現在、企業が運用する基幹システムをクラウドに刷新する動きが強まっています。すでにシェアが高く、他の大手ベンダーが提供するクラウドサービスよりも低コストで運用できるのが、Oracleが提供する「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」です。
今回はそのOCIについて、搭載されている機能の詳細や導入メリット等について詳しく解説していきます。
目次
Oracle Cloud Infrastructure(OCI)とは?
次世代クラウドを開発するOracle社提供の企業向けパブリッククラウドサービスが「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」です。まずは、このOCIの基本的な部分について解説していきます。
(OCI)の構成
OCIは「IaaS」および「PaaS」で構成されています。厳密には「IaaS」も「PaaS」に含まれますが、IaaSは物理ハードウェアおよび物理ネットワークをクラウドで提供すること、そして「SaaS」はOSやOSに連携するミドルウェア、仮想ネットワークをクラウドで提供することを指します。
企業は自社管理のオンプレミスシステムを導入していることが多いですが、OCIのパブリッククラウドに移行することで、自社でサーバーを用意する必要なく、一元管理される上記のIaaSおよびPaaSに簡単にアクセスできます。
例えばクラウド経由でLinuxやWindowsに対応したアプリケーションを動作させることが可能です。基盤となるハードウェア・ミドルウェア・ネットワーク環境が全てOracleより提供されるため、オンプレミスのように自社で全てを管理する必要がなくなり、大幅にコストカットが可能になります。
(OCI)の特徴
OCIには以下の特徴があります。
- 最新のテクノロジーを低コストで利用可能
- 万全のセキュリティ体制
最新のテクノロジーを低コストで利用可能
OCIはデータ転送料が安いため、データ量を気にすることなくクラウドサービスを利用可能です。1ヶ月あたり「10TB」もの無料枠が用意されており、それを超えた場合でも「1GBあたり3円」という低料金でネットワークを利用できます。他社のクラウドサービスは無料枠が1GBまでしか用意されていないことが多いため、この点は大きなアドバンテージとなります。
例えば「Zoom」などのビデオ会議システムを運用する場合は、アウトバウンドトラフィック(外部通信量)が非常に多くなるためどうしてもネットワークコストが高くなります。しかしOCIは単価が安いためネットワークコストを大幅にカットできます。実際にOCIを導入した「Zoom」は80%のネットワークコスト削減に成功したようです。
万全のセキュリティ体制
OCIは「セキュリティ・ファースト」を掲げており、格納されるデータを外部攻撃から守るために強力なバックアップ・強制暗号化が行われ、データベース上に脆弱性が発見された場合も「自律型データベース(Oracle Autonomous Database)」により自動修復されます。
セキュリティ保全における重要な取り組みの一つが「顧客環境分離(Isolated Network Virtualization)」です。従来型のクラウドは、1つのホストが攻撃を受けてダウンしてしまうとサーバー全体に影響が広がってしまうため、情報流出のリスクが高まります。
しかしOCIはホストとネットワークサーバーが完全に分離されているため、1つのホストに障害が発生しても他のホストに影響を与えず、情報流出リスクが最小化されます。この取り組みにより、OCIはセキュリティソフトを提供する企業からも高い評価を得ています。
(OCI)の強み
他社クラウドにはないOCIの強みとして、高性能スーパーコンピューターとパートナーシップを組むほどの高い性能と信頼性・コストの低さが挙げられます。
Oracleは2020年から、理化学研究所が保有する世界第1位のスーパーコンピューター「富岳」と接続しています。スーパーコンピューターは数百台の高性能コンピューターを組み合わせることにより膨大な計算量の処理を行うことが可能ですが、その一部の処理をOCIが担当しているのです。
本来そのような用途でクラウドサービスを利用すると、膨大なネットワークトラフィックが発生するためコストが非常に高くなります。しかしOCIと富岳は「Oracle Cloud Infrastructure FastConnect」という専用回線サービスにより接続されているため、どれだけ膨大なネットトラフィックが発生しても従量課金が発生しません。
(OCI)の利用料金
OCIの料金は、クラウドサービスを利用した分だけ課金される「従量制」であり、Oracleはその料金体系を「Pay As You Go」と呼称しています。基本的にはクラウドサービスを利用した時間に応じて課金され、例えば「Oracle Cloud VMware」という仮想環境を利用できる「エンタープライズ(1ヶ月契約)」プランでは、1時間あたり「1.512円」が発生します。
OCIの利用料金は選択するハードウェアや契約するサービス・アプリケーションによって大きく変わるため、まずは公式ウェブサイト上で用意されている料金シミュレーションを実施しましょう。OCIでは、「Oracle Universal Credit」というクレジット制の料金体系を選択することも可能です。
(参考:OCI「料金シミュレーション」)
Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の代表的な機能
OCIが提供する機能として、代表的な以下の機能が挙げられます。
- Oracle Analytics Cloud Service:データ分析や分析したデータの視覚化
- Developer Cloud Service:ソフトウェア開発PaaS
