経理DX推進の現状と課題
経理DXとはデジタル化やIT技術の応用で、経理業務処理を簡便化し、経理のプロセスの生産性を飛躍的に向上させることを指します。
対象となる経理業務には、売上や仕入れといった主要な活動のデータだけでなく、人件費や広告宣伝費、研究開発にかかる費用、備品や資産の購入、税金の支払いや経営のための資金調達の流れなど、膨大な量のデータの処理が含まれています。
しかし、日本CFO協会による「経理財務部門のデジタルトランスフォーメーションに関する実態と課題の調査」など、各種の実態調査では、多くの企業においてDX推進の必要性を認識しながらも、着手できていない状況がうかがわれます。
(参考:日本CFO協会 経理・財務部門の デジタルトランスフォーメーションに関する実態と課題)
先進的な取組を実施している企業の割合も増加してはいますが、まだ一部に留まっており、経済産業省が目指す、「デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル」は、2020 年の段階で アンケートに応じた企業の8.5%という結果でした。
(参考:「DX 推進指標 自己診断結果 分析レポートP27(2020 年版)」)
デジタル化・IT化によって手続きや業務処理を簡便化するプロセスは、膨大なデータ処理が必要な経理分野においては、圧倒的な生産性の向上を可能にするはずです。
ところが、経済産業省主導のもと推し進められているDX化の流れの中で、経理分野のDXが必ずしも十分な成果を上げてはいないのが現状と言えるでしょう。
経理DXが必要な理由
経理DXが推進されると、経理担当者の業務効率化のみならず、情報をデータ化し、ITツールを利用することで、複数のシステム間のデータの連携が可能となります。
結果として、データの管理や組み換えが容易となり、どこに改善すべき課題があるのかも見えやすくなります。これらの説得力あるソースを基に経営成果を分析することで、今後の戦略立案の基礎とすることが可能となります。
また、納税のための計算資料を期限までに正確に作成するためのコストも削減できるでしょう。
複雑化する経営環境に対応するために、迅速な経営判断が必要となっている現代において、企業の競争力を強化していくためには、経理DXへの取り組みが不可欠と言えるのです。
経理DXの具体的な手法
経理DXの具体的な手法としては、下記のようなものが挙げられます。
・RPA(Robotic Process Automation)の導入による定型業務の効率化
・ペーパーレス化の促進
・入力データの確認または承認業務の自動化
・決算業務のスピードアップ
・日次・週次の損益管理のシステム化
・スマホによる経費精算の簡易化
・リモートワークなどへの取り組みを含む働き方改革
・業務プロセスの改革と組織改編
・基幹システムと会計システムを連携させることで、最適な経営戦略の立案を可能にする
・データに基づく財務状況の分析により、管理会計の精度の向上が促進する
・健全な組織運営を行うための経営の統治・監督機能としてのガバナンスの強化
このように経理DXは、あらゆるフェーズにおいて生産性向上に資するソリューションを提供することで、変化の激しい経済環境の中で、競争優位性を獲得することを可能にしていると言えるのです。
経理DXのメリット・デメリット
このような経理DXのメリット・デメリットについても解説していきます。
メリット
経理DXの具体的なメリットとしては、下記が挙げられます。
・膨大な量のデータ管理が容易になり、業務の効率化が可能になる
・タスクの標準化による作業時間の減少に伴い人件費も減少する
・データその他必要書類のペーパーレス化による保管費用の削減
・データの蓄積による情報の多元的利用が可能になる
・異なるセクション間の連携を強化することで、シナジー効果が期待できる
経理DXを推進することで、人的コスト、時間的コストが削減され、その分戦略立案・意思決定のプロセスに重点的にリソースを割くことが可能になるのです。
経理DXのデメリット
経理DXには、以下のようなデメリットも存在します。
・システム移行期の混乱
・変革への現場の抵抗感
・経理とITに関するスキルを合わせ持つ人材確保が困難
会計処理システムや業務フローを大幅に変更する際には、従来のシステムから新しいシステムへ移行することによって、現場で混乱が生じる恐れがあります。
これらのリスクを想定したシステム移行プランを立てることで、スムーズに新しいシステムを導入することが肝心となります。
経理部門が目指すべき姿とは
このような環境下において、経理部門が目指すべき姿とはどのようなものでしょうか?
経理DXが推進されることで下記のような効果が期待できます。
・業務を標準化・自動化することが可能となり、効率化を実現できる。
・データに基づく詳細な財務状況分析が可能となり、精度の高い管理会計が実現できる。
・リアルタイムの数字に基づく、最適な経営戦略立案が可能になる。
・正確なデータに基づく経営判断の迅速化が可能になる。
・より競争力のあるビジネスモデルへの変革が可能になる。
経理部門が目指すべき姿とは、業務効率化のみならず、リアルタイムに蓄積された正確なデータに基づき、社会の変化に耐えうる革新的なビジネスモデルの創造を、後方から支える役割を担うことと言えるではないでしょうか。
経理DXの推進方法
経理DX推進の流れを示すと以下のようになります。
・決算業務の現状把握
・課題整理・戦略立案
・課題解決に向けた取り組み
・課題解決プランに基づくDX推進のサポート
経理DXの推進にあたっては、会計処理プロセスの効率化だけに着目するのではなく、ダイナミックなイノベーションの基となる戦略立案のトリガーとしての視点を持つことが必要と言えます。
詳細な現状分析によって改善すべき課題を発見した際には、個別のソリューションを探るのではなく、組織全体の生産性の向上という観点から組織横断的な解決策の検討をすることで、最大限の効果を引き出すことに注力することが重要です。

まとめ
今回の記事では、経理DX推進の現状と課題ついて解説しました。コンサルティング案件などを探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。