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Salesforceとは
Salesforceとは、アメリカのSalesforce社が提供するクラウド型の顧客管理・営業支援システムです。クラウド上で顧客管理を行うCRMがベースですが、顧客情報の共有を通じてSFA(営業支援システム)としても機能します。またSalesforceは「SaaS(Software as a Service)という言葉を作った企業としても有名で、クラウドサービス・SaaSを代表する世界的なシステムであり、世界中の企業で利用されています。クラウドベースなので、業界・業種や企業規模にかかわらず導入することができ、カスタマイズ性も高いサービスです。
「Salesforce」とは、実は複数のサービス群を一纏めにした名称であり、代表的なサービスは下記の通りです。
Sales Cloud
顧客情報、案件情報、業務プロセスなどの情報を一元化できるSFAとCRMの機能が集約されています。主な機能としては、顧客管理(見込み顧客も含む)・案件管理・営業プロセス管理・売り上げ予測・レポート出力などです。
Service Cloud
既存の顧客へのカスタマーサクセスや、カスタマーサポートを効率化するCRMとしての機能です。問い合わせフォームの作成やチャットボットの活用、またSNSへの連携等により、既存顧客の満足度最大化を実現することが可能です。
Marketing Cloud Account Engagement
マーケティングオートメーション(MA)ツールですが、一般的なMAの機能はもちろん、Sales Cloudとの連携によって、営業部門・マーケティング部門双方での情報共有が可能になっています。
なお、かつては「Pardot」という名称でしたが、2022年4月より現行の名称に変更となりました。
Salesforceと他SFAとの違い
Salesforceは他SFAと比較してなぜ選ばれているのかという観点で他SFAとの違いを考えると、以下のようなポイントがあると考えられます。
圧倒的な「Salesforce」ブランドへの信頼性
調査会社IDCの調査によれば、CRM市場においてSalesforceが19.5%のシェアを占め、8年連続でのトップシェアを獲得しています。
(参考:IDC Worldwide Semiannual Software Tracker)
高いシェアと、長年にわたる高い売上成長率を達成してきた実績、Salesforceとパートナー企業・顧客との間のコミュニティ精神など、様々な要素も相まって強力な「Salesforce」ブランドが作り上げられている点が挙げられます。
カスタマイズ性の高さ
Salesforceは業界・業種・企業規模を問わず様々な企業において導入されています。
様々な業界・業種の特性やニーズに合わせて、利用する機能や使い方をカスタマイズできることは、高いシェアの獲得、という点にも裏打ちされているのではないでしょうか。顧客の業務プロセスに合わせた設計や、コードを使う/あるいは使わない開発等様々な形で開発も可能になっています。
また、API連携できる他社ツールも多く存在しているため、Salesforceだけではカバーできない領域も、Salesforceと連携しながら他ツールを活用することができます。
Salesforceと他ツールを組み合わせることで、課題のソリューションに対する幅も広がっていくものと考えられます。
Salesforce導入メリットと効果
Salesforceを導入することで、様々なメリットが想定されますが、データの一元管理と社内共有がしやすくなるという点で優れています。
さまざまなデータの「一元化」が可能
Salesforceでは、顧客の会社情報や顧客担当者の情報はもちろん、営業担当がいつ・誰と・どのような行動をしたかというやりとりの記録も残すことができます。
他にも、競合他社の情報や個別案件の進捗の状況など、営業活動に関わる重要事項を誰もが一目で把握することが可能になります。
一元化したデータを社内で共有することが可能
一元化したデータを営業担当者間で共有し、それぞれが状況を把握することによって、目的や次のアクションが明確になり、営業の効率化に繋がります。
また、営業活動で成果が出ている場合に、その要因を分析し見える化・パターン化することで、他の営業担当にもフィードバックをすることが可能です。
ワークフローも一元化できるため、業務効率化に繋がる
Salesforceを導入すると、例えば「商談が決まった時点」「契約が成立した時点」等特定のプロセスが発動した際に、「XXさんにTodoを割り当てる」「社内の別システムに通知する」等、自動化された処理を行うワークフローを構築することができます。
このように営業活動に関するビジネスプロセス全体を自動化・効率化するワークフローの機能が多数用意されているため、うまく組み合わせて活用していくことで、組織全体の業務効率化も期待できます。
Salesforceの導入手順
Salesforceを導入に終らせるのではなく、現場が活用できるようにするための流れを解説します。
STEP1:Salesforceの導入目的の明確化
「何のためにSFAを入れるのか」「その中でなぜSalesforceなのか」という部分を導入前に明確にし、社内で共有します。
STEP2:要件定義・実装を行う
Salesforceの導入範囲や新しい業務プロセスの定義、導入に向けたスケジュールなどを合意し、決定します。導入に向けた大枠の方針が固まり次第、Salesforceの導入設定作業を行います。設定→レビューと繰り返して実施することで、利用者が利用しやすい機能・画面構成にしていきます。
STEP3:利用開始
利用者向けのトレーニングを実施し、運用を開始します。
運用開始後によくある課題としては、「営業担当者がうまく使いこなせず、効率的な運用ができない」ことが挙げられます。Salesforceは営業情報の一元化ができるというメリットをお伝えしましたが、このメリットを享受するためには、営業担当者が情報入力をしっかり行い情報自体が蓄積していく必要があります。
営業担当者が「情報入力が面倒」と感じてしまい、入力をしなかったり使いこなせないと、組織全体の営業活動の効率化に繋げることができず、結局属人化を止められない結果になってしまいます。
