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レガシーシステムとは
レガシーシステムとは、過去のテクノロジーや仕組みで開発されているITシステムのことです。具体的には、1980年代に導入された大型メインフレーム(ホストコンピューター)、あるいはそれをコンパクト化させたオフィスコンピューターと呼ばれるITシステムのことを指します。
大型メインフレームでは、オペレーションシステム上で、COBOLを代表とするアプリケーションソフトウェアが稼働しているのが一般的です。時代や環境の変化に合わせてシステムの拡張や修正が必要になりますが、大型メインフレームで使われている技術に精通する人材が高齢化している等、いくつかの問題を抱えています。
この問題は、2000年代以降に多くの企業がオープンシステムに移行したことに起因しています。オープンシステムとは、市場に広く公開・普及されてるテクノロジーや開発言語を用いて開発されたITシステムのことです。レガシーシステムは、このオープンシステムと対比する用語としても使用されます。
レガシーシステムの問題点
新たにITシステムが開発・導入される場合は、ほぼ100%の割合でオープンシステムが採用される一方で、レガシーシステムも未だに多くの企業で稼働しているのが実態です。
2018年に経済産業省によって公表された「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」では、約8割を超える企業においてレガシーシステムが残存していることが示されています。
(参考:IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~)
また、このレポートではレガシーシステムが抱える以下のような問題点についても言及されています。
問題点(1):人材不足により技術継承ができない
前述した通り、レガシーシステムの代表格である大型メインフレームは1980年代に導入されたITシステムであり、2000年代のオープンシステム移行の波によって技術者の高齢化が進んでいます。このことで、人に紐づくノウハウが喪失してしまい、別の人が技術を受け継ごうとしても各種ドキュメントや設計ノウハウの理解が困難を極める問題が発生します。
問題点(2):技術の進化に対応できない
大型メインフレームは各メーカーが個別に開発しているため、使われている技術もメーカーによって異なっています。テクノロジーが日進月歩で変化している昨今、そのスピードにメーカー単位に追従し大型メインフレームを進化させていくことは事実上困難です。また、そもそもアーキテクチャや使われている技術のベースが1980年代であるため、新たに開発された技術との親和性が少ないことも問題です。
問題点(3):保守・運用のコストが高い
大型メインフレームの保守・運用コストはただでさえ莫大なものです。たとえば大手金融機関では、最重要の基幹システムに大型メインフレームを採用していますが、その維持には年間数億円を投じています。
24時間365時間、決してダウンすることなく安定的に動き続ける必要のあるミッションクリティカルなITシステムである反面、それらの監視やメンテナンスにミスは許されず、結果として人件費や設備費が高額になるのです。
レガシーシステムへの対応策
レガシーシステムを抱える企業にとって、その対応策には大きく「モダナイゼーション」と「マイグレーション」の2通りが存在します。
モダナイゼーション
モダナイゼーションは、その語源である「近代化・現代化(modernization)」という意味の通り、稼働しているレガシーシステムを新しいITシステムに置き換える・刷新することを指します。たとえば、大型メインフレームで稼働している基幹系システムをクラウドシステムで構築された新たなIT基盤上に作り直すようなケースです(リホスト)。
この場合、プログラムやデータを新環境に移行するための自動変換ツールなどを開発する必要が生じます。また、新しいプログラミング言語を用いて既存のアプリケーションソフトと同じように動くシステムに開発しなおす手法も存在します(リライト)。
この場合、設計思想は古いままのため業務面の改革には適応できないことが多いですが、新しいテクノロジーや環境に適したソフトウェアを構築することができます。
マイグレーション
レガシーシステムへの対応策の2番目はマイグレーションです。「移動・移転(migration)」が語源であり、既存のITシステムやデータを別の環境にスライドさせることを意味します。特に、レガシーシステムからオープンシステムに移行する場合をレガシーマイグレーションと呼び、大型メインフレームをWindowsやLinuxなどで構築されたITシステムに転換させます。
レガシーシステムから脱却したときのメリット
人材不足の解消
人材不足による技術継承の課題は、放置すればしただけ問題が大きくなる恐れがあります。最悪、事業継続そのものが立ち行かなくなることも視野に入れなくてはならないでしょう。このようなリスクから逃れられるだけでも、レガシーシステムから脱却するメリットがあります。
DXリソースの増加
DX(デジタルトランスフォーメーション)の対応に企業のリソースを振り向けられるようになる点もメリットです。レガシーシステムから脱却し他社より技術面のアドバンテージを得ることができれば、新たなビジネス進出や既存事業の大幅な効率化を先行して確保できます。
同様に、レガシーシステムの保守や運用に関わっていた職員のスキルセットをDX時代に合わせて転換することも可能となります。AI、アナリティクス、IoT、クラウドなどの最先端技術に精通するエンジニアやデータサイエンティストを社内で育成できれば、デジタル競争を優位に進められるでしょう。
まとめ
今回の記事では、レガシーシステムの問題点について解説しました。コンサルティング案件などを探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。