DXプロジェクトの要件定義とは
要求定義と要件定義
DXプロジェクトの要件定義では、新サービスを開発するために要求と要件を定義します。具体的には「新規に開発するシステムで実現するサービスの要求・要件」と、「そのサービスの運営に必要な業務の要求・要件」です。
基幹系システム開発の要件定義では、既存の業務プロセスをシステム化することが主たる目的のため、業務要求・要件のみを決めれば事足ります。これに対してDXプロジェクトの要件定義の場合、業務を変革していく新しい取り組みのため、既存業務が存在しない場合も少なくありません。そのため、サービス運営に必要な業務要求・要件定義が必要なのです。
DX案件の要件定義
特にDX案件のプロジェクト要件定義の概要としては、既存のシステム開発プロジェクトとは違って特徴的な点が以下の3つです。
・プロジェクトの要件や要求のベースとなる「業務フロー」が存在しない
・導入実績のない技術を採用する
・企画やマーケティング、商品開発、インフラ部門など様々な部署が関係する
DXプロジェクトの場合は、AIやIoTなどの採用実績のない(あるいは少ない)技術を活用するプロジェクトが多いです。そのため、システム導入後の流れや導入後の使い方のイメージ、コスト算出面などの予測が立てづらい性質があります。
未知の領域に挑戦するからこそ、新しいフローを定義したり、最新技術に専門的な人材を巻き込んで、全社横断的な動きでプロジェクトを進めていくことが必要です。
要件定義の具体的な流れ
DXプロジェクトの要件定義フェーズは以下のように大きく3つのフェーズに分割できます。
新業務要件の把握
1つ目はなぜサービスが必要なのか、どのように成果を期待しているのかといった、DXプロジェクトの目的・背景を理解するフェーズです。
このフェーズで潜在的なニーズもヒアリングしていき、期待する成果(To-Be)と現状(As-Is)およびそのギャップである課題を明確化します。
要求の細分化とシステム要件へ落とし込み
2つ目はシステム要件を検討するフェーズです。1つ目のフェーズで明らかにした課題を解決するために、どのような解決策が最善なのかを考えるフェーズです。
組織の変更や、ルールの追加変更といったシステム化以外の解決策も視野に入れつつ検討していきます。そして検討した解決策をベースにどの部分をシステム化していくかをお客様と合意していきます。
要件定義書の作成
3つ目のフローとして、要件定義書の作成があります。要件定義書とは、これまでお客様からヒアリングし、細分化した要件を体系的に整理・分析した書類です。
作成のポイントとしては、コンサルタント側は単にクライアントの要求だけを整理する(お客様に言われたものだけ作成する)のではなく、クライアントを取り巻く環境、実現したいゴールを理解することです。クライアントのサービス、ビジネスを理解をして、要件定義書を作成することで、理想的なデジタルトランスフォーメーションに近づきます。
要件定義後のよくある課題
クライアントニーズが曖昧で、プロジェクト期間中に変化する
まず、お客様自身が実現したい要件自体に気付いていない、あるいは要件が曖昧であるため、プロジェクトの途中に要件が大きく変化してしまうことがあります。
特にDX案件に関しては新しい技術を導入したサービスが多いので、お客様自身の経験や知識が乏しいケースも多く、実現できることと理想を混同することが少なくありません。プロジェクトを進めていく過程で、細かな要望が上がってきてしまい、当初作成した要件から大きくずれてしまうことがあります。
そのため、いかに要件定義の段階からクライアントの要求を要件に落とし込めるかが重要になります。
DXプロジェクトの要件定義を成功させるコツ
DXプロジェクトを成功させるためには、要件定義フェーズ時点で、責任や対処、期間などを明確にすることが成功の鍵です。
目的・関係者・優先順位を明確にする
プロジェクトを成功させるために以下の2点を把握します。
・プロジェクト開始時の背景やビジネス的な目標は何か?
・ステークホルダー(関係者)は誰か?
一般的な目的としてはコスト削減や売上増加、利益増大に集約されますので、求める要件が成果としてどのように貢献するかを重要指標として定義します。
また、プロジェクトのステークホルダーを把握して、適切に意見や同意を得ないと急な横槍でプロジェクトの進捗に悪影響を与える恐れがあります。ステークホルダーごとに説明して合意・納得してもらうことが重要です。
要求と要件を明確にする
要求定義とは、「何々をしたい」というお客様の要望を定義するもので、要件定義とは「要求を実現する」ための手段です。要求を実現するための手段として要件定義が存在します。抜け漏れが無いようにお客様の要求をベースに要件を定義するといったプロセスが大切です。
ダイレクトなコミュニケーション
DXプロジェクトでは、複数部門が関係してくることが多いです。特に意思決定においては、どの部門に権限を付与されていて、交渉を行えば良いかなど曖昧になることがあります。そのため、プロジェクトの進捗状況や検討内容を直接お客様にヒアリングして巻き込んでいくことが大切です。
必要な事だけする
DXプロジェクトは、AIなど最新の技術などを利用するので、PoC検証などは1回のみではなく、複数回実施する可能性もあります。また、突発的な仕様変更や課題対応に迫られることもあるので、活用できる時間や期間は少ないと考えることが重要です。
規模に応じた組織変更
DXプロジェクトの場合、多くの場合新しい技術を利用するため「当初思っていたよりも精度が低い」、「データが思うように集まらない」などといったリスクが生まれやすくなります。
そのような際に出戻りや工期遅延に伴う開発規模の増大などが起こった際にも対応できるように、余裕を持ってスケジューリングして、時間や人員等工数変動が合っても対応できる体制設計が必要です。
まとめ
今回の記事では要件定義を成功させるポイントを解説しました。DX上流案件を探している方、事例を知りたい方は、ぜひfoRProまでご相談ください。