造プロセスを見える化することでエラーが発生したときに迅速に対応できたり、改善活動を効率的に行うことができたりします。
ビッグデータの問題点と注意点
ここではビッグデータの問題点や注意点を3つ紹介します。
コストがかかる
ビッグデータを活用するためには、管理や維持にコストがかかります。また、導入にも多くの費用がかかります。導入時には大量の情報を保存できるシステムを構築しなければならず、ツールの導入だけでも多くのコストがかかります。また、運用時やメンテナンスにおいてもバグの修正、必要に応じた分析手法の改善等により、コストがかかります。
クラウドを活用することにより導入コストを抑えることも可能ですが、それでも多くのリソースを活用することになるため、クラウド活用でも多くのメンテナンス費用がかかります。
データ収集に手間がかかる
ビッグデータのデータの収集方法の確立にも手間や時間がかかります。データ収集はさまざまな情報からビッグデータとして解析するのに必要な情報を選定するところから始まります。選定するときには何をしたいのか目的を明確にして検討を行います。収集するデータが決まったらどのように収集するかを検討します。製造業によってはセンサを配置して情報を取得しなければならないケースもあります。SNSから情報を集めるためには、新たなツールの導入を検討しなければなりません。
以上のように、データ収集においては多くの検討ポイントがある一方、このデータ選定を誤ると信頼度や精度の低いデータしか得られず、ビッグデータ導入の効果が薄れてしまいます。そのため、データ収集には多くの手間がかかります。
個人情報管理に注意が必要
ビッグデータでは個人情報管理を厳重に行わなければなりません。SNSを活用した情報収集を行う場合、匿名性を担保しなければなりません。顧客のプライバシーを保護するために、データを加工して使う、データが流出しないような厳重なセキュリティ体制を構築するなど注意が必要です。
ビッグデータの導入・活用法
ここではビッグデータの導入・活用方法において、データの収集、データの可視化、データの分析の3ステップで紹介します。
データの収集
まずはデータの選定・収集方法の検討を行います。選定方法では目的を明確にして必要な情報を幅広く取得するようにしましょう。使用するデータとしてはSNSコンテンツなどの外部サービスを利用する方法や自社の基幹システムや製造プロセスにIoTを導入して収集する方法などがあります。
データの可視化
データの収集がある程度構築出来たらデータの可視化を行うことを検討します。データの収集プロセスで得た膨大なデータをもとに必要な情報を可視化していきます。1つ1つの収集データに対してノイズや不要なデータをデータの加工を行いつつ除外し、データを整理して分析に使えるような状態にしていきます。
データの分析
データの可視化が完了したら分析を行います。このプロセスでもデータの収集同じく、目的を明確にして分析プロセスの検討を行います。データ分析では異なるグループごとのニーズを知ることができるクロス集積や、結果に対する原因を知ることができるロジスティック回帰分析、データの相関性を割り出すアソシエーション分析等があります。また、場合によってはAIを導入することによってより高精度な分析を行うことも可能です。どの程度の精度、信頼性のある結果を求めているかによって、ロジックの作りこみを検討しましょう。
ビッグデータを活用する上での注意点
ここではビッグデータを活用する上での注意点を紹介します。
人材不足
1つ目が人材不足です。近年、ビッグデータをビジネスに利用する流れが盛んになっており、多くの企業がビッグデータを扱える人材確保に力を入れています。その一方、ビッグデータエンジニアになるには独学で勉強しなければならず、かなりハードルが高いのが現状です。そのため、ビッグデータ人材の需要は供給を上回っており、人材の確保が難しい状況です。
セキュリティ
2つ目がセキュリティです。ビッグデータでは会社にとっての機密情報や顧客やユーザーの個人情報を多く保存しています。そのため、セキュリティには注意をしなければなりません。情報が流出してしまうと企業だけでなく、ユーザーにも多くの影響を与えてしまう可能性があるので、企業の基幹システム以上の強固なセキュリティ対策を行うようにしましょう。
運用・保守の負荷
運用・保守の負荷にも注意しなければなりません。ビッグデータは仕組み上、分析ロジックなど複雑になりやすく、分析プロセスを変更する場合など多くの改修コストがかかります。また、情報収集ツールを含めて多くのツールを扱うことになるので、その分運用・保守の負担も増大します。
ビッグデータの活用事例
ここではビッグデータの活用事例を2つ紹介します。
株式会社日立製作所
日立製作所ではデータセンターの大規模化・複雑化の中で、サービスレベルの向上と運用コストの低減 が重要課題となっていました。そこで同社では空調をコントロールし、空調管理費を軽減させるためにビッグデータを活用しました。同社ではラック単位で温度分布を測定し、解析することによって温度差があるところを過冷却しました。この結果、より細かな粒度で温度監視と空調調整を実現することができました。
(参考:ビッグデータ利活用の実現のために ~日立のビッグデータ活用事例)
アサヒグループ
アサヒグループが取り扱う飲料品や酒類はエリア、気候、気温、イベントなどさまざまな要因により売上げが変動します。アサヒグループでは市場の動向をいち早く察知するためにビッグデータの活用を試みました。導入した結果、鮮度の高いデータ分析を実現できるようになりました。
(参考:アサヒグループ様、富士通のビッグデータ分析基盤を導入し営業活動の高度化を実現)
ビッグデータ活用における今後の動向
IDC Japan 株式会社によると国内データセンターサービス市場は2026年までの間、年12.8%の勢いで成長すると考えられ、2026年の市場規模は3兆2,083億円になると予想されています。このことからビッグデータは今後ますます普及すると考えられます。
(参考:国内データセンターサービス市場予測を発表)
まとめ
今回の記事ではビッグデータについて解説しました。DX案件を探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。