SDGsの影響により、世界では持続性を意識した考え方が浸透し始めています。SDGsでは具体的な17の目標と169のターゲットが示されました。そのSDGsの根本となる社会や環境、経済などを持続していく考え方が、サステナビリティです。
企業においても、サステナビリティを意識した取り組みが求められています。企業活動にサステナビリティを取り入れる概念がSXです。
この記事では、SXとはどのようなものか、類似語との関係、SXの成功事例、SXの今後の展開などについて紹介します。
目次
SXとは
SXは、サステナビリティ・トランスフォーメーションの略です。サステナビリティが示す「持続可能性」を企業活動に取り入れ、両立させていく方法になります。社会生活や環境活動、経済活動などに対して積極的に取り組み、持続可能性を追求することです。例えば社会の不確実性に備えた成長戦略を経営に反映したり、環境問題に取り組み廃棄物を削減したりするなどが挙げられます。
SXが注目される理由
SXが注目されている理由は、環境問題への活発な取り組みやSDGsの発表を受けて「持続可能性」という概念が浸透し始めているためです。過去をさかのぼると1980年代には、生活水準の向上を目指して工業化が進められていました。しかし多くの国が貧しいままとなっており一向に改善していません。また生態系などを犠牲にする方法では、長期的な発展にはつながらないことも明らかになってきました。そのため社会や経済、環境保護などを融合させた方法が重要であるという結論に達し「持続可能な開発」という考え方に変わってきています。
そのため企業活動に対して、環境活動や社会的貢献、ガバナンスなどが求められている状況です。
- CSV経営の観点
CSV経営は「共有価値の創造」を基本とした経営のことです。社会的な課題解決と利益の追従を両立させた取り組みになります。SXへの注目度が高まっており、経営活動とSXへの取り組みを関連付ける企業が増えている状況です。そのためCSV経営が注目されています。
またCSV経営が掲げる「共有価値の創造」は、消費者側にも浸透していると言えるでしょう。商品を購入する際やサービスを受ける場合、社会的に意義のあるもの、環境面に配慮されたものなどを選ぶ動きが多くなりました。企業にとっても新しい市場へ参入する機会と捉え、企業戦略にSXを取り入れる流れになっています。
押さえておきたい様々な「〇X」
近年では「SX」に代表されるように、「〇X」という似た言葉がいくつか注目されています。「X」の部分はいずれも「トランスフォーメーション」の略で「変革」です。ここでは「DX」「GX」について説明します。
DX
DXは、デジタル・トランスフォーメーションの略です。企業がデジタル技術を使って、自社業務の改善、新ビジネスの創造、企業風土の改革などに取り組むことを指します。デジタル技術とは、ビッグデータやIoT、AIなどです。これらのデジタル技術を社会に浸透させ、人々の生活を良くしていくという意味もあります。
DXは「IT化」のことではありません。IT化はアナログで行っている現在の作業を、単にデジタル化するという意味です。DXはIT化とは異なり、企業経営やビジネス、社会生活の仕組み自体を変革することを指しています。そのため、IT化はDXのための一つの手段という位置づけです。
GX
GXは、グリーン・トランスフォーメーションの略です。環境を考慮した取り組みや変革を指しています。例えば石炭、石油などの二酸化炭素排出が多い燃料の使用をやめて、環境にやさしいエネルギーに変更していくなどです。
また環境を考慮した取り組みを行うと同時に、新たなビジネス創出の機会と捉えて経営戦略に反映していくこともGXの考え方の一つです。企業にとって利益の追求は、最重要課題となっています。GXへの取り組みをビジネスチャンスと捉え、環境を配慮しながら利益を追求する活動が重要です。
SXとDX・GXの関係
SX、DX、GXは、次のようにまとめることができます。
用語 | 説明 |
SX | 社会生活や環境活動、経済活動などを同期させ、持続可能性を追求していく取り組みを指します。 |
DX | デジタル技術を活用し、業務の改善、新ビジネスの創造、企業風土の改革などへの取り組みを指します。 |
GX | 環境に負担がかからないエネルギーに置き換えていく取り組みを指します。 |
DXはデジタル技術を活用し、企業を変革していくことです。企業を変革していくという点においては、DX、SX、GXは共通の考え方と言えます。
SXは社会生活や環境活動、経済活動など幅広い分野を指していますが、その中のエネルギーに関する取り組みがGXという位置づけです。
近年では、地球の気候変動や温暖化、社会情勢の変化、企業に対する社会貢献の要求などが注目されています。そのため、SXやGXが重要視されてきている状況です。
SXを行う上での課題
SXは社会や環境、経済など、対象とする範囲が広くなっています。そのためSXに取り組む際には、いくつかの課題が考えられるでしょう。
事業環境の複雑化
企業は、事業環境の急激な変化や複雑化にさらされている状況と言えます。気候の変動、人権問題、原油価格の上昇によるコストの増大、サイバーセキュリティ問題などです。これらの課題への対策が、企業には求められています。何も対策しない場合、市場や投資家、消費者などから評価されなくなってしまうことが考えられるでしょう。そうなると事業の継続自体が難しくなってきます。
経済的合理性の創出
事業環境の急激な変化や複雑化の中において、企業はSXへの取り組みを行っていくことが求められます。単に社会や環境、経済に配慮した取り組みではなく、企業に求められるのは利益追求です。そのためSXへの取り組みを経営戦略に盛り込み、継続的に利益を生み出す仕組みを創出していくことが求められています。
