Microsoft Azureの特徴
クラウドサービスとしてはAWSやGCPなどがありますが、Azureの特徴としては、以下の4つが挙げられます。
Windows製品との高い親和性
Windows製品との親和性が高く、MicrosoftOfficeやOneDriveと容易に結合が可能です。
また、オンプレのWindows Serverとも親和性が高いため、Windows Serverを用いているシステムのクラウド移行は導入コストが下がる傾向にあります。
高可用性
Azureは全世界60箇所以上にデータセンターを保持しており、これらをネットワークでつないでおります。Azureではこれらのネットワーク内で、分散配置をしているため、高い可用性を実現することが可能です。
高セキュリティ
Azureでは高セキュリティを実現するために、様々な対策を講じています。例えば、インフラ設備やデータセンターに関して、3000名以上の体制でセキュリティ対策を実施していたり、大量データを分析することでセキュリティリスクを迅速に発見・対応をしたりしています。
PaaS、IaaSのサービスを提供
Azureは2つのサービス(IaaS、PaaS)を中心に提供しています。これらのサービスは提供範囲が異なります。
IaaS(Infrastructure as a Service)ではサーバーやネットワーク、CPUなどのインフラ基盤を提供するサービスです。ユーザーはこの基盤の上にOSやミドルウェア、開発アプリケーションなどを導入・管理しています。
一方PaaS(Platform as a Service)は開発環境を提供するサービスです。ミドルウェアやデータベース管理システム、プログラミング言語などを提供しています。
「業界別」Azure活用事例
AzureはAWSに次いで第2位のシェアを確保しています。そのため、様々な業界や用途で使用されています。ここでは業界の事例として、医療業界、金融業界、製造業界、教育業界の事例を紹介いたします。
医療業界
医療業界の導入事例として医療福祉生協連を紹介します。医療福祉生協連では12年前より、カルテの電子化に力を入れており、12年前にはWeb型電子カルテ「Ecru」(エクリュー)を導入しておりました。
しかし、近年以下のような課題が挙げられています。
・運用に工数がかかる
・故障、セキュリティ面などのリスク
・診療所でしか入力できないことによる医師の負担の増大
・オンプレによる地震などの災害リスク
そのため、従来の電子カルテからクラウドに移し、これらの課題の改善に踏み切りました。そこで、医療福祉生協連ではAzureとともにクラウドカルテ「blanc」を導入し課題解決に取り掛かりました。
Azureを評価した点は以下のような点です。
・国内に2拠点あることで、冗長構成での設計が可能
・クラウドが始まる前からMicrosoftは日本の医療機関へのサービス提供実績があり、日本の医療を深く理解していること
これにより、往診診療などの負荷の軽減、システム運用が改善されました。今後は医師や看護師だけでなく、ケアマネージャーやヘルパーなど医療の質の向上のため、情報共有のクラウド基盤を整えていくことが次なる課題です。
(参考:Microsoft Customer Story-オンプレミス運用の“手間”と“リスク”をAzureで抜本解消、 医師の業務効率化に加え、将来的な多職種連携の情報共有基盤に)
金融業界
金融業界の例として、MUFGの例を紹介します。同社は2015年ごろからクラウドへの移行を進めてきました。セキュリティ要件が強い金融業界ですが、クラウド化を進め始めた背景としては、クラウドのセキュリティや権限コントロール、仮想ネットワーク技術が発展してきたことにあります。
MUFGではグループ共通で利用するクラウド基盤としてAzureを採用しました。採用した理由としては次の点が挙げられます。
・Linuxベースで作られたシステムに対するサポートが手厚い点
・セキュリティ要件を満たしていたこと
・日本でのサービスの豊富さ
現在はリスク管理システムに対応できるセキュリティレベルが実現された段階であり、今後はセキュリティをより向上させる追加開発を行うことで、さらにAzureの適用範囲を広げていくことが求められている状況です。
(参考:Microsoft Customer Storyクラウドシフトのメリット最大化を目指し MUFG が Azure を採用)
製造業
RICOHの製品を紹介します。RICOHはAzure Virtual DesktopというVDIサービスを導入し、設計環境の刷新を行いました。導入前はオンプレにより、拠点ごとCADサーバーを設置し、夜間に更新・作成したデータを海老名のデータセンターに集約するという形をとっていました。しかし、この仕組みでは以下のような課題があることが明らかになっています。
・更新データのレプリケーションを早期に実施できないこと
・バージョンアップや停電対応の調整に時間を要してしまうこと
・各拠点にCADサーバーを設置することで保守運用コストがかかること
そこでこれらの環境のクラウド化を推進し、これらの課題の解決を試みました。
同社は以下の理由からAzure Virtual Desktopの採用を決定しました。
・同社が業務でMicrosoft365を広く利用しており、既存ライセンスの活用ができたこと
・Windowsデスクトップ環境を利用するには、Azureが最適であったこと
RICOHはコストを抑えるためにクラウド上に共有環境を構築し、そこにアクセスする方式をとりました。同社はこの方式を採用したことでオンプレでのVDI導入に比べ、コストを抑えるとともに迅速なシステム導入の実現に成功しました。
