近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の風潮により、顧客の課題解決のためのシステムを企画・構築・運用保守を一貫して請け負うSIerの存在感がますます高まってきています。経済産業省が発表しているレポートにおいても『ユーザー企業とDXを一体的に推進する共創的パートナーとなっていくことが求められる』『ITに関する強みを基礎として、デジタル技術を活用して社会における新たな価値を提案する新ビジネス・サービスの提供主体となっていくことも期待される』として、SIerへの高い期待感が記載されています。世の中には、様々な種類のSIerが存在しますが、本記事ではSIerの仕事内容や種別について記載していきます。
目次
SIerとは
SIerの定義
SIerとはソフトウェアやアプリケーション等の設計から開発・運用保守までのサービスを請け負う企業のことを指します。ソフトウェアの設計から開発、運用保守を請け負う企業のことをSystemIntegrator(システムインテグレーター)と呼び、短縮してSIer(エスアイヤー)と呼ばれます。
SIerの業界構造
SIerの業界構造は、一般的には数多くの下請け企業から構成されるピラミッド型です。たとえば、NTTデータ、NEC、IBMといった大手企業がクライアントの窓口となって一括して開発業務を請け負います。この大手企業の配下に、子会社や下請けのソフトウェア開発会社が位置しており、細分化された委託範囲を請け負う形となります。大きな開発では、さらに孫請けのソフトウェア開発会社が登場する場合もあります。
SIerの仕事内容
SIerはクライアント企業の業務内容を理解したうえで、課題を解決するためにシステムコンサルテーション、あるいはシステム開発・運用・保守を請け負う仕事です。クライアントの業種や課題は様々であるため、SIerが請け負う仕事のバリエーションも多いです。
業務向上へのコンサルティング
クライアント企業が抱える課題に対して直接的にサポートします。この仕事は、技術だけでなく経営戦略に特化している点も特徴です。
システムの導入企画や立案
SIerはクライアント企業が導入したいと思っているシステムイメージを、インタビュー等で具体化し、構想を立案します。時には、SIerがゼロから企画を発起するケースもあります。
システム開発と設計
クライアントからヒアリングして固めた構想や要件をもとに、まずは基本設計としてシステムの実装イメージを文書化します。そのうえで、さらに画面インタフェースや処理フローなども詳細に設計し、実際に開発を行います。
インフラの構築
SIerはアプリケーション開発だけが仕事ではありあせん。アプリケーションが稼働するための基盤インフラ構築も重要な仕事です。最近ではオンプレミスではなく、クラウドサービス上に基盤を構築するケースも増えてきました。
開発したシステムの運用管理
開発して一切にシステムが稼動したら安定的にサービスを提供することも重要な仕事です。運用管理では、バージョンアップや機能改修、チューニングなども担当します。
これらの仕事は、SIer1社だけで開発が完遂することは少なく、多くの場合には再委託先のSIerや、ハードウェアメーカー、ソフトウェアメーカー等とも協力しながら進めていきます。幅広い業務を経験するのが、キャリアパスを見定める上ではとても重要になります。
SIerの種類
SIerは、出身母体や成り立ちから次の3つの種類に大別されます。

ユーザ系SIer
大手の事業会社において、IT部門を子会社あるいはグループ会社として独立させているSIerのことを指します。金融機関、通信キャリア、総合商社などで、ユーザ系SIerにも様々な業種、系統が存在します。
【代表的なユーザ系SIer】
みずほ情報総研、三菱総合研究所、野村総合研究所、NTTデータ、ソフトバンク・テクノロジー、伊藤忠テクノソリューションズ、SCSK、
メーカー系SIer
主に自社の製品を用いてシステム開発する大手コンピューターメーカーのことをメーカー系SIerと総称します。また、 システム開発部門が独立して子会社化した場合も同様の呼称を付けることがあります。メーカー系SIerは、システムインテグレーションと自社の製品をセットで提供できることが強みです。
【代表的なメーカー系SIer】
NEC、日本IBM、日立製作所、東芝
独立系SIer
ユーザ系やメーカー系のどちらにも所属せずに、大手事業会社の資本傘下ではなく中立的な立場でシステム開発担うSIerです。 自社で会計ソフトウェアパッケージなどを開発して販売・インテグレーションするなど、特定分野を軸足に据えて事業展開をしています。
【代表的な独立系SIer】
大塚商会、TIS、シンプレクス、ネットワンシステムズ
SIerの業務工程
多くのSIerでは業務工程にウォーターフォール型を採用しています。ウォーターフォール型で開発する場合、「要件定義」「設計」「開発」「テスト」に工程を区切り、順次それらの工程を進めていきます。
要件定義工程
要件定義では、設計や開発の工程に入る前に、SIerの視点から顧客の要求をまとめる作業を行います。システム開発のゴールは顧客のニーズを実現することですが、多くの場合そのニーズは曖昧なことが多く、詳細なヒアリング等を通して文書化することで初めて設計を行うことができます。
設計工程
設計工程では開発するシステムの仕様を決定します。まずは、顧客が求めているシステムについて、必要となる機能やスペックを具体的に設計文書に落とし込みを、実現するシステムのアウトラインを決定します。このタイミングで、使用するソフトウェア製品、ハードウェアのスペックなどを決定します。設計が進んでいくと、画面のインタフェースについても、ボタン機能、入力フォーム、エラー処理など細かい仕様をアウトプットしていきます。