- Oracle Autonomous Database:自律型データベース
- Oracle Integration Cloud Service:オンプレミスアプリとの連携
- Oracle FastConnect:仮想クラウドへの直接ネットワーク接続
これらの機能はあくまでOCIの一部に過ぎません。セキュリティの高いコンピュート環境や高速ネットワーク、データベースだけでなく、アプリ開発やデータ分析に必要な機能も提供しています。
AWS,Azure,GCPとの違い
OCIが提供するクラウドサービスの機能を、他のベンダーが提供するクラウドサービスと比較してみましょう。
サービス内容 | OCI | AWS | Azure | GCP |
---|---|---|---|---|
ストレージ | Object Storage | Amazon S3 | Azure BlobStorage | Cloud Stotage |
セキュリティ(主要機能) | Isolated Network Virtualization | AWS Shield | Azure Defender | Google Cloud Armor |
仮想環境 | Oracle Cloud VMware Solution | VMware Cloud on AWS | VMware Horizon Cloud Service on Microsoft Azure | Google Cloud VMware Engine |
次は、料金体系をベンダーごとに比較していきます。
サービス内容 | OCI | AWS | Azure | GCP |
---|---|---|---|---|
ストレージ | 1TB=$25 | 1TB=$25 | 1TB=$20 | 1TB=$23 |
ネットワーク | 1TB=$0 | 1TB=$116 | 1TB=$109 | 1TB=$112 |
MySQL | 1TB=$134 | 1TB=$410 | 1TB=$443 | 1TB=$458 |
上記は概算値です。OCIも含めて、各プラットフォームが用意している料金シミュレーションツールを必ずご利用ください。
Oracle Cloud Infrastructure(OCI)を導入するメリット
次は、企業がOCIを導入する具体的なメリットについて解説していきます。
メリット1:クラウド環境への移行
OCIを利用したオンプレミスからクラウドへの移行は非常にスムーズです。「Oracle Cloud Lift Services」により、オンプレミスからクラウドへの全データ移行がサポートされます。データ移行は早ければ数日で完了するため、大事な業務にほとんど間を開けずに基幹システムのクラウド移行が可能です。
メリット2:豊富な機能
OCIではアプリ開発やAI研究等に最適な多くの機能を提供しています。運用に機械学習が用いられている「Oracle Autonomous Database」ではスケーリングが自動化されているため、データ分析速度が大幅に高速化し、教育環境やIOT分野にフル活用できます。またワークロードが安定した基幹システムでは、クラウドに移行することでコストが上がる場合があります。しかしOCIでは、コンテナやサーバーを活用しないためコストパフォーマンスを高い状態で維持することが可能です。
そのため豊富なサービスを提供しているためOCIの基幹システムを活用して、オンプレミス環境からOCI環境に移行する企業も増えてきています。
メリット3:低コスト
OCIは、他社のクラウドサービスよりも低コストで運用できます。すでに解説したネットワーク料金もそうですが、OCIが実現する高いセキュリティ環境をオンプレミスや他のクラウドで実現しようとした場合膨大なコストがかかります。
しかしOCIは基盤となる以下のセキュリティ機能が標準適用されており、追加料金はかかりません。
- 顧客環境分離(Isolated Network Virtualization)
- 通信暗号化
- コンパートメント・モデル
Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の用途別の活用方法
最後に、OCIの用途別の活用方法について紹介していきます。
データ量や負荷の大きさに合わせて柔軟な環境で使用したい
OCIは企業ごとに異なるニーズに合わせた柔軟な環境選択が可能です。これは用途に応じて運用コストを大幅に削減できることを意味しています。
例えばクラウドストレージサービスである「racle Cloud Infrastructure」では、必要に応じて最高2TBまでのNVMeローカルストレージ、最高1PBまでのブロックボリューム、最高8EBまでのファイルストレージを1GB単位で指定し、契約できます。
オンプレミスの災害対応環境をクラウドで用意したい
オンプレミスの基幹システムを運用している際に生じる、災害・障害が発生した際の復旧速度を向上したり、維持管理コストを下げるためにOCIを活用できます。
実際にOCIを導入している「UQコミュニケーションズ」では基幹システムをクラウドへ移行したことにより、災害が発生した際に迅速にバックアップシステムを立ち上げることが可能となり、データ転送コストも大幅に削減できました。
(参考:「UQコミュニケーションズ」)
開発に伴い迅速な稼働確認をしたい
OCIが提供する「OCI Database Management」というデータベース管理システムでは、リアルタイムでデータベースの状態を監視できるだけでなく、発生したデータベースエラーの内容やログを簡単に検索できます。これにより問題が発生してから復旧されるまでの時間が大幅に短縮化されます。
まとめ
今回の記事では、OCIの機能やメリットについて解説しました。コンサルティング案件などを探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。