運用ルールとしては、例えば「営業のログを残していない場合自動でリマインドを行う」「週に1度、部内で入力状況を確認する時間を設ける」等が挙げられます。
Salesforce導入の失敗理由
Salesforceを導入する際、様々な問題や課題が発生します。ここでは代表的な導入課題を解説します。
導入すること自体が目的となってしまう
Salesforceの導入の目的が明確でないと「Salesforceを導入しただけ」で満足してしまいます。あるいは、導入するまでは良かったものの、現場へのプロセスの定着が不十分で、同様に導入しただけで使われずに終わってしまう、というケースも多く想定されます。Salesforceに限らず、システムは導入することが目的ではありません。「Salesforceを導入することでどんな変化や効果をもたらすのか」といった導入の「意義」を確認しながら、日常業務の中で運用を定着させることでその便利さを享受することができるのです。
利用する現場部門のコンセンサスを取ることが難しい
Salesforceの導入にあたっては、現場のマネージャーや経営陣が関与し、積極的に推進していくことが重要です。Salesforceの導入により、現場の業務プロセスが大きく変わることが想定されます。営業業務の効率性や生産性が大幅に向上しますので、本来であれば大きなメリットを実感できるはずですが、現場の営業担当者等にとっては、「今までのやり方を変えたくない」という心理が働き、拒否反応を誘発してしまう可能性があります。
現場担当者のコンセンサスを取りながら導入を推進するためにも、彼らのマネジメントを担うマネージャーや経営陣に関与してもらい、トップダウンの観点を取り入れて進めていく必要があります。
マネージャーや経営陣にとっても、Salesforceを導入することで現場担当者の行動や顧客状況等、営業現場の状況をリアルタイムで知ることができるため、メリットを感じてもらいながら推進できることができるでしょう。
ワークフローが存在せず、「どのように運用するか」が定義できていない
前述の通り、Salesforceを導入することで、ワークフローの効率化・自動化も実現できますが、「どんなアクションがあった際に何をするのか」等、ワークフローそのものを定義できていないと当然自動化もできません。さらに、Salesforceの機能に合わせてワークフローを再設計・部署内で共通化しておかなければ、自社独自のワークフローに固執してしまい、うまく使いこなせないといったケースも多く存在します。
また、ワークフローを始めとしたSalesforceの運用フローを現場担当者に定着させる上では、社内各部署に「Salesforce担当(管理者)」やインフルエンサー的な人員を配置・育成することも必要です。こういった人員は現場の問い合わせ窓口的な役割も果たすことができるため、導入時の現場コミュニケーションコストも効率化することができるでしょう。
要件がPJ期間内に変わり遅延する
Salesforceの導入時に限りませんが、新しいシステムを導入しようとする場合に、導入時のシステム要件がプロジェクト期間内に変更され、当初のプロジェクト計画から遅延してしまうことが多々あります。
スクラッチのシステム開発とは異なり、Salesforceはクラウドサービスですので、一から要件定義〜開発を進める必要はありません。まずは自社内の課題の棚卸しと必要な機能の洗い出しを進め、Salesforceの標準機能を最大限活用し、自社でカスタマイズする部分を絞り込んでいくことで、効率よく導入に向けたステップを踏むことができるでしょう。
Salesforceの一般的な導入コスト
Salesforceの導入コストとしては、大きく下記2つに分けることができます。
Salesforceのプロダクト/エディション/ライセンス数に応じた費用

プロダクトとは、上述した「Sales Cloud」「Service Cloud」など、機能別のプロダクトごとに用意されている料金となります。エディションとは、プロダクトごとに用意されたプランです。
例えば中小企業向けのプラン、あらゆる規模の企業向けのプラン、自社にカスタマイズ可能なプラン等が存在し、プランによって機能やサポートの有無等が異なります。そのため自社の用途に合わせて必要な機能やサポートを選択する必要があります。

ライセンス数は、利用するユーザー1人あたりの月額費用です。
例えば、Service CloudでProfessionalエディション(月額9,000円)を選択し、10名で利用する場合、9,000円×10名となり、月額の利用料は90,000円となります。(費用は2022年6月現在)
(参考:Salesrorce Sales Cloudの価格)
(参考:Salesforce Service Cloudの料金)
Salesforce導入時にかかる費用
Salesforceの導入に際して、コンサル会社等パートナー企業のサポートを仰ぐ場合は、当然ながらコンサルティング費用や開発費用が追加で発生します。
コンサルファームにおけるSalesforce導入支援事例
化学・素材メーカーにおける導入事例
クラウドインテグレーションサービスを展開するテラスカイ社の事例を紹介します。顧客企業の化学・素材メーカーでは、同一企業の中で異なるビジネスモデルを有する製品を持っており、事業部門ごとの要件に合わせてそれぞれSalesforceを導入してしまうと個別最適になってしまったり、部門横断的なビジネスを展開する時にうまく機能しない恐れがあったといいます。
基本的な要件を共有化できるCRMとしてSalesforceの導入に踏み切りました。その導入に向けてSalesforceを実装する際のルールとなるガイドラインを策定し、開発を進めたということです。
また、システム要件の整理は顧客社内のメンバーも巻き込み実施しました。結果として、Salesforce導入により顧客やプロジェクトごとのビジネス経緯が把握でき、営業担当者のアクションや、顧客情報の引き継ぎが向上したという声が寄せられているそうです。
(参考:AGC株式会社への 導入事例)
まとめ
今回の記事では、Salesforce導入の流れについて解説しました。コンサルティング案件などを探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。