開発工程
設計文書をもとにしてプログラミングを行う工程です。設計が曖昧、あるいは設計に無理がある場合には、正しくプログラミングされずにバグの原因となります。この工程は、下請け会社に委託することも多いため、その場合SIerはその品質をチェックする役割を担います。
テスト工程
開発工程で実際に出来上がったシステムを動かして、設計通りに機能するかを確認する工程です。テスト工程では、プログラムを1行ずつ検証する単体テスト工程、モジュールを連結させて検証する結合テスト工程、実際の利用者の操作を実行する総合テスト工程があり、順に進めていきます。また、SIerだけでなく、顧客側もテストに参画することで品質の高いシステムを導入することができます。
このように、ウォーターフォールでは上記の工程を順番に進めることでシステムが完成します。一方で、最近ではアジャイル型の業務工程を取り入れるSIerも多くなっています。
アジャイルは、日本語に直訳すると「早い」「機敏」「回転が速い」という意味で、システムを小さな単位に分割して要件定義、設計、開発、テストを何度も繰り返すことで完成させる開発手法です。この開発のメリットは、ウォーターフォールと比べてやり直しができるという点です。顧客のニーズが極めて柔らかい段階では、まず小さく開発して実物を確認してイメージを具体化した後に次の開発を進めることで、修正・改善を繰り返しながら開発することができます。
SIerの将来性
クラウドサービスの普及や慢性的なコスト体質の点から、SIerの将来性は低いと言われています。しかし大規模案件では、自社で内製化してシステム開発を行う事が難しいため、引き続きSIerが大きな役割を果たすと予想されます。またDXの需要増加に伴いクライアントのニーズも多様化しているため、ナレッジを活かしてシステム導入まで行うなど、時代の変化に合わせて対応できるSIerは今後も衰退しないと思われます。
SIerのキャリアパス
SIerのキャリアパスは多種多様であり、テクノロジーの進化が目まぐるしい現代においてはスキルやキャリアも徐々に細分化する傾向にあります。一方で、キャリアパスを考える際に自分に合った働き方を見つけることも重要です。ここでは、自分のスタイルに応じて選択できるよう、代表的なSIerのキャリアパスを紹介します。
ITスペシャリスト
ITスペシャリストとは、IPA情報処理推進機構が定めているITスキルの標準(ITSS)に沿ったエンジニアのことです。
ITSSではアプリケーション共通基盤、システム管理、セキュリティ、ネットワーク、データベース、プラットフォームの計6つの専門分野を定めています。ITスペシャリストは、この6つのいずれかでレベル3以上を取得しているエンジニアです。レベル評価は情報処理技術者試験に合格することで判定されるため、日頃から技術に深い興味と関心を持ち、技術の進化を追い求められる人には魅力的なキャリアパスと言えます。
(参考:情報処理推進機構)
プロジェクトマネージャー
SIerの多くのシステムエンジニアが設計や開発を担う一方で、エンジニアを束ねてプロジェクトとしてマネジメントして顧客に納品するのがプロジェクトマネージャーです。
大きなシステム開発案件では、プロジェクト体制を組成するため、スケジュール管理、人員リソースの管理、開発リスクの管理、ステークホルダーとのコミュニケーションなど、多くのマネジメント業務が発生します。プロジェクトマネージャーは、要件定義や設計などの工程で意思決定を行い、次の工程に進むべきかを判断します。大きな責任を伴う仕事ですが、やりがいも得られるため、大変魅力的なキャリアパスと言えます。
ITコンサルタント
顧客が抱える課題を解決するうえで、経営層や部門の責任者等からヒアリングを行い解決の方向性について提案するのがITコンサルタントです。提案書を作成するには経営視点が必要であり、このキャリアプランを実現するうえでは経営学などのITシステム以外の知識や教養を身に着けることが重要です。
また、実際に提案が受け入れられた際には自社の開発体制を組成するため、関係者を巻き込む能力も必要になります。ITコンサルタントは文字通りコンサルティング会社に所属しているため、転職でステップアップしたい方も検討する価値の高いキャリアパスです。
他のSIerへの転職
給料などの待遇面や自身のスキルアップのために、今よりも良いSIer企業へ転職するのも魅力的なキャリアパスの1つです。他のSIerへの転職を選ぶ最大のメリットは、自身が理想とする職場環境を手に入れるチャンスがある点です。そのためにも、若いうちから勉強を欠かさずに技術習得と業務経験が得られる企業を選ぶようにしましょう。
フリーランスとして独立する
SIerで一定の経験を積むことで高いスキルを習得できたと感じた場合は、思い切ってフリーランスとして独立するキャリアパスも考えられます。ITスペシャリストやプロジェクトマネージャーとして難易度の高い案件を推進できる自信があるのであれば、企業に所属するよりも良い収入が得られるでしょう。当然、仕事が無ければ収入がゼロになるためリスクを負うことにもなりますが、自身の成果が収入に直結するというのは大きな魅力です。時には営業して案件を獲得する努力も必要になるでしょう。
求人例
■業界
電力会社
■案件概要
RPAツール導入支援
■仕事内容
業務の自動化に伴い、Uipathの導入を行う。 ヒヤリングから要件定義、検証テストまでを担当いただく。
■勤務地:都内
■稼働率:100%
■単価:95~100万円/月

まとめ
今回の記事では,SIerについて解説しました。コンサルティング案件などを探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。