今後は他の業務への横展開を考えているそうですが、今回導入した環境を他業務で使ってみて計画を練れるため、横展開がしやすいのもメリットになります。
(参考:Microsoft Customer Story-Azure Virtual Desktop の導入によって、コロナ禍でも柔軟で効率的な業務が可能な設計開発環境を実現したリコー)
教育業界
ここでは京都大学の例を紹介します。京都大学は近年人工知能の講座を開催しております。そこではGPUを使用する講座もありますが、GPUを搭載しているPCを生徒に要求するのは現実的ではありません。また、一時的な利用にもかかわらず、オンプレで設置するのもコストがかかりすぎます。そこで同大学はAzure VMのNC9 Promoを導入しました。Azureを選んだ背景としては、以下の点が挙げられます。
・時間課金でのスポット利用が行いやすいこと
・大学にとって使いやすい契約方法が用意されていたこと
導入してみた所感としては、想定よりも手軽に利用ができたこと、ハードウェアの管理負担が想定よりも少なく済んでいると好感を得ています。
今後は、論文投稿前など集中して使用する期間においては、サービスを手厚くして、迅速にかつ大規模に計算ができる体制にしていくことが、研究のスタンダードになるかもしれません。
(参考:Microsoft Customer Story-人工知能公開講座の演習用マシンとして GPU を搭載した Azure VM を活用、研究用としても採用し研究スタイルを変革)
「課題別」Azure活用事例
続きまして課題別のAzure活用事例を紹介します。今回は、セキュリティ強化、データ分析、クラウド移行の3つのテーマの事例を紹介いたします。
セキュリティを強化したい
ここでは日本通運株式会社の事例を紹介します。同社はセキュリティ問題の一環としてライセンス管理の課題を抱えていました。これまでライセンス運用・管理する仕組みが存在せず、Excelや書面で管理を行っていましたため、ライセンス状況の把握が困難でした。
そこで、同社はAzure AD P2 を活用した「エンタイトルメント管理」の導入を行いました。導入のきっかけは同社がOffice365を導入し、コミュニケーション環境をSharePointやExchangeOnlineに統一を図ったためです。
同社は、エンタイトルメント管理により以下のようなメリットを得られたとのことです。
・アクセス権のパッケージ化ができるため、専門知識のない人でも管理ができるようになったこと
・任期等を考慮し、アクセス権に期限を設け、期限が近付いた際に自動で更新の有無を確認できるようになったこと
同社は今後、グループ各社への展開を進めると共に、エンタイトルメント管理の活用を徐々に広げていく方針です。
(参考:Microsoft Customer Story-費用対効果の高いセキュリティへ。ガバナンスの徹底から始まるエンタイトルメント管理でライセンス運用の「ムダ」をなくし)
データを分析したい
データ分析活用事例として三井物産株式会社を紹介します。同社は2020年より全社的なDXに取り組んでいます。同社は以前よりMicrosoftと取り組みを進めており、Office365、PowerBI、PowerPlatformの導入をしてきました。その結果、PowerBIにより、毎月数百のレポートを作れる体制となり、データの可視化が可能となりましたが、データ活用という点ではこれからという状況でした。そこで、データ分析の内製化支援プログラムである「Data Hack」の活用を目指しました。
同社は予測モデルの作成を目指したが、その道のりは楽ではなく、成績によっては前の工程に戻ったり、データの足し引きをしたりする必要がありました。そのような困難な状況でも対応ができたのはMicrosoftの手厚いサポートがあったからだと述べています。
同社は現在PoCが完了した段階であり、今後は本番稼働に向けて準備を進めるとのことです。
(参考:Microsoft Customer Story-事業部課題を Azure AI によるデータ分析で解決! 三井物産が掲げるデータドリブン経営戦略とその展望とは)
オンプレからクラウドへシステム移行したい
クラウド移行の事例として出光興産株式会社を紹介いたします。同社はこれまでオンプレミスで運用していたSAP HANAをクラウド環境(Azure)へ移行しました。同社がクラウド環境への移行を決断した背景としては、オンプレでは以下のような課題があったからだと言います。
・2018年ごろからデータ量の増加に伴い、メモリ不足の障害が多発していたこと
・SAP HANAのパッチ適応もオンプレの環境では検証できず、外部に検証環境の構築が必要となり、費用面、時間面の負荷が大きかったこと
そこで、当時、出光興産と経営統合した昭和シェルはすでにAzure環境へSAPを移行させていたため、知見や設計思想を活かすことができると考え、Azureへの移行に踏み切ったそうです。
導入後、同社は以下のように評価をしています。
・オンプレのときと比較して安定的に稼働している点
・Azure Backup の管理画面からSAP HANAのバックアップができたりすることで、運用面でオンプレにはないサポートを受けられる点
現在はグループ会社からAzureでERPを利用したいなど、活用の広がりを感じてきており、Azureの可能性を広げるべく、インフラ環境の整備を進めています。
(参考:出光興産が価値創造に向けたクラウド移行を実現! SAP on Azure によって DX の一歩を踏み出す)