技術革新や発明(インベンション)に加え、革新的な価値創造(イノベーション)を実現させて、SXと経済的合理性を両立させていくことが大切です。短期目線ではなく、長期目線で取り組んでいくことが重要と言えるでしょう。
様々なステークホルダーとの共創
近年では、様々なステークホルダーと価値を共有することが求められています。従来では、企業は株主のために存在するという考え方がありました。しかし企業が、社会や環境、経済面に配慮して活動することが求められている昨今において、その考え方が再定義されています。企業は、株主だけでなく、サプライヤー、顧客、従業員、地域社会など全てのステークホルダーに価値を提供するとの定義です。この定義に沿った経営が求められています。
SXの成功事例
ここではSXの成功事例について紹介します。それぞれの分野において、さまざまな取り組みが行われている状況です。
ユニクロ
ユニクロでは、良い服をつくることで社会を良い方向に変えていくという方向性のもと、3つの分野に分けてSXの取り組みを実施しています。「PEOPLE」「SOCIAL」「PLANET」の3分野です。PEOPLEでは、あらゆる人が平等に働ける職場、難民の雇用、障がい者の雇用などに取り組んでいます。SOCIALは、貧困層や難民への支援、子どもたちへの教育プログラムやサポート、スポーツや文化、災害支援などの取り組みです。PLANETでは、複のリサイクル、地球環境に負担の少ない素材の使用、環境保全の基金やボランティア活動などになります。
参考記事:UNIQLO Sustainability「THE POWER OF CLOTHING | 服のチカラを、社会のチカラに。 」
トヨタ
トヨタ自動車では、地球環境、社会、働く人への取り組みを行っています。地球環境への取り組みでは、脱炭素に向けた電気自動車のラインナップです。また水素エンジンの開発にも取り組んでいます。社会への取り組みでは、人々が幸せに暮らせるような支援です。東北への復興支援、手指の消毒スタンドの開発、モバイルトイレの開発などになります。働く人への取り組みでは、多様な人材の採用、スポーツへの取り組み、学校の創設、体力に頼らず作業ができる仕組みづくりなどです。
参考記事:トヨタ自動車株式会社「SDGsへの取り組み | サステナビリティ」
大林組
大林組では中長期環境ビジョンとして「Obayashi Sustainability Vision 2050」を策定し、SXに取り組んでいます。環境を配慮した社会づくりや再生可能エネルギーの推進、ESGへの取り組み、SDGsへの貢献などです。
大林グループ全体で目指すべき方向性を決め、具体的なアクションと数値目標(KPI)を設定して取り組みを進めています。
参考記事:大林組「Obayashi Sustainability Vision 2050」
アディダス
アディダスでは、4つの分野でSXに取り組んでいます。「PARTNERSHIP」「PLANET」「PRODUCT」「PEOPLE」です。PARTNERSHIP(パートナーシップ)では環境監査ツールや化学品管理プログラムの見直しを実施し、PLANET(地球)ではエネルギーや資源節約のための設備導入を実施しています。PRODUCT(製品)は、使用する原材料で再生ポリエステルの割合を増加させる取り組みです。PEOPLE(人々)では従業員の行動規範を改定し、労働者向けのホットラインを開設したり、ボランティア活動の推進を行っています。
参考記事:accel.「サステナビリティトランスフォーメーション(SX)を事例と共に解説」
SXの今後
企業活動におけるSXの取り組みは、今後さらに加速していくと考えられます。ここでは、SXを社会に浸透させていくための取り組みの紹介です。
SX銘柄の創出
多くの企業がSXへの取り組みを推進していくためには、資本が必要となります。そのため投資家や企業など、共通の価値観に基づいた協働(インベストメントチェーン)が重要です。経済産業省と東京証券取引所は、SXに取り組んでいる先進的企業を「SX銘柄」として選定し、新しい期待形成を促進する事業を開始しました。
社会全体の課題やニーズを自社の経営戦略に盛り込み、新規事業の創出や再編などを通じ、持続的な価値向上に取り組んでいる企業のことです。企業の方向性を明示することで、日本の企業の新たな期待形成や再評価に繋げていく取り組みです。
非財務情報の開示項目拡大
企業価値や企業情報を知る上で、SXへの取り組みが明確化できるように非財務情報の開示項目拡大の動きがあります。気候や環境への取り組みが企業活動の中でどのような位置づけなのか、競争優位性とどのように結びつくのか、財務への影響はどうなのかなどです。
非財務情報の開示項目を拡大することで、投資家が投資すべき企業を選定する際にSXへの取り組みを考慮することが可能となります。
まとめ
今回は、SXとはどのようなものか、DXやGXなどの類似語との関係、SXの事例、今後の展開などについて紹介しました。昨今では社会的な貢献や環境への配慮など、企業活動に求められる要素が多岐に渡っています。企業側もこれらに対応していかないと、経営が困難になると言えるでしょう。
SXに取り組むと同時に、利益を追求するにはどのような取り組みが良いのか、本記事の成功事例を参考に検討してみてはいかがでしょうか。
私たち「foRPro」はコンサルファームが運営する案件マッチングサービスです。コンサルティング案件を探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。