目次
SIerとは
SIer企業の分類
SIerはSystems Integrator(システムインテグレーター)の略称です。SIerは各企業の情報システムの設計、開発、保守・運用、管理までを一括で請負する情報サービス企業を指します。SIerは主に3種類に分けられています。

【メーカー系】
メーカー系はパソコンなどのハードウエアメーカーを親会社に持つ会社です。
NECや富士通などが該当します。
【ユーザー系】
ユーザー系は、従来企業の中にあった情報システム部門が分社化して、親会社以外の仕事も請け負う形になった会社です。親会社がトヨタであるトヨタシステムズや、ソニーが親会社であるソニーグローバルソリューションズなどが該当します。
【独立系】
独立系や純粋にSI(システムインテグレーション)事業を行うために設立された会社でオービックや大塚商会などが該当します。
SIerのビジネスモデル
SIerのビジネスモデルは「人月スタイル」と呼ばれています。多くのSIerは受託業務で「人月単価×人数」が売上になります。
つまり、人数を多く投入すればするほど売り上げは上がりますが、一方で人員を減らすことで売上が減少するということです。
そのためSIer業界では、長期スパンでクライアントと契約して利益をできるだけ多く利益を出すビジネスになっています。
SIer業界の始まり
SIerは、世界的に見ても急速にIT化が進んだ1990年代に誕生しました。当時多くの日本企業では不況が続き、ITに資金を捻出することができていない状況でした。そこで大手企業の情報システム開発をSIerが請け負うことにより、日本のIT化を推進していきました。
SIerの問題点
SIerは将来性がないと言われることもありますが、それは現代の外的内的環境の問題が理由と言われています。
将来性がないと言われる理由と問題点についてご紹介します。
クラウドの普及による需要減少
近年ではクラウドサービスが主流になりつつあり、SIerは将来性がないと言われています。これまでの企業は先述のとおり、多くの企業のシステム設計から開発、保守運用までを一貫して行ってきました。
しかしながらクラウドサービスの台頭、SaaS等の新興企業の参入により、システムは開発、構築するのではなく、既にある既存のシステムを利用する形がスタンダードになってきています。
なぜならば、SIerが行うシステム開発よりも、クラウドサービスを利用するほうがコストが抑えられるからです。
そのため、システムのクラウド化が普及し、需要が減少していくと言われています。
多重請負構造のビジネス
多くの大手SIerを中心に、中小SIerの下請けに仕事を任せる多重請け構造が将来性への懸念点といわれております。現状のSIer業界の構造として、大手SIerは仕事を受注し、その仕事を下請けに丸投げしているケースが多いからです。
さらに下請けも人材不足から孫請けへ任せる多重請け構造が生まれています。下請けになればなるほど、納期も厳しく、また売上も少ないため、年収などにも差があるような状況になっています。
この状況では、業務の内容や年収に格差が生まれ、業界全体としての発展を望むことはなかなか難しいと言われています。
グローバル性の欠如
SIerは日本独自のビジネスとなっているため、海外にはSIerという業界、ビジネス構造はありません。海外では自社内で情報システム部門を保有し、システム開発、運用を行うことが一般的です。
そのため、日本のSIerは日本国内でしかビジネスを展開することができず、海外にまで広げていくことができないというのは、SIer業界にとっても厳しい状況が待ち受けているでしょう。
過重な労働環境
SIerのビジネスはお客様の要望に沿ってシステム開発・運用を行うため、時にはお客様の要望変更に対して柔軟な対応が必要となります。そのため、期日を間に合わせるためには、深夜・休日労働が当たり前となり、仕事量や労働時間が他の業界よりも格段に過重になる場合があります。
結果として、SIerビジネスの中核である優秀な人材がSIerから次々と離れていき、業界全体として成長が見込めない状況に陥るの可能性があると言われています。
SIerの将来性
SIerの問題点は複数ありますが、今後仕事がなくなることはまだないと言われています。その理由について解説します。
SIerが将来的に無くならないと言える理由は下記理由からです。
DXブームにおける追い風
DX推進に伴い、SIerは既存の導入システムのノウハウを活かして、パッケージソリューションの導入を行うパターンが増えてきています。
昨今のDX(デジタルトランスフォーメーション)のブームにより、多くの企業が効率化、高付加価値化、売上の拡大などを目指して推進しています。
特にCRM(Customer Relation Management)やERP(Enterprise Resources Planning)などは比較的規模の大きい企業に対して注目されており、SIerとして強みを発揮できる部分になります。
官公庁等からの大規模案件受注
政府系の官公庁機関や公共性の事業者、金融機関などは引き続きSIer需要が見込まれています。なぜならば、公的機関のシステムは高度なセキュリティが求められるため、既存のクラウドサービスよりも、SIerがシステム開発を担うほうが基準を満たしやすいからです。
そのため、今後も官公庁等からの大規模案件に対しては、SIerが引き続き受注していくことになるでしょう。
新システムへの移行問題
「2025年の壁」と言われているとおり、日本における各企業のシステムはレガシー化が進んでおり、2025年を境に経済的損失が発生するリスクを持っています。
このリスクを回避するためにも、既存のシステムは新システムへの移行が必要です。企業で使われている各基幹システムや業務システムを新システムへ刷新していく大規模のプロジェクトにおいては、SIerの力が必要となってくるでしょう。
SIerにおける今後のビジネスモデル
SIer業界だけでなく各業界、既存ビジネスモデルの見直しと新たな収益源の確保が求められています。今後考えられるSIerのビジネスモデルについて解説します。
従来型のビジネスモデル
まずは従来型のビジネスモデルです。
これは先述のとおり、DXブームによりSIerの活用や官公庁系の大規模案件受注など、既存ビジネスを継続して行っていくパターンです。
大規模の案件を受注し、システム開発を行っていくことになるため、大手SIerは従来型のビジネスを主として継続していくと考えられています。
ITコンサル型のビジネスモデル
昨今のSIerは、コンサルティングを含めたビジネス展開が増えてきています。
なぜならば、コンサルティングを含めることで、お客様の要望に対して応えるシステム開発ではなく、課題を特定し適格な助言を行ってシステム開発に繋げられるからです。
つまり、課題ありきでのシステム開発ではなく、企業や官公庁の課題を明確にコンサルティングを行っていくビジネスモデルが今後も増加してくると言われています。
海外アウトソース型のビジネスモデル
次に考えられるビジネスモデルとしては、SIerは今後生き残っていくために開発費用を抑えるビジネスモデルが考えられます。その一つの手段として、単価の安く質の高い海外人材を活用することが挙げられます。
つまり「オフショア開発」です。「オフショア開発」とは技術力の高い新興国にシステム開発業務を委託することです。オフショア開発を行うことで、スキルの高いエンジニア人材を、人件費を抑えつつ活用していくことが可能です。そのような海外アウトソーシング型のビジネスが今後増えてくると言われています。
AI活用型ビジネスモデル
最後にAI活用型のビジネスモデルです。
現状も人手不足により、悩みを抱えているSIerは少なくありません。これまでの働き方に対して、「定型的な作業」などの低付加価値業務は、AIやRPAなどを用いて自動化し、限りのある人材リソースは企業課題の特定や方向性の検討などの高付加価値な業務を中心に行っていくビジネスモデルが考えられます。
AIの活用を図ることで少ない人員でも、高い生産性を保ちつつ、お客様へ付加価値のある働き方を行っていくことができると言われています。
まとめ
今回の記事ではSIerのビジネスモデルの問題点についてご紹介しました。DX案件を探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。
